2016年12月24日土曜日

Pitts S-2S 整備作業 3


エンジンの取り外し作業を開始します。




ターボチャージャー(過給機)なし、インタークーラーなし、冷房用コンプレッサーなし、真空ポンプなし、曲技飛行機に搭載されているエンジンは簡素ですが、取り付け時には少なからず悩みが出ます。取り外し前に可能な限りの写真を撮影します。




エキゾーストパイプ(排気管)に取り付けられた スモークオイル(発煙用オイル)のノズル。スモークオイルの燃焼効率(発煙効率)はとても高い次元で仕上がりました。研究を重ねたノズル形状は極秘です。




チェリーピッカー(エンジンホイスト)を取り付けて、エンジンを支えます。




エンジンのマウントボルト・ナットを外します。




上側も外れました。慎重に、慎重に。




機種によっては、マグネト(点火用磁石発電機)を外さないと、エンジンマウントを通らないこともあります。その点、簡素な曲技飛行機は作業が比較的楽です。




外れました。




台に乗せて、エンジン部分の作業を行います。今年こそは、バッフル(冷却空気の整流板)も手を加えたいものですが、時間はあるのでしょうか。




相変わらずEGT(排気温度)に差があるので、燃料系統は念入りに確認したいと思います。




ファイヤーウォール(防火壁)。ここは交換して、ここは改良して・・・。




許容範囲内ですが、エンジンマウントは修理を依頼します。




溶接作業から戻った水平安定板を仮付け。




来年はタンブル系が易しくなるはずです。




塗装の下準備を。




エポキシ系塗料で塗装。完全硬化まで1週間待ちます。




待っている間にスモークシステムの整備を行います。4-minute FreestyleやAir Showで飛行する飛行機では、飛行の完成度を左右する重要なシステムです。




スモークオイルタンク内部のフロップチューブ(おもり付きのチューブ)。曲技飛行中は常にタンク内部で振り回されている部品ですが、異常はありません。




スモークオイルのポンプは内部で錆が見られました。スモークオイルに水分でも入り込んでいたのでしょうか。これまではあまり必要性を感じませんでしたが、スモークオイル系統も燃料系統と同様に、水抜きを考えた方がいいのかもしれません。


尾翼の羽布の作業に加え、他にも改善を要する部分が多く出てきます。2月末、遅くても3月初旬には試験飛行ができるよう進めます。

2016年12月18日日曜日

Q and A 可変ピッチプロペラについて

Q. アクロバット用の飛行機には可変ピッチプロペラが取り付けられているようですが、その理由は何ですか?






A. 航空機に取り付けられるプロペラは、固定ピッチプロペラと可変ピッチプロペラの2つに大きく分けられます。言葉の示す通り、プロペラのピッチ(プロペラハブに対するプロペラブレードの取り付け角)が変更できない固定式のものと、ピッチを変更できる可変式のものの2つです。




木製の固定ピッチプロペラを装備したPiper J-3 Cub。



曲技飛行機でも、7ECA 「Citabria(シタブリア)」やPitts S-1系など、固定ピッチプロペラが取り付けられた機種は多く見られます。そして、一般的に180HPから200HPを超える高出力の飛行機、例えばCessna 182やPiper Saratoga、Beechcraft Bonanzaなどでは可変ピッチプロペラが取り付けられていますが、これらはプロペラのピッチが自動的に変化し、設定したプロペラ回転速度を自動的に保つ「定速プロペラ(または恒速プロペラ)」です。




今年のUS National Aerobatic Championships(全米曲技飛行選手権)のコンテストディレクタ―を務めたギャリーさんと、彼の愛機Pitts S-1S。固定ピッチプロペラを装備しています。



可変ピッチプロペラとは「プロペラのピッチを変更できる」形式のものを指し、これには地上でのみピッチを変更できる「Ground Adjustable Propeller」や、High SpeedとLow Speedの2種類のピッチを選択できる「Two-Speed Propeller」、モ―ターグライダーや多発飛行機に装備される「Featherable Propeller」、遠心力とスプリングの力によって自動的に適正なピッチに変化する「Automatic Propeller(製品名Aeromatic Propeller)」などが含まれます。

定速プロペラは可変ピッチプロペラの進化型です。飛行速度や出力に応じて、プロペラ回転速度は常に変化しますが、プロペラガバナがプロペラピッチを自動的に調整することによって、設定したプロペラ回転速度を保持するというものです。ただ、プロペラのピッチを変更できると言うよりも、ピッチは回転速度保持のために自動的に変化すると言うべきでしょう。地上では出力も対気速度も低いため、扱いは固定ピッチプロペラに類似しますが、飛行中は操縦士が任意で設定した回転数を保持する「定速プロペラ」として運用が可能です。




整備中のPitts S-2Sの操縦席。左の青いレバーでプロペラ回転数を調整します。



定速プロペラの構造や操作方法などは教科書などでご理解いただけますが、ではそれぞれ運用上どのような違いがあるのでしょうか。飛行経験のない方にも理解できるよう、自転車を例に説明してみます。

飛行機は「坂道を自由に設定できる乗り物」です。ここで、上り下りの険しい山道を、変速機のない自転車(固定ピッチプロペラ)で走ると考えてみましょう。急な上り坂ではペダルを漕ぐことができずに止まってしまうこともあるでしょうし、また急な下り坂ではペダルの回転が追いつかず、推進力を十分に利用できなくなります。




整備中のPitts S-2S。プロペラハブとプロペラブレードは別部品で、根元部分が回転し角度が変化します。



もし変速機があれば(可変ピッチプロペラ)、ギア比を減らすことで上り坂でもペダルを漕ぎ続けられるでしょうし、また下り坂ではギア比を上げてペダルを漕いで、速度をさらに稼ぐこともできます。さらに、その変速機が自動で無段階に変化すれば(定速プロペラ)、ケイダンス(自転車のペダルの回転数)は自動的に一定に保たれますから、運転者は走ることに集中しながら、身体的な負担を軽減しつつ、効率よく走れることになります。

定速プロペラは確かに便利な装備ですが、固定ピッチプロペラで行う曲技飛行もまた楽しいものです。調べたら、古い動画が出てきました。




〈動画〉 Basic Aerobatics



機種は固定ピッチプロペラ装備のAmerican Champion Aircraft社製の7ECA「Citabria」です。またこのような飛行機で、曲技飛行の原点に戻ってみたいものです。今悩んでいることも、解決できる答えがそこにあるかもしれません。

2016年12月9日金曜日

Pitts S-2S 整備作業 2


エレベーターのリブ部分を縫い付けます。規定通りに、1inch毎に印をつけていきます。 





糸で羽布が切れないように補強のテープをリブ上に貼ります 





1月のBlogを参考に、縫い方をおさらい。





おさらいできませんでした。仕方なくテキストを参考にします。





縫い付けた部分をテープで覆います。 幅は2inchesのものを選択しました。





次は角を覆います。こちらは3inchesのテープを。剥がした古い羽布を参考にしますが、この飛行機はExperimental機でもあり、自身の判断で選択できるところです。





曲線部分はアイロンで整形して皺を取っていきます。時間がかかりますが、この程度のRなら、バイアステープを使わなくても処理できます。





順調、順調。 





どうですか? と、得意気。





次はI-Strutです。エレベーターの曲線は外側でしたが、このような内側部分は処理が難しいです。





30分で1-2㎝くらいの進度です。





来年の飛行を夢見ながら、根気よく進みます。





チョコクロワッサン。おいしい。





上下の部分もテープを貼ります。





中央から弛みを取るように、端へ進みます。





片側が終わりました。




アイロンの温度を下げて、アイロンがけ。皺が取れると同時に、浮いてしまった接着部分もきれいに付いていきます。





完成! 表面に薄めた接着剤を塗布しますが、これは時間が空いたときにでも。



水平安定板は溶接が終わり、現在は方向舵の作業を行っているそうです。この間にエンジンを外して、エンジンマウントの再塗装の準備を行います。

2016年12月4日日曜日

スクーターとツーリング 3


Redfox AirshowsのHPを管理してくださっている青山さんから、ガラス細工のキーホルダーをいただきました。赤と黒、このスクーターにぴったりです。ありがとうございます!





明日はこのスクーターでパソロブレスまで遠出をしてみます。Google Mapによると、自転車が通れる道で65Miles、約104kmです。このスクーターならちょっとした冒険です。





ちょと野暮ったくなりましたが、後ろに予備の燃料ボトルを付けました。約0.8L、メインと合わせるとおよそ300㎞は走れるはずです。





余った5052、0.500in厚のアルミニウム材を使いました。少し剛性不足ですが、試作品としてはOKでしょう。





秋は暖かい飲み物も欲しくなります。甘いものも大歓迎。





暖かくなりました。出発!





「King Cityにようこそ」
看板が新しくなったかな?





50㏄のスクーターではFreewayは走れません。並行して走る一般道を走ります。





ここからはFreewayの向こう側の道で行くようです。





10inの小さな車輪と貧弱な緩衝装置では、路面の凸凹を吸収しきれません。道路のわずかな亀裂も衝撃が大きく伝わります。





 おいしい。





山道に入ります。道路の表示も標識もありません。Google Mapは本当に正しいのでしょうか?





もうすぐ頂上です。いい景色。





やれやれ。ずっと対向車とすれ違いませんでしたし、こうなるような気がしていました。この先は牛を放牧しているプライベートエリアだそうです。





もうランチタイムには間に合いません。トンカツは諦めて、アイスと一休み。





まっすぐ帰るのもつまらないので、寄り道しました。ここもいい眺めです。





スーパームーン!

日が沈むと途端に寒さを感じるようになりました。20代の頃は、真冬の寒さも素直に受け入れていましたが、今は体温が奪われていくのがよくわかります。次回は装備を整えて、別の道で行ってみます。