2015年3月31日火曜日

先生と呼ばれて


きれいな富士山。今日はいい一日になりそうです。


飛行教官として活動して、時々「先生!」などと呼ばれていると、自分の中で何か勘違いが始まりそうになります。私の知る世界はせいぜい飛行機を通してだけの狭い世界だけなのに、つい人生まで語り始めてしまったり。小型飛行機の操縦には自信過剰と認めるほどに絶対的な自信を持っていますが、これが原因でしょうか。では、自分の中のこの部分を壊してみたいと思います。




Airbus A320 Simulator


というわけで、日本の滞在中、横浜にあるJ Flight(http://jflight.jp/)にお邪魔しました。こちらはカナダから輸入したという、Airbus A320のモーション無しのシミュレーターを保有されていて、一般の方の体験操縦から、本職の方の機種変更の下準備など、多くの来客があるということです。






大型機の操縦経験のない私にとって、このような機種の操縦はとても興味のあるところですが、Type Ratingの訓練だけで$10,000単位、1回1時間程度のシミュレーターの飛行だけでも相当な金額になるそうですから、なかなか手が出ません。J Flightでは時間別に手ごろな金額設定をされていて、今回は1時間のコースで飛行を試してみました。




FMS(?)を操作して、飛行を設定しています。使い方は実機にほぼ忠実だそうです。


今回は、TaxiingとTake off、上空でSlow FlightにStall、Steep Turn、その後Touch and Goなどを試してみたいです。




どうしよう・・・


左席は操縦桿の調子が悪いとのことでしたので、今回は右席に座りました。普段の飛行機が右手で操縦桿、左手でスロットルの操作ですし、これまでも右席から操縦教育を行っていましたから問題はないでしょう。しかし、実際に操縦席に座って、「借りてきた猫」状態の自分に気付きます。予習をしてくればよかったと知っても時すでに遅し、です。




新千歳空港、滑走路19L


APUもEngine Startも、ほぼS/W一つで行えてしまいました。単発のCessna C-208Bですらいろいろと手順があったはずですが。全てが自動化されている・・・。さすがは最新鋭機です。

準備が整い、これから離陸です。・・・おや?機首が右横を向いている?なるほど、投影しているスクリーンが近いため、右席からは左前方に進行方向が見えてしまうのですね。




新千歳空港で離着陸。


地上で機首方向の目安は取ったはずでしたが、どうしても機首の軸線上に目標をとってしまい、旋回では上がったり下がったり、最終進入ではふらふらと落ち着かず、着陸後は滑走路の左に飛び出しそうになりました。スクリーンへの投影位置の調整ができたら助かると思いました。完全に飛行機に乗せられている、そんな私の飛行を下の映像からどうぞ。




Touch-and-go@New Chitose Airport(RJCC)


全く余裕がありません。私のこれまでの6000時間超の飛行経験も、曲技飛行教官という肩書きも、A320には全く通用しないということがわかりました。職場に曲技飛行に来るお客の2-3割は大型旅客機の操縦士ですが、彼らの「曲技飛行機は楽しいけれど、とても扱えきれないよ。まさに別世界だ。」という言葉が今は逆の立場からわかります。






上手く飛ばせられずにちょっとがっかりしましたが、いい刺激になりました。次回は予習をしてから訪れたいと思います。お勧めです。



J Flight

JFlight

〒231−0063 横浜市中区花咲町3-103-2 アマデウスビル2F
電話   045-250-5053
Web   http://jflight.jp/

最寄駅 JR根岸線/桜木町または横浜市営地下鉄/桜木町から徒歩5分



2015年3月17日火曜日

尾輪式飛行機講習が終了しました




予定通りに、富士川滑空場にて尾輪式飛行機の講習を行うことができました。初日は4時間の予定で座学を行いましたが、実際には4時間でも足らないほどに貴重な質問をたくさん頂きました。

飛行訓練の内容は、将来のTow Pilotとして、尾輪式飛行機の離陸と着陸が主になりました。一言で離陸や着陸と言っても、それは短い時間に非常に多くの現象がある、非常にComplexなManeuverであり、複雑な操作を慎重に行うことが要求されます。

飛行の基本の再確認と、効率のよい訓練を求めて、上空でのAir Workは不可欠です。「なぜRudderが必要なのか」、「Stallとはどのような状況で、何が原因なのか」など、当然とも思える内容をもう一度おさらいしました。

近い将来、参加者の皆さんはTow Pilotとしてデビューすることになるでしょう。どうぞご幸運を!




初日の座学では10人の方々に参加していただきました。ありがとうございます。




尾輪式飛行機に乗る前に耳にするのは、教官からの「Ground Loopに気をつけろ」です。でも、理論的な説明が不足しては、訓練生を怖がらせるだけではないでしょうか?Ground Loopのしくみと対処方法を伝えれば、訓練生も自信を持って飛行に臨めるはずです。




Bellanca 7GCBC Citabria。古いですが、整備は行き届いていて、操縦しやすい機体です。




Preflight Inspection、Complete!




飛行前の打ち合わせ。離陸後、南東の海上へ向かいましょう。


今日の練習内容は・・・
S-Turns
Wing Rocking
Steep Turns
Slow Flight @ Slow Speed (55 - 60 MPH)
Slow Flight @ High α
Power off Stalls with Minimum Altitude Loss Recovery
Power on Stalls with NO Altitude Loss Recovery
Accelerated Stalls、Straight Flight&Turning Flight
Full Aft Stick Stall (Controlled Stall)


離着陸に関しては・・・
Normal Takeoffs
Three Point Landings
Wheel Landings
Go around

などを行います。


ここではWheel Landingの技術が必要になるような、High Cross Windな状況では運用しないということですから、Wheel Landingの練習は最小限にして、Three Point Landingに集中することにしました。




では出発です。行ってきます。






Clear Prop!




何やら、身振り手振りで説明しています。




富士山がとてもきれいでした。

静岡県航空協会の皆様、日本女性航空協会の皆様、大変お世話になりました。



米国のFAA(連邦航空局)は、尾輪式飛行機に機長として飛行する前に、飛行教官との同乗教育を受け、指定された訓練内容である、Normal Landings、Three Point Landings、Wheel Landings(禁止された機種では免除)、そしてGo aroundを少なくとも受けることとされています。

着陸に関しては、飛行機の性能を最大限に発揮するためにも、Three Point LandingとWheel Landingの2種類の着陸方法を習得するべきで、どちらか一方でよいということはありません。Cessna 152や172で言えば、No Flap LandingもFlapsを用いた着陸方法も、どちらも行えるべきであることと同じです。

今回は、Wheel LandingよりもThree Point Landingに重点を置いて訓練を行いました。富士川滑空場では、Wheel Landingが必要なほどの横風成分(横風成分15 KTS以上)のような状況では運行は行わないということですから、疑問を感じつつも理解もできることです。ただ、Three Pointとはどうあるべきなのかを確認するためにも、あえてWheel Landingも試して、それぞれの長所と短所を理解していただきました。

尾輪式飛行機の着陸映像をYouTubeに見つけましたので、下の2つの動画を参考にどうぞ。




動画 その1

3分10秒と、5分05秒にSuper Cubでの着陸映像があります。

1回目の着陸はWheel Landing、2回目の跳ねた後の着陸はTail-low Wheel Landingのようです。滑らかな着陸に見えますが、性能を発揮する努力が見られず、「ただ降ろしている」だけに見えてしまうのはなぜでしょうか。追い風の状況にも関わらず、非常に速いTaxi Speed、甘いStick Backなど、注意が必要です。




動画 その2

3分50秒あたりにSuper Cubでの着陸映像があります。

こちらはThree Point Landingです。接地姿勢の確立、接地完了後のStick Backなど、強い風の中でも基本に忠実な操縦を行う、強い意思が見られます。



少々語弊がありますが、「穏やかな着陸なら何でもよし」とされるのは前輪式飛行機で、尾輪式飛行機ではさらに接地姿勢の確保が重要になります。操縦系統を地上でも用いて、飛行機を飛行機として扱う努力をしましょう。と、私自身が肝に銘じます。