2016年10月28日金曜日

巡航性能を考える


10月10日。能登キャンパス航空祭の翌日、集まった仲間たちは曲技飛行競技の練習会を行いました。日本だけでなく世界的に見ても、空域や騒音などの問題で、曲技飛行を行える場所が狭くなってきていますが、ここ能登空港はとても素晴らしい環境が揃っています。




次の練習飛行の準備です。




手分けして準備を手伝う仲間たち。美しい光景です。




次は内海さん所有のExtra 300Lが上がります。どうぞよい飛行を!




練習飛行から帰った山田さん。コーチングをした鐘尾さんからの助言をいただいています。

曲技飛行は楽しいものですが、それが競技となると途端に楽しさはなくなります。当然ながら、受ける指摘はNegativeなものばかり。どれだけ努力しても上達せず、自分の能力の限界を見て苦しくなります。どのような種目でも競技とはそうなのでしょうが、なのに続けてしまうのはなぜでしょう?私にもわかりません。

でも、競技を終えた時にそれがわかるかもしれません。興味を持たれた貴方、ぜひいかがでしょうか?




航空学園隣の能登空港ターミナルへ散歩。






航空学園のグライダー部所属のSF-25C Falke(ファルケ)が離着陸訓練を繰り返していました。




羽田空港からのA-230が到着しました。




声援を送る小さな観客。




立派なターミナルです。能登空港の今後のご発展をお祈りします。



さて、前回のBlogで、「向かい風が強い状況では、燃料消費量を犠牲にしてでも、あえてHigh Powerで飛行する」と書きました。「日本はアメリカ合衆国と違い、空港の数が限られている。燃料を節約するべきではないか?」など、いくつかご意見を受けましたので、少し加筆させていただきます。




Cessna社製C-172Nの巡航性能表

条件を、気圧高度6,000ftと標準気温状態とし、High Power Settingの2,600RPM(75%)とLow Power Settingの2200RPM(49%)の2種類の飛行を、A地点から200NMの距離にあるB地点までの巡航飛行に費やされる時間と燃料を比較します。

まず、飛行高度の風が地上と同じ(風速が0)場合は、真対気速度(TAS)と対地速度(GS)が同じですから、以下のようになります。

75% Power 対地速度 120KTS、推定所要時間 1時間40分、消費燃料 14.00ガロン
49% Power 対地速度 98KTS、推定所要時間 2時間02分、消費燃料 11.63ガロン
Low Power Settingで飛行すれば、22分の余分な時間がかかるものの、2.37ガロンの節約ができます。その燃料があれば、さらに約25分余分に飛行が可能になります。


では、飛行高度に20KTSの向かい風がある場合はどうなのでしょうか。真対気速度は同じであっても、対地速度に変化が現れます。
75% Power 対地速度 100KTS、推定所要時間 2時間00分、消費燃料 16.80ガロン
49% Power 対地速度 78KTS、推定所要時間 2時間33分、消費燃料 14.62ガロン
推定所要時間の差が開き、消費燃料の差が少なくなったことがお分かりいただけます。


次に、先日の仙台ー新潟間の飛行のように、40KTSの向かい風がある場合です。
75% Power 対地速度 80KTS、推定所要時間 2時間30分、消費燃料 21.00ガロン
49% Power 対地速度 58KTS、推定所要時間 3時間26分、消費燃料 19.66ガロン
さらに推定所要時間の差が大きくなり、消費燃料の差はさらに少なくなりました。さらに低い2100RPM、44%のPower Settingでは、消費燃料の差がさらに少なることはご覧の通りです。

この結果を見て、「でもLow Power Settingで飛行した方が効果的じゃないか。」と思われるかもしれませんが、飛行に関係する要素は燃料消費量だけではありません。時間経過に伴う状況の変化、飛行機使用料、燃料費、整備費、保険料、飛行士への賃金、いろいろあるものです。

数年前、ある飛行学校のC-172型機の時間当たりの料金が$100を超えた!と話題になりました。今ではさらに値上がりがあるかもしれませんが、$100/Hrとすると、2時間30分なら$250。3時間26分なら3.4時間、$340が請求されます。仮に個人所有機だとしても、オイル交換や100時間点検、O/H時の積み立て金などを考慮しますから、飛行時間は支出につながります。

航空用燃料は現在1ガロン$4.00から$6.00です。$10前後の燃料費を節約して、約1時間余計に飛行するというのはどうなのでしょう。「その1、2ガロンが余分にあったために無事に目的地に着陸できるかもしれない。」という意見もあるでしょうが、余剰燃料の1ー2ガロンを期待することがまず疑問であり、飛行を中止または延期するか、飛行中なら早期に代替空港へ向かうべきです。

保険料に関しては、年間の推定飛行時間が考慮の材料の一つになります。昔、貨物機で飛行していたときは、「会社が支払う保険代は燃料代とは比べられないほど膨大だ。まずは定時性を求めて飛行する努力をしろ。」と言われたものでした。




この考え方は巡航速度が遅い機体ほど、向かい風が強いほど、適用する意味があります。唯一例外があるとすれば、飛行時間を飛行経験として計上する必要のある飛行訓練生でしょうか。XC(野外飛行)から帰って確認したところ、規定の飛行時間に0.1時間達せず、もう一度同じ飛行に出かける訓練生を見たことがあります。

それは特殊な状況として、やはり向かい風が強い時は、状況に応じてHigh Power Settingでの飛行を考慮するべきだと、私は考えます。さらなるご意見をお待ちしております。

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