2020年9月6日日曜日

MEIに挑戦 10



試験官: 次は・・・そうだな、こうしよう。私は初めて多発飛行機に乗る生徒、君はインストラクターだ。初日の飛行前のブリーフィングとして、何か私にやってみてくれ。

: わかりました・・・。では、今日はDA42の初めての飛行だけれど、Vmca Demonstrationをやってみよう。あなたはこの飛行機の片方のENGが止まった状態で、この飛行機がどう飛行するのか、どのような性能があるのか見たいだろう。私が実演してみるから安心して見ていて欲しい。まず手順は・・・(以下省略)



3時間後。
口頭試験や講習のデモンストレーションが順調だったためか、予想より早く終わりました。どんなイベントであれ、自身に有利な方へ流れを導くことは基本の一つです。このCheckrideは初めから不利な状況だった。ではそれを私の力で変えてみよう。

MEIも含め、CFICheckrideでは試験官は受験者がインストラクションができるかを見極めます。どこまで精密な飛行ができるか、もちろんそれも重要ですが、訓練生に対して的確な指摘や助言ができることはさらに重要です。

そう、仮にIAPのデモを指示されても、私の行動や逸脱を言葉で解説できればよいのです。

Lancaster空港で離着陸を数回行い、全ては順調です。続いて練習空域に向かいます。Steep Turn(急旋回)を行い、Slow Flight(低速度での飛行)、Power Off Stall(低出力での失速と回復操作)などを行いました。

機種が変わってもこれらはいつも行っていることとですから、不安はありません。

続いてPower On Stall(離陸時を想定した、高出力での失速と回復操作)を指示されました。



: 担当してくれたインストラクターから、Power On Stall20%の出力で行うようにと勧められたのですが、いいでしょうか?

試験官: おいおい、誰が20%程度の出力で離陸するんだ?皆100%で離陸するだろう?

: 確かにその通りですね。

試験官: お前はアクロバットのインストラクターだろう?フルパワーで見せてくれよ。なあ?

: もちろんです!



この類の飛行機でPower On Stallを行うときは、出力をおよそ半分くらいで行うことが一般的ではないでしょうか。急上昇になり得るため危険だという理由でしょうが、それは工夫次第でどうにでもできるものです。

そう、「失速は速度にも姿勢にも関係ない」のですから。

約束通りにFull PowerPower On Stallを行いました。要領はいつも曲技飛行訓練で行うHarrier Flightと同じですから、私は少し得意気でした。

Vmca DemonstrationHigh Drag Demonstrationもこなして試験官も満足の様子です。さて帰ります。



試験官: よくやった。これで最後だ。私がILS RWY 8IAPの一種)を行うから、君はインストラクターとして指示してくれ。



他人の飛行を指示や指摘することに不安はありません。このまま落ち着いて普段通りに行えばもう大丈夫です。
そして、私はMEICheckrideに合格しました。



合格!
ありがとうございました。




1999年。
私は当初1-2か月と見積もったCFIの準備に丸1年をかけました。
今思えば、知識も満足できるレベルになく、またA&PFAAの整備資格)の専門学校への留学など、数年の空白期間に飛行技量は衰えてしまったことなどが原因です。
昔から人に物事を伝える、教えることが苦手だったこともあり、CFIという活動には乗り気でなく、取得後も人一倍苦労しました。


商業インストラクターとして活動して、今年で20年。
今回も含め、人々に評価されるまでになるとは、人生とは本当にわからないものです。


MEIを今後どのように使うかはまだ計画にありませんが、プロフェッショナルとして学び続けていくことは欠かせないものだと、改めて思いました。
次は何に挑戦しよう?




自画自賛の溢れる内容になってしまい、恥ずかしいかぎりです。

Chrisさん、Nulton Aviationの皆さん、試験官のJohnさん。
すてきな夏休みをありがとうございました。

MEIに挑戦 9



試験官: 君がGround Instructionで心がけていることは何だ?

: ポジティブであることが一つです。例えば、私は曲技飛行競技についても教育しますが、その内容は本質的にネガティブです。この点がこうだった、この部分はこうなっていた。全ては逸脱や失敗を指摘し、それらを直し、次回の改善に生かします。これらをどうポジティブに伝えるか、技術が求められます。(以下省略)

私: そして、首尾一貫していること、ここも私は大切にしています。私は飛行前のブリーフィングでこの点に注意します。手順が一貫せずに、常に変わるようでは、訓練生も困ります。曲技飛行の解説ではこのときに模型をよく使いますが、マニューバーを説明するときはその模型を精確に動かすように心がけています。説明と行動が異なってしまっては講習にはなりません。



試験官は私の言動に興味を持っている・・・。
そう、この調子です。
試験の場がまるでいつもの教室のようになりました。



試験官: では、Stallとは何だ?

: (それは私の専門分野です)StallとはAngle of Attack(迎角)がCritical Angle of Attack(臨界迎角)を超えることです。言葉では多くの方が正しく答えられますが、残念ながら多くの方が誤解している言葉、そして現象です。(以下省略)

私: 私は「飛行を司るFlight ControlElevator。そしてFlying Energyを作り出す要因にAngle of Attackを重要視します。そして、AOA Controllerであり、なおかつAOA Indicatorであるこの・・・(以下省略)

私: そして、こんなこともありました。曲技飛行訓練にやってきたある方の話ですが、どうしてもStallは速度に関係するという考えが抜けず。そこで私はHammerhead Turnというマニューバーを例にして・・・(以下省略)

試験官: うん、その通りだ・・・。では、Traffic Pattern Operationについて、何かあるか?

: 私はこれまで陸上単発飛行機で、そして滑空比が最悪の部類の飛行機で飛行してきましたから、「If there is a chance of an engine failure, it will be the engine. Not an engine.」を合言葉に、「滑走路がそこにある以上、常に滑空範囲に留まること」と伝えています。

私: 特に単発飛行機はいつでも滑空機に路線変更する準備があること。例えそれがジャンボジェットであっても同じことかもしれませんが、単発飛行機ではさらにクリティカルなことです。もちろん、私の先輩の受け売りですが。

私: そして、滑空範囲を計るのに目安として、Cessna 172なら「1/3 of a wing strut, or closer.」、Pitts Specialなら下側主翼の翼端を「定規」にと伝えています。



試験官: Bang!(机をたたく音) Excellentだ!! ちょっと待っていろ、Nulton Aviationに電話をしてくるから。お前のようなインストラクターが必要なんだ。CAから引っ越ししてこい!



あれ、ずいぶん興奮している・・・。
これは・・・行けるかもしれません。

10分ほどして、電話から戻ってさらに続行です。

MEIに挑戦 8



試験官: では始めようか・・・。学習とはつまり何だ?

: Change in behaviorです。例えば、人や動物は何かを経験したとき、それが結果の如何に関わらず、次に類似した状況に遭遇した時の行動に変化が・・・

試験官: ああ、それでいいよ。・・・君は普段どんな仕事をしているんだ?

: PittsExtraなど高性能曲技飛行機で、エアロバティックフライトのインストラクターをしています。最近はあなた方Airlineの業界でも取り入れているでしょうが、UPRTUpset Prevention and Recovery Training)が増えてきました。そして、自身で曲技飛行競技やエアショーにも参加しています。

試験官: ほう!そうなのか、UPRTか。それはぜひ一緒に試してみたいな。私も昔曲技飛行に興味を持って、Cessna 152のアクロバットができる飛行機を買って楽しんだよ。

: はい、Aerobatですね。曲技飛行機でありながら、普通の飛行機の特性も持ち合わせていて、UPRTに適しているいい飛行機だと思います。

試験官: そうなんだよ。あの飛行機はこんな感じでね・・・。


・・・おや?
少し場の雰囲気が変わりました。

CheckridePTSまたはACSと呼ばれる試験の基準に沿って行われます。受験者が誰かに関わらず、厳格に、公正に行われます。基準も大切ですが、さらに深く観察されるのは「この人に資格を与えて大丈夫か、この先安全に飛行することができるか」です。全ての項目を通して、試験官はそこを見極めます。

そうだ。今の私は、例えばIAPに不安があるけれど、彼を自分の分野に引き込んで、私のペースで進めて行けばいい。私は過去20年の「商業インストラクター」として得られた経験と技術を、このMEICheckrideで使うことにしました。

MEIに挑戦 7



Day 8 ついにCheckrideの朝です。昔はCheckrideとなると、夜もあまり眠れず、朝は緊張して震えたものでした。あの頃は・・・と昔を懐かしく思い出します。所々に点在する雨雲を避けながら飛行して、840分、PALancaster空港に到着です。

試験官のJohnさんと挨拶をしますが、COVID-19のために握手はなし。書類を渡すときも、「それ以上近づくな」と私を制止。仕方がないことですが、奇妙な緊張感の中、Checkrideが始まりました。

今回の試験官は某大手エアラインのチェックエアマンをしている方でした。彼は航空会社の仕事がないときは、こうして試験官を行い、最近はヘリコプターの資格を取得したといいます。厳しそうな方ですが、典型的な、根っからの飛行機好きな方という印象です。

私の経歴を確認し、受験に必要な担当教官のサインを確認して、口頭試験の開始です。

すでにCFIを保持している場合は、FOI(基礎教育方法)は必須事項ではありませんが、まずここから始まりました。私のCFIの取得が20年前と、長く時間が経っているからでしょうか。




試験官: では始めようか・・・。学習とはつまり何だ?

MEIに挑戦 6



数日後。
旅の疲れもとれて、そろそろ次回の予定を聞いてみようかと連絡すると・・・


Yuichi、いい知らせだ。金曜日にCheckrideが入ったぞ!」とChrisさん。


ええと、今日は水曜日です。
明日木曜に移動するとして、その翌日がCheckrideですか・・・?
どうしよう。
まだほとんどX-Planeの練習もしていないのですが。

数分悩んで、勢いだけで明日の出発を決めました。




Day 6 翌日。朝3時に部屋を出て、SFO(サンフランシスコ国際空港)に向かいます。しかし、やはり軽率だったかと後悔してしまいました。本当にどうしよう。

17時に現地に到着。今夜はこれから明日のCheckrideに向けて、DA42のおさらいとIAPの練習です。夜21時になってようやく着陸。長い一日になりました。

ただ幸運なことに、明日のCheckrideは試験官の都合が悪いとのことで、土曜日になりました。あと1日練習ができます。よかった・・・。




Day 7 明日のCheckrideに向けて最終確認です。DA42の飛行は、Single Engineや緊急手順も含めてほぼ問題なくできるようになりました。

ただ、昨日の訓練でも露呈したことですが、問題はやはりIAPです。特にSingle Engine状態で行ったILSは、コースを左右に大きく蛇行してしまいました。試験直前でこの調子では明日は無理かもしれません。




少しでも改善できるように、今夜はCheckrideを行うLancaster空港のIAPを見直します。おやすみなさい。

MEIに挑戦 5



Day 4 今日は朝から雲が低く、時折雨になっています。これでは飛行訓練は無理でしょう。操縦席に座って、チェックリストの手順の見直しやG1000の練習をしていると・・・



KLBE Latrobe空港、通称 Arnold Palmer Regional空港
有名なゴルフ選手、アーノルド パーマー氏の故郷です。


Yuichi、もう一人DA42の訓練生がいるから、お前も一緒にどうだ?隣の空港までIFR(計器飛行方式)で飛ぶから、レストランで昼食をとって、帰りはお前が飛んでみろ」とChrisさん。それは勉強になります。ぜひ!




PA州は本当に美しく日本を思い出します。アパラチア山脈が連なり、周辺の空港は全て標高が大きく異なり、1000 ftから3000 ft近くまでと変化に富んでいます。どの空港にも充実した設備がありますが、不思議なことに飛行訓練学校はほとんどみかけず、訓練機もほとんど飛んでいません。冬の雨季を除くと青空がずっと続くCA州と異なり、一年を通して様々な天候を経験できますから、飛行訓練に適していると思いました。




DA42の離着陸は不安なくできるようになりました。しかし問題はIAPで、何度やっても一向に安定しません。これで昔はPart 135で貨物機に乗っていたのかと、自分でも疑問になるほどです。




Day 5 技量が目標に到達しないまま、明日に予定していたCheckrideは延期にしてもらいました。私は一度部屋に帰り、またX-Planeで練習します。2週間後に戻って訓練をすると伝え、Johnstownを後にしました。

MEI、とてもではありませんが、私には「簡単な資格」ではありません。いや、DA42で訓練を終えたばかりで、また計器飛行に関しても有効な方ならそうなのでしょうが。今の私には十分にATP(定期運送用操縦資格)やType Rating(型式限定。大型機やジェット機など、型式ごとの資格)に匹敵する難易度に感じます。

MEIに挑戦 4



さあジョーンズタウンへ出発です。深夜に部屋を出て、早朝のサンホゼ発の飛行機から3本乗り継ぎ、ピッツバーグ到着は夜22時前。総飛行時間はともかく、まるで国際線のような長時間の行程です。そして機内や空港内でずっとマスクをしていたためか、頭痛で辛い・・・。

レンタカーを2時間運転し、日付が変わり、やっとの思いでホテルに到着しました。あまり寝付けないまま、とにかく横になります。おやすみなさい。



Nulton Aviation


Day 1 Chrisさんの心遣いで初日は午後から座学です。ここで、MEIの試験でもIAPInstrument Approach Procedure、計器進入方式)のデモンストレーションが必要なこと。そしてIAPSingle Engine(片方のエンジンを停止させた片発状態)で行う必要があると判りました。

さあ困りました。実はX-Planeで計器飛行の練習をしたのですが、9年の空白は予想以上に長く、衰えた技術は回復できませんでした。明日はIPCInstrument Proficiency Check、計器飛行の知識や技術の再確認)の完了を目指します。予習をして眠ります。



KJST Johnstown Airport


Day 2 DA42の操縦席を模擬したRedbirdシミュレーター(https://simulators.redbirdflight.com/)で、午前と午後の2回飛行しました。合計6時間の訓練の後、合格のサインはいただきましたが、実情は私自身がよく判ります・・・。部屋に帰り、深夜までまた復習と予習を行いました。



KJST RNAV RWY 33


Day 3 ようやくDA42の飛行に入ります。5日間設けた訓練日程で今日で3日目。この様子だと、予定の期間での完了は難しそうですが、「Just do it」です。とにかくやってみます。

昨日のシムで少しだけDA42G1000の取扱に慣れました。しかし、実際に飛行しながらとなるとどうしても23歩遅れます。まだ外の景色が見えるからいいものの、これでIMCInstrument meteorological conditions、計器飛行方式が適用される気象条件。霧や雲の中での飛行など)となると、今の私にはお手上げです。




DA20-A1Katana」のように、DA42の優れた視界と高い飛行性能に感動しましたが、ピッチ方向の静安定が少し足りず、高度の維持に苦労させられました。これはDA42の特徴の一つだそうで、確かにDA20-A1も似たような飛行機でした。

他にVmca Demonstration(臨界発動機の出力を下げ、反対側の発動機を全開にしての実演)や、片側のエンジンの停止と再始動を行い、空港で離着陸を何度か行いました。1時間半くらいの飛行でしたが、曲技飛行をしていなくても、訓練なら同じように疲労もあるのだと、改めて思いました。

MEIに挑戦 3

まとめると・・・

初めての飛行機、DA42 Twin Star
初めてのディーゼルエンジン
未経験のGarmin G1000グラスパネル
2011年以来の計器飛行と夜間飛行
1995年の資格取得以来の多発飛行機

少し不安要素が多い気がしますが、誰でも初めてのときは初心者です。




MEIの試験で確認されることは、大まかに言えば、多発飛行機に関する講習が行えること、飛行訓練を当該機で適切に、安全に行えることです。「お前がこれまで受けてきた、どんな資格よりも簡単だぞ。」とCrhisさん。うーん、そうは思いませんが・・・。訓練は4日間、5時間のシミュレータと5時間の飛行訓練で、見積は$5,000だそうです。

多発飛行機に関するシステムや航空力学、そして片方のエンジンが停止したときなどの非常時の取扱いを学び、DA42のチェックアウトを完了させます。装備されているG1000の取扱いも学ばないといけません。

これらを全て仕上げ、インストラクターとして訓練を提供できるまでにと考えると・・・。DA42にすでに乗り慣れていて、現地の空域も熟知していれば可能でしょうが、私には4日間での完了はとても無理です。

でも5日間あれば何とかなるか・・・。では、5日間の訓練、そして6日目に試験という計画で予定を立てます。




2週間後の出発まで、多発飛行機のおさらい、IFR(計器飛行方式)、FAR(航空法規)、そして多発飛行機に関するレッスンプランの準備を行います。



X-Plane 11
まるで現実世界のように見えますが、PCのフライトシムです。


そして便利なのがX-PlanePCベースのフライトシム。https://www.x-plane.com/)です。「なんだ、ゲームじゃないか」などと侮ってはいけません。Cessna 172SBoeing 737など、付属している機体は実機さながらに再現されています。

そこに追加で購入した、6人乗りバージョンのDA62をアップロードして練習をしました。飛行特性はほぼDA42と同じ。とても役に立ちました。



G1000を装備した、X-Plane 11のDA62の計器盤


画面内のS/W(スイッチ)やC/B(サーキットブレーカー)はほぼ全てがマウスで操作が可能で、現役の旅客機飛行士も練習に使うほどの正確さを誇ります。G1000の予習もでき、とても助かりました。

MEIに挑戦 2


1995年 CA州Watsonville
多発飛行機の訓練時代。当時23歳!


私は 2000年にCFICertified Flight Instructor、飛行教育証明)を取得して、フライトインストラクター職を始めました。翌年CFIICertified Flight Instructor Instrument、計器飛行教育の教育証明)を取得し、続けてMEIの取得も考えましたが、その頃Pitts S-2Bの曲技飛行競技を始め、それっきりとなりました。そう、今こそがMEIに挑戦する時です。



2016年 Chrisさんと私、5日間の訓練を終えて。


ペンシルバニア州在住のChrisさんに連絡して、MEIの訓練はできるか聞くと、「もちろんだ。ぜひ来い!」との返事を受けました。彼は4年前に曲技飛行訓練にやってきた方で、ビジネスジェットに乗務する傍ら、フライトインストラクターをしています。行先はPAJohnstownNulton Aviation。決定です。



Diamond Aircraft社製 DA42 Twin Star


Nulton Aviationで訓練に使用する陸上多発飛行機は、2007年製Diamond Aircraft社製DA42Twin Star」。当初は多くの飛行学校で使われる、クラシックなPiper PA-44Seminole」やBeechcraft 76Duchess」などを考えていましたが、DA42もとても興味があります。

DA422004年の登場から今年で16年経つものの、私には十分に最新鋭機です。4人乗りで一回り大柄になりましたが、昔乗ったDA20-A1Katana」という2人乗りの飛行機に構造や形状がよく似ています。アクロバット機のようなスティックで操縦を行うところも同じです。



Thielert社製のTAE 125 - 02 - 99型エンジン


革新的なエンジンを採用するところもその流れでしょうか。DA20-A1Rotax社製の912型、最大出力80HPのエンジン+定速プロペラという特異な組み合わせを採用したように、DA42Thielert社製のTAE 125 - 02 - 99型、最大出力135HP、ターボチャージャー装備のディーゼルエンジンを搭載しています。エンジンコントロールはFADECシステムによって自動化され、スロットルでの出力調整を除いて、混合比やプロペラ回転数などは手を加える必要がありません。



Garmin G1000 グラスパネル


そして、計器盤に配置されたGarmin社製G1000グラスパネルです。今後このようなTAATechnologically Advanced Aircraftの略。Moving MapIFR下での運航を可能とするGPS航法装備、そして自動操縦など高度な装備を持つ航空機)はさらに一般的なものとなることでしょう。従来のいわゆる「Steam Gauges」と呼ばれる、機械式の飛行計器で飛んできた私には貴重な経験となるはずです。

MEIに挑戦 1

MEIに挑戦 全10回




中国武漢市発のCOVID-19の影響で、2020年は世界中で大変な騒動になりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。

ここCAKing City周辺は、3月から4月にかけての一時期な品不足は解消し、人々がマスクをつけているという点を除けば、特に目立った変化はありません。お店に入るときにマスク着用が義務付けられ、レストランの店内での飲食は禁止でテイクアウトのみで、床屋は店外に椅子を置いて営業するなど工夫しています。医療機関の実情はわかりませんが、BLMに関する暴動もなく、ここKing Cityは平和です。




職場のTutima Academy of Aviation Safety3月半ばから飛行訓練の受け入れを停止しました。州は食料品店、薬局、ガソリンスタンドなどと同様、飛行訓練事業もEssential Businessとして営業を制限付きで認めていますが、当校はCOVID-19を「未知の病気である」として一時閉鎖する決定を下しました。




エアショーなどのイベントは全て中止、またはバーチャルエアショーに変更。曲技飛行競技関連は、世界選手権は全て中止。参加を楽しみにしていた全米曲技飛行選手権は中止になりました。しかし7月以降、米国内の地方競技会は活動の再開が見られます。



職場が閉鎖ということは、それはつまり我々のような飛行学校のインストラクターは収入がなくなるということです。基本的に収入は出来高制ですから、訓練生がいなければそこに給与は発生しません。せっかく愛機Pitts Special S-2Sの整備を終えましたが、練習飛行する金銭的余裕もありませんし、競技会もエアショーも中止ということは、練習する意味もないことになります。




このまま2020年が何もないまま終わってしまうのは寂しい。この状況に不安はあるけれど、これが永遠に続くことはない。出費は気になるけれど、何か新しいことに挑戦してみようか。そうだ、MEIMulti-Engine Instructor、多発飛行機の飛行教育証明)はどうだろう?

2020年2月16日日曜日

時には昔の話を 2





2010年2月18日、17時18分(米国西海岸時間)。FedEx Feederの単発ターボプロップの小型貨物機、Cessna 208B、Super Cargomasterは定刻でCA州アーケータ空港を出発した。

日没は17時54分。2月になり日は延びたが、出発地のアーケータは雲に覆われ、また上空にも雲が残り、離陸後すぐに暗闇に包まれて夜間飛行になった。






高度9,000ft MSLにレベルオフ、南東へ進む。サクラメントバレーに入ると完全にVMCになった。アイシング(着氷)もなく、今夜の飛行はいつになく順調だ。今夜は宿に早く帰れるだろう。

自機はSouthwestやUnitedなどの旅客機に交じり、サクラメント国際空港の滑走路16Rへ、対気速度170KIASでヴィジュアルアプローチを開始した。滑走路まで約1Mile、高度300ft AGL、速度約160KIAS。おや?前方に何か、白い雲が見える。・・・いや雲じゃない、鳥の群れだ!






「バン!」


同18時41分、バードストライク。避けることもできず、一羽が右側主翼の、レーダードームの向こう側に衝突したようだ。しかし運がよかった。どうやら右側主翼に当たっただけで、エンジンの運転は順調だ。突然のことで驚いたが、滑走路も近い。今はまず着陸しよう。

パワー バック、フラップス ダウン。減速と共にAOA(迎角)を増やし、そして増えたAOAが増えすぎないように、AOAをCAOA(臨界迎角、失速角)に近付かないように、フラップスを下げる・・・。

しかしおかしい。なぜか飛行機が右へロールする・・・。左エルロンを入れるものの飛行機はさらに右へロールを続け、ついに右に20-30度バンク、しかしエルロンはすでに左へ一杯。

一瞬、炎に包まれる自機が脳裏に浮かぶ。いやそれはまずい。パワーを足して、エルロンにDynamic Surgeを加え、飛行機を水平に戻すことができたのは運がよかった。少々ハードランディングになったものの、着陸し、飛行は終了。

「助かった・・・。」






事故後の検査:

鳥は右側主翼に備え付けられているレーダーの外側、ランディング/タキシ―ライト部に衝突した。衝撃は右側主翼のスパーウェブ、スパー(主桁)のロードを受け持つ主部分に伝わり、結果スパー全体が下向きに変形した。加えて、エルロンのコントロールケーブル部分が脱落し、エルロンコントロールが減少した。

当該機は右側主翼を交換し、約3か月後にサービスに復帰した。現在も活躍中だ。






事故回避の方法は: 


バードストライクの防止は・・・。それは鳥を避けることの他にはない。


鳥は通常、曇りの時なら、雲の下や雲の上を飛ぶことが多いから、雲を抜けるときに注意しろと、またイナーシャル セパレータを開いて、異物の混入に備えろ、などと言われる。外を注視することで発見も可能だろうが、単独飛行が主の小型貨物機の運行では、やはりワークロードの面で難しい。

では、この件で発生したフレア中の右ロールについてはどうだろう。バードストライクの結果、右側主翼のスパーキャップが下向きに変形、またエルロンのコントロールケーブルの脱落が原因とのことだ。

これは私見だが、鳥が衝突して主翼のリーディングエッジ(前縁)が破損、変形したことで、気流の剥離が早期に起き、右側主翼のストール(失速)が早くなったこともあると思う。なぜ翼型がそのような形状になっているのかを考えれば当然のことだろう。

飛行中に主翼や尾翼が破損しリーディングエッジが変形したら、速度は高めを維持し、迎角はなるべく浅く、着陸時のフレア(引き起こし)は最小限にした方がよい。尾輪式飛行機でいうところのウィールランディング(接線着陸)の考えだ。これを用いることで、片翼の早期失速を含む、異常な失速現象を防ぐことができるはずだ。






もし、それでも飛行機のロールをコントロールできなかったら・・・。私は主翼の破損まで考えていなかったし、またエルロンのコントロールロスも頭になく、いつも通りにフレア操作をした。結果、上記のようにエルロンが「足りない」状態になったわけだが、そこで有効な手法の一つが、通称「Dynamic Surge」だ。一般的には曲技飛行での超高迎角機動で用いられる手法で、通常飛行では不要。しかし私は、Cessna 208Bにおいては強い横風下の離陸時に、この手法を使って早めにウィングローに移行して離陸するなど、普段から親しんでいた。

エレベータやエルロン、ラダーなど、操縦舵は最大角度からわずかに戻し、また最大角度に入れる「サージング」を与えると、一定角度で維持するよりもその効果が向上する。例えば、低速度+高迎角からループ(宙返り)を行うとき、エレベータに「サージング」を加えると、勢いを失った機首上げを再開させることができる。

スピントレーニングで飛行機が完全なオートローテーションに入ってしまい、通常のスピン リカバリーでは止まらないということも、過去に何度か遭遇した。その時は、ラダーとエレベータをサージングさせて回復させた。

同様に、強い横風のある滑走路から離陸するとき、教科書的に、エルロンを最大角度で風上側に保持しているよりも、最大角度とわずかに戻した角度とを往復させた方が、早くにウィングローに移行でき、離陸時の方向維持を容易に行える。その効果はせいぜい60-70KIASでウィングローになるところを、50-60KIASで行える程度のもので、必ずしも必要な操作ではない。また着陸時に使ったことはこれが最初だったが、こうした研究(遊び)が身を助けたとも言えるはずだ。






鳥の正体は:

翌日、鳥の遺骸は検査機関に運ばれ、衝突したのはタンドラ スワン(Tundra Swan、コハクチョウ)と判明。サクラメント周辺は川や湖が多く、鳥の群れは常に目にした。コハクチョウは翼幅が2m前後の大きな鳥で、もし複数の鳥に衝突したら、操縦不能になることは十分にあり得る。コハクチョウ、許しておくれ。






この一件から10年。職業飛行士として毎日飛び続けていれば、いずれまた何かあるだろう。

でも今は、10年間の無事故達成が嬉しい。
Happy 10-year anniversary!



詳しい内容はこちらから:
NTSB Accident Number: WPR10LA141
https://reports.aviation-safety.net/2010/20100218-0_C208_N892FE.pdf

2020年1月7日火曜日

時には昔の話を 1


人生には楽しい思い出がたくさんあり、しかし中には思い出すことも嫌な出来事もあるものです。
私の過去の出来事を少し・・・。



Episode 1

某日某所。今日から3日間訪れる訓練生はヨーロッパ在住のエアラインパイロットだ。彼は家族とヨーロッパ某国に住み、韓国の航空会社でAirbus 330の機長をしている。彼との飛行訓練はこれで2回目。ある小型単座のスポーツ機の飛行に備え、今回は離着陸訓練を主にしたいとのことだった。

彼のこれまでの総飛行時間は約10,000時間。ただ、過去の経験のほとんどは大型旅客機。今回の訓練で使用する小型尾輪式飛行機では、離着陸時の方向維持が主なポイントになることは言うまでもない。

ヨーロッパからの長旅の後の訓練であり、しかし彼には効率よい飛行訓練を、可能な限りの経験をしていただこうと、私が機体の準備や燃料補給を行い、その間の10分は彼には休憩してもらう。飛行機と私のスケジュールは一杯。確保できた4時間の間に約48分の離着陸訓練を2回、可能なら3回。いや4回いけるかと、とにかく詰め込んだ。

ハイパワーなこの小型尾輪式飛行機は加速上昇性能に優れ、他にトラフィックなどの干渉がなければ、48分の間に15回から20回の離着陸を行える。その様はまるでローラーコースターだ。初日は4時間の時間制限の間に2回。2日目は3回飛行した。

離着陸の難易度の高さで定評のあるこの機体で、これだけの離着陸回数を行えば、疲労が限界に達するのは当然だ。彼の尾輪式飛行機の離着陸技術はまだ不十分で、着陸後に方向維持を失う事は頻繁にあり、緊張が走る中での訓練が続いた。

3日目の朝、私は軽い頭痛がする中で目が覚めた。プロフェッショナルとして、体調に不安があれば飛行訓練を辞退することは当然だろう。しかし、忙しい日程を調整して、遠くヨーロッパからやってきた彼との訓練を辞退する勇気は私にはなかった。これまでも、さらに具合の悪い状態で飛行することは何度もあった。そう、軽い頭痛程度で辞退することない。

今日は最終日。着陸訓練の仕上げをがんばろうと、ブリーフィングをして出発。しかし、方向維持に必要な彼のラダー操作は、どうしても前輪式飛行機、それも大型機のスタイルだ。とても尾輪式飛行機のそれではない。1回目の飛行を終えて、燃料補給、そして休憩している彼を呼んで、また離着陸訓練に上がる。

技術というものは簡単に身に付くものではない。およそ15回行った着陸で、ゴーアラウンドは67回はあっただろうか。フレア中の機体の高さ、降下率、方向維持、ハードランディングなど、何か問題が露呈すれば、またその予兆があれば、私はすぐにゴーアラウンドを指示した。最終的な目標が彼が自身でその判断ができるようにならなくてはいけないが、「ゴーアラウンドは常に最善の選択肢だ」を合言葉に何度もゴーアラウンドした。その度に私は両親指を立てて「Good job!」と叫んだ。

そろそろ離陸して40分になる。彼の集中力も限界だ。着陸して休憩しようと私は提案した。そう、私は「Let’s make a full stop(着陸しよう)」と言ったのだった。

そしてそれは起きた。着陸直前に滑走路左側に寄った飛行機を見て、私は「Give me the Right Aileron(右にエルロンを入れて)」と指示した。そうなのだ、それまでの私なら「ゴーアラウンド!」と必ず指示していた状況なのに、その時の私の言葉は「右にエルロンを入れて」だった。

後席に座る訓練生に可能な限りの視界を提供しようと、前席に低く座ることが私のスタイルだ。それは、外から私の姿が見えないと言われるほどに低い。それもまたいけなかった。私は一瞬機体の姿勢が判らなくなり、次の瞬間彼は「Oh, No!」と叫んだ。

気が付くと機体は左に大きく傾き、左翼端は滑走路に接触していた。「I have!」 咄嗟に私は操縦を代わったが、すでに遅い。機体の姿勢と降下率から判断して、機体がハードランディングしたのは明確だった。

その後の機体検査で、左翼端と左エルロンに擦過痕があり、左側のウィールパンツを破損した他にダメージはないと判明した。幸いにも飛行機は修理可能、そして我々2人も無事だったことはよかった。私は、わずかにも彼を危険にさらしたと、そのことを彼に詫びた。

修理は保険会社を通さずに、社内で行うことになった。確かに、保険会社にクレームすれば保険金額も上昇し、私はともかく、彼の経歴にも傷がつくことになるだろう。家族を養う彼のためにも、それはできるだけ避けたい。

彼のミスでハードランディングとなったことだが、全ての責任は教官として、機長として搭乗していた私にある。アクシデントレポートの必要もない、保険会社へのクレームもしないと伝えると、彼は本当に安心した様子だった。よかった。

責任の一つとして、私はおよそ1ヶ月、無給で飛行機の修理に当たった。私はあるイベントとその準備におよそ1年半をほぼ無収入で過ごしていたため、再び迎えた無給生活は生活をさらに厳しいものにした。私は彼に1ヶ月分の生活費の支援をお願いした。「申し訳ないが、$2,000の支援をお願いできないだろうか?」と。

彼からの返事は残念なものだった。「何を言っているんだ?会社からの給料があって、保険会社からもお金が出るのだろう?それでさらにお金をなんて、俺はよくても家族が納得しない。断る。」とのことだった。「保険会社へ請求すれば、いつ、どこで、誰がそのイベントに関係したか、全てが知られるのに、それを恐れたのはあなたではないか。」と憤りを感じたが、それは伝えなかった。私は友人を失った。

飛行機に携わってから25年+。飛行機の操縦技術や整備技術は少々身に付いたが、対人関係は相変わらずだ。誰かのためにBestを尽くし、そして後悔する。私自身のこの問題点の改善は期待できないが、とりあえず、今後は「Go around!」をさらに大切にしようと思う。

2020年1月1日水曜日

2020年 あけましておめでとうございます




Happy New Year

あけましておめでとうございます
今年もどうぞよろしくお願いします

髙木 雄一
REDFOX Airshows




Photo: Mr. Hank Lutz