2013年12月27日金曜日

飛行機を飛行機として取り扱うことの重要性



JAPA会報の現行の執筆が終わりました。時間をかけた甲斐があり、「尾輪式飛行機の世界へようこそ 第3回目」は本当に満足のいく内容になりました。奥貫様、ご協力ありがとうございました。

数字を求めることで飛行できる大型機とは違い、小型機、特に尾輪式飛行機は感覚的な要素が大部分を占めます。このため、尾輪式飛行機の飛行特性や取り扱いについて議論をしても、会話は永遠に平行線を辿ることがほとんどです。

今回は、私の経験から得られた情報を、数値化して表現する努力をしてみました。下の図は、尾輪式飛行機の飛行性能のある部分をグラフで示したものです。科学的な計測から得られた数値を元にしていないので、多少の誤差はあるでしょうが、方向性は確かなものと保証できます。




尾輪式飛行機であっても、離着陸は速い速度で行えるのに、地上移動は遅く行うのはなぜか?
尾輪式飛行機にとって、背風とはどれほど危険なのか?
グラウンドループの兆候のシグナルとは?

「尾輪式飛行機の世界へようこそ 第3回」はJAPA 会報、2014年1月号に掲載の予定です。

2013年12月26日木曜日

2014年2月 JAS Redlands校 トレーニングキャンプ情報



2014年2月に予定のJAS Redlands校のトレーニングキャンプは、参加希望者が定員の3人となりましたので、締め切りとさせていただきます。お問い合わせありがとうございました。もちろん、このトレーニングキャンプだけでなく、Redlands校では曲技飛行訓練を通常通りに実施しておりますので、ご希望の方はどうぞ白鳥 洋平教官までご連絡ください。

よい知らせもありました。1年ほど閉鎖されたままとなっていましたが、Redlands空港の北東に隣接しているAerobatic Practice Areaが、最近になって再更新を認められたそうです。嬉しいことですが、このAerobatic Practice Areaは民家に近く、山にエンジン音が反響すると、とても大きな音が響きます。引き続き、騒音には十分に配慮して、周辺住民の方々の迷惑にならないような飛行を心がけたいと思います。

2013年12月25日水曜日

師走の25番目の日


King Cityのメインストリート、Broadway Street。


ここ数日、買い物に行くと、必ず「Happy Holidays!」などと声をかけられます。昔は「Merry Christmas!」だったものが、宗教的な意味のある祭日から中立なものにという意見からだそうです。私はキリスト教徒ではありませんが、12月25日はどう考えてもキリスト教から発展した祭日ですから、「Merry Christmas!」以外は有り得ないのでは?と思いますが。上の写真の旗も、柄はどう見てもクリスマスなのに、Christmasの文字は見られません。アメリカらしい、多人種、多文化国家ならではのことでしょう。

意外に内向的なこの国の人々が、他国の文化に理解を示すのは喜ばしいことですが、自国の文化を壊してまでそれらに傾倒したり、移民が必要以上に発言力を持つようになることは疑問です。聞くと、先の挨拶についても、年齢層が40代以上と高くなるにつれて否定的な意見があるようです。私はこの先も、精神的にも法的にも日本人であり、アメリカ国籍を取得することはないでしょうが、自分の国が変わっていく様を悲しく思う彼らの気持ちはよく判ります。

軽い話題から飛んで、少し私の主張を。日本にも、「靖国参拝反対」や「外国人投票権」などという筋違いの主張をする方がいます。まったく馬鹿げた主張です。日本は日本人のもの、同様にこのアメリカはアメリカ人のもの(Native Americanたちは?という話は別の機会に)です。しかし、自国民を蔑ろにしてまで、必要以上に移民たちに媚びる人や、それを利用して勝手な主張や行動をとる移民たちには注意するべきです。

ちなみに、私にとって12月25日は師走の25番目の日である以外に意味を持ちません。独身40代の私にとって、クリスマスとはそんなものです。でも、10月の魔女やお化けの祭日のように、魔物に追いかけられる危険がない点では平和的で歓迎できます。



忙しかった日々も過ぎ、ようやく作業開始です。



何年も使われていないのか、格納庫の中は虫やクモの巣、土ぼこりだらけでした。
まだ整理はできていませんが、工具箱と棚も設置完了です。



職場から借りたCompressor。積極的な作業には容量が足りませんが、通常の整備なら十分です。工具はほとんど揃っていますから、このまま整備会社も開業できます。



天井の電球は1つ。しかし、相当な明るさですので、作業用ライトと組み合わせれば、夜間の作業も問題ありません。日の短いこの季節には助かります。




帰り道に撮影したKing Cityの夜の景色を少し紹介。
San FranciscoやLos Angelesと比べ、町も民家も、飾りつけは寂しいものですが。

こちらは銀行の屋上に取り付けられた、おそらくKing City唯一のクリスマスツリー。



何の飾りもない家が多い中、この家の飾りつけは目立ちます。



ひっそりと寄り添う雪だるまたち。センスがあるように思います。

2013年12月19日木曜日

尾輪式飛行機の世界にようこそ



年末が近付き、休暇の季節になったせいか、職場に訓練希望のお客が多くなってきました。夏なら問題にはならない数ですが、日が短いこの季節にはちょっと多すぎるように思います。燃料補給や乗り降りを助け合って、今日も無事に全ての訓練が終わりました。



こんな日々が続いているため、Pitts S-2Sの作業は全く進んでいません。上は座席後部に新たに設置するBattery Boxです。場所の関係で、小型のBattery(Odyssey社製PC680)に変更しました。-540のEngineを始動させる十分な電流は十分にあるはずですが、耐久性も含め、少し心配です。



補強部品。Battery+Battery Boxその他で重さが約16LBS。Smoke Oil Tankと同様に、計算上は+/-12Gまで耐えられるように設計します。



実際に取り付けると、外周の取り付け穴のEdge Marginが1/2 inch足りないことが発覚しました。作り直しです。



本日、正式に格納庫を借りる契約が完了しました。King Cityに引越ししてから半年、同僚の格納庫に間借りさせてもらっていましたが、これでようやく自立です。Pittsには大きすぎるこの格納庫が、月に$120。King Cityは実はいいところかもしれません。



「尾輪式飛行機の世界にようこそ」最終回


さて、JAPA会報の原稿の執筆作業の続きに戻ります。すでに締め切りが過ぎていますが、無理を言って延長させていただきました。今夜中に終えて、提出したいと思います。

2013年12月10日火曜日

JAS Redlands校 Training Campのお誘い



2014年4月10日から12日に渡り、CA州Borrego Valley空港(L08)において、IAC Chapter 36主催の曲技飛行競技会、「Borrego Hammerhead Roundup」が開催されます。

場所: CA州Borrego Springs、Borrego Valley空港(L08)
日程: 2014年4月10日 木曜日 選手登録、公式練習
                         4月11日 金曜日 競技会1日目
                         4月12日 土曜日 競技会2日目
カテゴリー: Primary、Sportsman、Intermediate、Advanced、Unlimitedの全カテゴリー

現在のところ、競技会への参加予定者は、芦田 博、鐘尾 みや子、白鳥 洋平、高木 雄一の4名です。(敬省略)




それに先立ち、Japan Aerobatic School Redlands校は、2014年2月10日(月)から13日(木)にかけ、競技会会場であるBorrego Valley空港(L08)で、トレーニング キャンプを行えるよう調整を進めています。日程は多少前後する可能性もありますが、少なくとも3日間は確保したいと考えています。

使用する機種はRedlands校所属のPitts S-2B。同行する飛行教官は、Redlands校の白鳥 洋平氏と、私 高木 雄一の2名です。参加者は現在のところ鐘尾 みや子氏1名です。2名の飛行教官が参加しますので、1人あたり2-3回の飛行を設けるとして、おそらくあと2名、合計3名までは十分に参加が可能かと思われます。




Borrego空港の滑走路(RWY 08 - RWY 26)の北側には、Waiver(航空法に定められた、曲技飛行に関する義務の放棄)を得たボックスが隣接しており、非常に効率のよい訓練が行えます。また、鐘尾さんと白鳥さんは現役のIAC Regional Judge、さらに鐘尾さんはFAI公認の国際ジャッジでもあります。お2人から貴重な助言も得られることでしょう。




同様に、4月上旬から数日間、同じくBorrego Valley空港において、競技会直前のトレーニング キャンプも開催します。日が長くなることもあり、各カテゴリーに3名を限度として、最大5-6名までは可能かと思われます。

参加希望の方は、JAS Redlands校の白鳥 洋平氏、または私 高木 雄一までどうぞ。日程に関しても相談次第で調整が可能です。参加をお待ちしています。

2013年12月8日日曜日

2013 ICAS Convention




毎年12月にラスベガスで行われる、ICAS(International Council of Air Show)の集会に行ってきました。IACが曲技飛行を統括しているように、Air ShowはICASによって管理されています。IACもICASも、どちらもアメリカ国内の団体なのに、Internationalという名前をつけるところがアメリカらしいです。



King CityからLas Vegasは約400Miles。
時間にして約7時間です。



夕方。カジノのホテルが見えてきました。
途中で事故による渋滞もありましたが、予定通りに到着です。



開会式



Attitude AviationのBoss、Rich Perkinsのブース。



Parachute Repack(定期検査)でお世話になっている、Alan Silverさん。






2日間の滞在でいくつかの講習に参加でき、よい勉強になりました。来年は小さいながらも出展して、Air Showへの参加の機会を増やせればと思います。

2013年12月6日金曜日

Smoke Tank 取付部 溶接作業



仕事の合間に、4130 Steel素材でSmoke Tankの取付部を製作しました。

このTankは5Gallonsの容量ですが、将来7Gallonsに増量したとしても、+/-12Gの反復荷重に耐えられる強度を確保しました。Pitts S-2Sの飛行速度から考えて、そのような状況は理論上不可能ですが、Tumble Maneuversでは非対称なLoadが発生することも考慮しておくべきでしょう。



取り付けを希望する場所に置き、溶接の準備を。



下から見た様子。



日曜午後4時。
休日の日も暮れかかった時間というのに、わざわざ溶接作業に来てくれました。
感謝です。



Smoke Tank取付部。
この他、細かな溶接もお願いして、1時間で終了しました。

Smoke TankにもいくつかFittingを溶接しなくてはなりませんが、それらはまた後日。
では、家に帰りましょう。

2013年11月27日水曜日

Smoke System作業 継続中


Smoke Oil Tankの自作は諦め、既製のFuel Tankを流用することにしました。10 in X 16.5 inの5Gallon Tankです。どうやら問題なく収まるようです。



ここに付いていたBatteryは操縦席後部へ移設することになっています。不要になったBattery取付用のTrayを取り外します。



久しぶりにHigh Speed Cutterの出番です。離れの格納庫なので、小型のCompressorを職場から借りました。感謝です。



Batteryの移設先はどこにしましょう。CertifiedのPitts S-2BのBattery取り付け部を参考にしたかったのですが、座席の構造から無理があることがわかりました。Fabric(羽布)が隣接しているため、接触しているSteel Tubeへの溶接もできません。空間は十分にありますが、思った以上に制限があります。



思い切って、溶接作業と兼ねて、胴体のFabricの張替えも行うか…いや、そこまでの大作業にはしたくありません。Batteryを小型化して、別のところに取り付ける案が良さそうです。さて、どこにしよう。



農薬散布用のBell 47ヘリコプターの整備をする隣の会社から、金属製のClampをいくつかいただきました。溶接せずに取り付けができ、場所の自由度は上がります。いくつかの案が挙がりました。しばらく悩むことにします。

2013年11月22日金曜日

The World On Time



西海岸にも冬の雨季がやってきました。雲が増え、時折雨が降り、ここKing Cityも夏とは違った顔を見せるようになっています。まだ飛行できないほどではありませんが、練習空域に雲が広がる中、訓練生を誘導し、雲を避けながら曲技飛行訓練をするのは神経を使います。




それでも、MinimumぎりぎりのLow IMCの滑走路に計器進入したり、嵐や上空のIcing Condition(着氷が起こる状態)の中を飛行しなくてよいのはほっとします。思い出せば、2007年から2011年にかけて3年ほど、私は貨物輸送の大手であるFedExの、支線を管轄する「FedEx Feeder」で飛行していました。




そこで使用していたのは、Cessna C-208B、通称「Grand Caravan」の貨物機型である、C-208B Super Cargomasterです。小型単発飛行機でありながら、広い荷物室を持つこの飛行機は、喩えるなら空の4トントラック。競合他社が使う、Piper PA-31 Navajoや、Beechdraft King Airなどの双発機に比べ、単発機からのコストパフォーマンスに優れる飛行機で、短距離離着陸性能と運動性能に優れ、操縦の楽しさがありました。




どんな飛行機でも何かしら弱点はあるものですが、このCessna C-208各種の最大の敵はIcingです。Deicing Bootsが全ての翼前縁を覆い、着氷を取り除くようになっていますが、作動させても完全に取り去ることはできるものではありません。通常の飛行高度である7000-13000ft MSLは、悪天候時にはIcingに最適な状況があり、また巡航速度が160-170KTSと遅いことから、Icingの恐怖もずいぶんと味わいました。延々と雨雲の中を飛びながら、高高度を飛ぶ旅客機をうらやましく思ったものです。




FedEx Feederの3年間は、それまでの曲技飛行教官としては得ることのできない、貴重な経験を得ることができました。と同時に、そこでの飛行を助けてくれたのは、これまで曲技飛行を通して築いてきた、飛行機操縦技術であったとも言えます。




こちらの身軽さを期待してか、ATC側もまれに面倒な要求をしてきます。もちろん、断ることもできますが、飛行機にそれを行う性能があり、自身に十分な技量があり、また合法で社内規定にも違反していないなら、交通の円滑化を求めて努力はあるべきでしょう。

低速での急旋回や、Short FinalでBETA Rangeで急減速させ、短距離で着陸を終えるなど、一見Riskyな飛行も、今飛行機がAOA(迎角)のどの領域にあるのか、荷重がどの程度発生しているのか、Yawingの発生や解消など、情報を計器に頼らずに得て飛行する技術を持つことで、安全性を最大限に持って行うことができました。曲技飛行訓練は、このような水平直線飛行の分野でも、安全性の向上に非常に有効です。




早朝から夜までと、長い一日が続く日々でしたが、多くの貴重な経験もたくさんできました。それでも、私の生きるところは曲技飛行でしょう。雲の隙間から見える上空の飛行機を見て、少し昔の思い出が出てしまいました。



以下、飛行中に撮影した動画をいくつか。


Cessna C-208B Engine Start
搭載しているのは、最大出力675 SHPの、Pratt and Whitney Canada社製 PT-6-114Aです。


Santa Maria空港 Visual Approach Runway 30 


Los Angeles国際空港 ILS Runway 24L
ILS 24LでApproachし、滑走路を視認したらSide stepで隣のRunway 24Rに着陸します。

2013年11月19日火曜日

North American AT-6D



職場にT-6がやってきました。AT-6Dという、元US Air Forceの上級訓練機です。話すと長くなりますが、この機体で何か計画しているようです。



Warbird(大戦機)のInstructorをされている、Dougさんを招いての座学。



塗装用の格納庫がこのT-6の住家になりました。
今後の塗装作業はどうなるのでしょうか・・・。



飛行前点検を説明してくれています。



訓練が始まります。
今日の一番乗りは誰でしょうか。



離陸出力の2,200RPMでは、Propeller先端が音速域になり、周囲に凄まじい音が響きます。PittsやExtraも騒々しい飛行機ですが、さすがにこの飛行機ほどではありません。人々からの苦情がなければいいのですが。


「それよりも、ExtraでUnlimitedの訓練をさせてもらった方が嬉しいのだけれど・・・」と、当初は興味のなかった飛行機でしたが、実際に乗ってみて気に入りました。離着陸などの低速での感覚は、重い機体と大きな慣性からStearmanやWACO YMFに似ていて、高速での曲技飛行などは、敏感で素直な舵から、軍用機らしい飛行を見せてくれる飛行機です。

調べると、T-6の試作機が飛行したのは1935年。この飛行機はD型ですから、さらに多くの改良が施されているとしても、細かな気の利いた作りなど、とても70年前の飛行機とは思えない出来です。軍用機の職人的な作りにはいつも感動させられます。