2017年11月28日火曜日

北海道石狩市の重大インシデントについて考える

当Blogの趣旨とは少々離れますが、気になることについて、勝手ながら私の意見を書いてみます。



2017年10月、小型飛行機に関する重大インシデント(事故に至らなかったが危険だった事例)が2件起きました。1件は、10月6日夜午後7時ころ、北海道石狩市を訓練飛行していたCessna 172K型機にエンジントラブルが発生し、石狩市親船町の海岸砂浜に不時着したこと。

もう1件は10月15日午後3時40分ころ、福井県の福井空港に着陸進入中のBeechcraft A36型機、通称「ボナンザ」にやはりエンジントラブルが発生し、福井市小尉町の九頭竜川の水面に不時着した事例です。

通常、航空機事故が起きると、その特殊性からか報道は過熱し、小型飛行機関連の事故となると否定的な意見が見られるものですが、意外にもこれら2件に関しては報道も穏やかで、人々にも好意的な意見が見られました。

石狩市の件では機体に目立った損傷はなく、乗員のお2人は無事、他に被害もありませんでした。福井市の件では不時着後に川に機体が沈んだものの、乗っていた4人の方々も救助されたとのことです。どちらも事故ではなく、重大インシデントとされたこともあるのでしょうが、不時着を遂行し成功しているためか、それぞれの機長は英雄的だったと褒め称える論調が多く見られ、福井市の事例に至っては「九頭竜川の奇跡」などと言われている様子です。

確かに、日没後に海岸に機体を不時着させることは、低速飛行が可能なC-172とはいえ非常に難易度が高いものです。水面上に機体を転覆させずに不時着させられたことも確かに奇跡と言えるでしょう。

しかし・・・これら2件に関して共通すること、機長お2人のエアマンシップに関して、私は大きな問題があると言わざるを得ません。何が問題だったのでしょうか。まだ事故調査報告書も出されていませんが、ニュースとして報道された事実を元に考えてみます。








〈石狩市の重大インシデントについて〉

10月6日午後6時25分ごろ、飛行教官の63歳の会社役員の男性と、飛行訓練生の49歳の自営業の男性の2人が、Cessna 172K型機で石狩市や小樽市の上空を訓練飛行する計画で丘珠空港を離陸。途中でエンジンに出力低下が発生し、回復操作を試みたものの好転せず、同日午後7時ごろ、石狩市親船町の海岸に不時着。不時着後のインタビューで、機長は「燃料切れだった」と発言。機体を確認したところ、エンジンに損傷はなく、左側燃料タンクには十数リットルの燃料があったものの、右側燃料タンクは空だった。 (以上ニュース記事より)



飛行前には飛行計画を立てて、さらにもう一度見直すことが必要です。見直しに役立つ、簡単なチェックリストがありますので、それを使って考えてみます。


A. その飛行は合法か?
B. その飛行は安全か?
C. その飛行は本当に納得できるものか?


この件について、上の3つの項目を当てはめて考えてみます。



A. その飛行は合法か?

合法かどうかで言えば、この件に関しては合法と言えるのでしょう。日本ではVFR(有視界飛行方式)の自家用運行に関して、航空法に予備燃料の搭載義務の記述はなありません。

こちらアメリカ合衆国では、FAR(連邦航空法)に、計画する飛行を終えて、さらに昼のVFRでは30分、夜のVFRでは45分の間、巡航速度で飛行できる燃料を搭載することが義務付けられていますが、そこは所変われば・・・ということでしょう。ただ、機長の自己責任に任せるとしても、その人物に安全意識も責任感も、知識も技量もないのであれば、機能することはありません。



B. その飛行は安全か?

合法であっても、安全までは保障されないことは日常にも多くあります。C-172K型機のLycoming O-320エンジンの巡航時の燃料消費量は8ガロン/時から10ガロン/時というところですので、残っていた十数リットルの燃料を多めに約5ガロンと換算すると、石狩市から丘珠空港へは安全に帰る十分な燃料があったと言えます。

(ただ、燃料の回収がどこまで徹底して行われたのか、配管や気化器の中までも確認したのかは不明ですので、使用不能燃料を考えると燃料の枯渇が原因と十分に考えられますが・・・。)

では、仮に5ガロンの燃料が使用可能燃料として残っていて、それはどこまで信頼できるのでしょうか。C-172K型機の燃料搭載量は42ガロン、使用不能燃料4ガロンを差し引くと、両燃料タンクの使用可能な容量は38ガロン。主翼それぞれに容量19ガロンのタンクがあることになります。燃料タンクは主翼内部に収める形状ですから、それらは比較的薄型。飛行中の僅かなコーディネーション(つり合い)のずれは内部の燃料を大きく移動させ、容量の1/4以下となった場合は、燃料の供給を妨げることは十分にあり得ることです。



C. その飛行は本当に納得できるものか?

当該機での過去の飛行経験から、残燃料が5ガロンとなっても安全に飛行することができると分かっていたとしても、実際の飛行で、しかも夜間にそれを再度実証することは危険です。燃料タンクのおよそ1/4という残量では、飛行中は揺れのため左側燃料計は時折「E(空)」を指していたはずです。そのような状況でも飛行を継続していたのは、残燃料の計算に相当な技量と自信があったのでしょうか。そして、そのおごりが燃料枯渇となって不時着する結果になったと考えます。



〈結論〉

私が得た事実を元に検証し、結論を出すと、仮に不具合が他にあったとしても、この件は機長(または操縦士)のパイロットエラーです。合法ではあったが、危険を伴う飛行だった。そして、それを実践する理由はあるとは到底思えません。エアマンシップの欠如が招いた、避けられた、本来は起こりえないことだったと、私は考えます。



次回は福井市の件について考えてみます。

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