2021年12月31日金曜日

謹賀新年 令和四年 / 2022



あけましておめでとうございます
健康で平和な一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます
令和四年 元旦


Wishing you a Happy New Year
January 1st, 2022





Happy New Year, 2022!

2021年12月27日月曜日

思い出の空





それはとてもすてきな一日でした。おそらく、私の人生の中で最も幸せな日の一つとなることでしょう。








その日、私は上司と一緒に職場のExtra 300Lの100時間点検をしていました。午後になって、Cessna 172が滑走路に着陸するのが見えました。キングシティー空港は管制空域でなく、1日の発着回数はおよそ一桁という閑散としたところですから、飛行訓練生の単独飛行の目的地によく使われます。その飛行機は着陸して、格納庫隣の駐機場に停まったようでした。



しばらくすると、若い20代の男性が一人格納庫にやってきて、私を見てこう聞きました。



男性: こんにちは。あなたはSean D. Tuckerの飛行学校の方ですか?

私: ええ、そうですよ。

男性: あなたは、2014年にボーイングフィールド空港で、14歳の男の子と一緒にエアロバティックスをしましたよね?

私: (・・・唐突だな?なぜそんなことを聞くのだろう?)

私: ・・・ええと、ああ確かに。2014年の9月だったか、SeattleのAirshowの前日にTeam Oracleのエアロバティックライドをしたはずです。確か10代の男の子もいましたね。

男性: 私がその男の子ですよ。あなたは私と飛んだのです。ありがとう。



言葉を失うというのはこういうことなのでしょう。私はあまりの嬉しさに言葉が出ず、ただうなずくことしかできませんでした。








14歳だった彼は私より背が高くなり、今は故郷のシアトルを離れ、CA州の大学で学びながら、飛行訓練を受けているそうです。私と一緒にExtra 300Lで飛行したことがとても楽しくて、飛ぶことを志した、と。



・・・そう。
私は彼を覚えている。



私はこの髪をした男の子と一緒に飛んだ。
座席にクッションを重ねて。
パラシュートを付けてあげて、そしてエアロバティックスを楽しんだ。
一緒に写真を撮って、そして彼はまた両親と帰っていった。



私にはたくさんの飛行の中の一つだったけれど、彼にとっては大切な思い出になったのでした。








Cameron、会いに来てくれてありがとう。すばらしい一日をありがとう。








シアトルの空へ

2021年8月30日月曜日

2021 春季整備作業 3

 ・・・と書きましたが、実は昨年春の作業です。昨年「ADS-B Out」をPitts Special S-2Sに搭載しました。





ADS-Bとは「Automatic Dependent Surveillance-Broadcast」の略です。日本語では「放送型自動従属監視」という意味になるそうですが、訳してもよくわかりません。要はGPSの信号を基に自機の位置を精確に特定し、得られた位置情報を自動的に地上局に送り、航空管制の効率化に役立てる新たなシステムです。




ADS-Bのシステムの概要  FAAのウェブサイトより


FAA.gov / Automatic Dependent Surveillance-Broadcast (ADS-B) https://www.faa.gov/nextgen/programs/adsb/

AOPA / What you need to know about ADS-B   https://www.aopa.org/go-fly/aircraft-and-ownership/ads-b


このように、航空機側から位置情報を発信するシステムがADS-B Outで、米国では2020年1月からADS-B Outの装備がClass A、B、Cなど多くの空域で義務化されました。もちろん、装備しなくても飛行自体は可能ですが、その場合は該当する空域を避ける、または到着前に事前連絡が必要となっています。これも時代の流れでしょう。素直に装備することにします。




Mode SトランスポンダとADS-B Outの双方を兼ねる、Trig Avionics社製の製品を購入しました。トランスポンダとADS-B Outの2つの装備が同時に解決です。


これまで管制に用いられていたのは、地上のSecondary Surveillance Radar(二次レーダ)と機上のTransponder(トランスポンダ)の組み合わせでした。今後もそれらは変わらず利用されますが、次第にGPSベースの完成方式に置き換わっていくのでしょうか。




その内容は・・・

左上: TA70 GPSアンテナ

左下: TT22 コントローラ

右上: TT22 本体

右下: TN72 GPSポジションソース

 以上です。

Trig Avionics https://trig-avionics.com/




小柄なGPSアンテナであっても、可能な限り機外への露出は避けたい・・・ いろいろと考えた末、GPSアンテナは上側主翼内に隠すように設置できました。主翼の素材は木とファブリック、そして塗料ですから、GPSの信号は問題なく受信します。 Good!




TN72とTT22の本体を収めるトレイを作成し、胴体内部に固定します。




ハーネスの作成。見慣れない端子を用いる形式でした。いい勉強になりました。




コントローラの画面上でADS-B Outの設定をします。

私にとって聞いたこともない、未知の言葉ばかりで悩みましたが、説明書とインターネットのお陰で何とかできました。機材に約$3,000。配線や工具に約$400。Experimental機ということもあり、比較的安上がりにできました。やればできる!



完成!




その後、Mode Sトランスポンダの検査に合格し、試験飛行でADS-B Out側も情報を精確に発信していることも確認できました。ADS-B Outの義務化は10年以上前から話題になっており、悩みの種の一つでした。無事に装備することができて、本当によかったです。



ADS-B Outを装備した航空機の飛行はいくつかのウェブサイト上で確認できます。

FlightAware https://flightaware.com/

FlightRadar24 https://www.flightradar24.com/

FlightAware N8061J Flight Tracking and History https://flightaware.com/live/flight/N8061J




2021年8月23日 N8061Jの飛行

FlightAwareの無料での情報公開は10日間までのようです。



プライバシーを考慮して飛行情報の公開を拒否する方もいますが、私は万が一の遭難などを考え、公開に賛成します。人里離れた山岳地帯を飛行しても、荒野を飛行していても、誰かに飛行を見守られているというのは心強いものです。どうぞこれからもPitts Special S-2S N8061Jの飛行を見守ってください。




アリゾナ州ウィンスロー、荒野に残る隕石のクレーター。



ところで、ADS-B Outの「Out」という言葉に疑問を感じた方もいるかもしれません。そう、ADS-B Outに加えて、ADS-B Inというシステムもあります。


こちらの装備は義務ではありませんが、他の航空機が発信したADS-B Outに含まれるTIS-B(Traffic Information Service-Broadcast)、つまり航空機の位置情報を受信して、機内の画面上で他機の様子を表示するというものです。管制側だけでなく、ADS-Bは航空機間でも情報を共有することができ、安全性の向上に大きく貢献します。


さらに、ADS-B InのFIS-B(Flight Information Service-Broadcast)を介して、飛行中に随時気象や空域などの情報を得ることができます。ADS-Bはとても便利です。




USB電源で動作するADS-B Inを自作、というほどではありませんが、試してみることにしました。・・・Pi 3B?・・・ドングル? 揃えた各部品が一体何をするものなのか、私にはさっぱりわかりませんが。


作り方はこちらから。

Stratux ADS-B - DIY/Low-cost Portable ADS-B http://stratux.me/




完成したADS-B Inを試運転・・・。あ、ライトが点灯しました!

飛行する航空機からの信号を受信して、得られた情報をWifiで送信します。PCや携帯電話でWifiに接続すると、互換性のあるソフトウェアを用いて上空を飛行する航空機の様子がわかります。




携帯電話のGPS画面

Eva006便がKing Cityの南西約15Mileを飛行中だそうです。どうぞよい飛行を!



9月のユタ州、早い冬が訪れる。


21世紀になっても小型航空機での飛行は冒険です。そのリスクが消えることはありませんが、ADS-Bによって、冒険が次第に日常に変わりつつあるようにも思います。「冒険」という言葉に危険な魅力を感じつつ、しかし安全や安心は大いに歓迎です。ありがとう。



ワイオミング州ロックスプリングス

標高6,765ft、2,062m。雲は低く、代替案も考慮して出発。

2021年8月8日日曜日

2021年7月21日水曜日

2021 春季整備作業 2

 

離陸!

写真: Hayman Tam様 2021年6月26日 San Carlos空港


何気ないこの写真にも、実はいくつもの作業の跡が残されています。今回はウィールフェアリングの作業記録です。


昨年5月の試験飛行の日は、この時期には珍しく、低気圧のために南風が吹いていました。風はRWY29に対して左から真横に15KTSほど。この飛行機は20KTSの横風でも着陸できる性能をもっていますから、いつもならなんということはない風です。しかし、数カ月に渡り行った後の試験飛行ということはつまり、この飛行機に乗るのも久しぶりということであり。すぐに私は離陸したことを後悔しました。

試験飛行は成功し、さあ着陸です。風は相変わらず強く、最初の着陸では飛行機は跳ね上がりゴーアラウンド。2回目も飛行機を滑走路に正対させることができず、またゴーアラウンド。4回か5回目あたりでやっと着陸できました。




破損した左側のウィールフェアリング(下)


技量の衰えに気を落としながら飛行機を眺めると、おや?何かおかしい・・・。なんと、左側のウィールフェアリング下側が欠けていました。

接地時にクラブアングルを処理できずに横向きに着陸して、タイヤが変形、ウィールフェアリングに当たって欠けたようです。やれやれ。

昨年1年間はエアショーも競技会もなく、このウィールフェアリングはその後も修理されないまま、飛行機と一緒に格納庫に放置されたままとなっていました。

カーボンファイバー製のウィールフェアリングは非常に軽く、一度この軽さを知ると、一般的なファイバーグラス製の製品には戻れません。新品の購入も考えましたが、値段は左右で約$1200。「こんな程度の修理は簡単だぞ。」という同僚の助言もあり、今回は修理してみました。




欠けた部分をカーボンファイバーで修復しました。多少気になる出来ではありますが、十分です。続いてサンディングを行います。






もう一つ気になるのは塗装表面です。離着陸時に小石が当たったり、うっかり足で蹴ってしまったり。このウィールフェアリングも傷が目立ち始め、以前から再塗装したいと思っていました。可能な限りオリジナルの塗装を残したいところですが、私の技量ではこの複雑なパターンを再現することは不可能です。

そしてこの時点ですでに5月上旬。6月下旬のイベントまで時間もありません。・・・どうしよう。いや、今はとにかく作業です。




続いて、こちら側もサンディングです。




サンディング。そしてサンディング。




最果ての地、King City。

ただ風だけが通り過ぎていきます。
時間は1900時、日没まで1時間。あともう少し作業しよう。




ウィールフェアリングにはエポキシ系塗料の白いプライマーを塗布しました。手前の三角形の部品ははランディングギア カバー。赤の色合いが微妙に異なるため、この機会に一緒に塗装します。

他にも再塗装したい部品はあるのですが、それらはまた別の機会に。




すばらしい艶です!




・・・と、言いたいところですが、所々に塗料の垂れが見えます。私の塗装の技量もまだまだです。




こちらランディングギア カバーには塗料の垂れはないものの、控えめに塗装したためかオレンジピール(ミカンの皮のような凹凸のある表面)になってしまいました。




遠目には分かりませんが、こうして近くで反射させると分かります。でもイベントで飛行するには十分ですから、いずれ時間があるときに磨くことにします。




表面を平らに修正し、1500番まで水研ぎし、そしてコンパウンドで磨きます。慎重に、慎重に・・・。

カラーリングについては、今回は白と紺の線を入れる時間もありませんし、「試験的に赤一色で飛行してみてはどうか?」という意見もありました。そうそう、そうしましょう。




6月23日1800時。イベントの3日前に作業終了です。




やっとできた・・・。うれしい。




赤一色でも悪くありませんが、でもどことなく寂しい感じがします。ウィールフェアリングに何かアクセントが欲しいところです。


メッセージ?
チェッカーなどの模様?
スポンサーのロゴの移植?




一晩考えて、「REDFOX Airshows」と文字を入れることにしました。少々安直な手法ではありますが、悪くはない・・・と思います。

2021年7月5日月曜日

2021 春季整備作業 1

昨年は武漢ウィルスでキャンセルになった、CA州サンカルロス空港のHiller Aviation Museum主催のイベント、「The Biggest Little Airshow」。今年の6月に行われる予定だと連絡が入ったのは年末だったでしょうか。無事に行えれば、パンデミック後のSF Bay Areaでの初めてのエアショーであり、私にとっては1年半ぶりのエアショーになります。




The Biggest Little Airshow https://www.hiller.org/event/biggest-little-airshow/?fbclid=IwAR1036A91X92Q5sDh4R8MmiUenUuCuEhlVHnSQim0JRKsqTeEl5Zi1CaPXE

注: 予定通りに終了しました。応援ありがとうございました。



今回はそれまでの整備作業の内容を載せることにします。

Item 1 キャノピー取り付け作業



以前にも話題にしましたが、2019年8月、練習飛行中にキャノピーを壊しました。原因は機内の消火器の固定が不十分だったため。私の不注意です。Negative Gの飛行で消火器が外れ、キャノピーに穴を開けてしまいました。




幸いにもPitts Specialはキャノピー前部にウィンドシールドが備えられ、単座機ではこのように後方にスライドする方式が一般的です。複座機は右側にヒンジを備えて開く方式いなっています。元々はオープンコクピットとして飛行するように設計されていた機種ですから、この数日後のエアショーと、それ以降はキャノピーを外しオープンコクピットとして飛行しました。

オープンコクピットは開放感がありますが、8,000ft近辺の巡航高度の気温は海抜高度よりも20℃ほど低く、真夏でも寒いです。また機内に吹き込む風のためにチャートを広げることも困難で、水を飲むのも気を使います。速度が比較的遅い複葉機とはいっても、6気筒ENG装備のこの飛行機の巡航速度は約160KTS、約300㎞/h。やはりキャノピーは必要です。




インターネットで検索すると、Aero Canopyという会社がPitts S-1/S-2用のキャノピーを制作販売していることを見つけました。


AeroCanopy https://www.aerocanopy.com (後述の理由からか、現在のLink先の内容は以前と異なるようです。)


1つで$626.00、予備にもう一つ購入し、FL州からの送料を含めると約$1,600でした。$1,600・・・。いや、深く考えないようにします。




私の初めてのキャノピー作業。不安が募りますが、準備はできました。勇気を出してやってみましょう。まずは破損した古いキャノピーを載せて、大きさや形を確認します。




・・・おや?どういうことでしょう。外側にも内側にも、前後を逆にしても、新旧のキャノピーが全く一致しません。

Aero Canopy社に連絡すると、「そのキャノピーはトリミングしないといけないんだぞ。お前分かっているのか?」との返答でした。いや、トリミング以前に形が全く違うのですが。




知人に相談したところ、これらはFree Blownと呼ばれる製法で作られた低品質なもので、型を用いて作られた原型のキャノピーとは別物だそうです。数日間Aero Canopy社と交渉し、返品は受け入れるが、しかし返品時の送料(約$300)は私が負担するということになりました。そして返金も現物が再販売できることが条件とのことです。やれやれ。

しかし何があったのか、その後Aero Canopy社はこれらのキャノピーに製品としての価値はないと判断し、返品の必要はないと伝えてきました。後日返金も無事に行われ安心しました。

皆さまももしキャノピーの購入の際はご注意ください。




続いて、知人にAirplane Plastics社を紹介していただき、2週間後、見覚えのある形のキャノピーが届きました。ありがとうございました。

Airplane Plastics https://www.airplaneplastics.com/




まず3㎝くらいの余裕を持たせ、大きめにトリミング。その後サンダーを用いて、数㎜刻みで削っていきます。気長に、慎重に・・・。



削って、機体に載せて、確認して。また削って・・・。



形が整ったところで、続いて取り付け穴を開けていきます。




始めてから2か月後。ついにできた・・・。嬉しくて、言葉がありません。




これでもう、飛行中の風や寒さに悩まされなくなるのでしょう。



<動画> Pitts Special S-2S Canopy動作確認


完成です。しかし、キャノピーの破損は誰にでもあり、そして私にもまた起こるはずです。予備に購入したキャノピーの作業も行います。 (いつ?)