2013年8月30日金曜日

お知らせ



本日から9月2日(月)まで、CA州のDelanoで行われる曲技飛行競技会に行って参ります。次回の更新は早くても2日以降です。競技会前までにはBlogのJudge Schoolを終えておきたかったのですが、残念です。

それでは、皆様もよい週末をお過ごしください。

2013年8月28日水曜日

ジャッジスクール 107-9

2. 180° コンペティション ターン

一般的には略して「ターン」(turn、旋回)と呼ばれますが、通常の旋回と区別するためにあえて「コンペティション ターン」と表記しました。旅客機に乗客として乗っているときを想像していただくとわかるかと思いますが、通常、旋回はロール イン(roll in、旋回方向へ機体をバンクさせること)が行われると同時に旋回も開始し、ロール イン、旋回、ロール アウト(roll out、バンクした期待を水平に戻し、直線飛行に移行すること)は常にコーディネーション(coordination、釣り合い)を保って行われます。対してコンペティション ターンでは、ロール イン、ターン、ロール アウトと分けて行われます。



180° コンペティション ターン


a. ホリゾンタル ライン
主翼を水平に、ヘディングと高度を保ったホリゾンタルラインを飛行します。この場合はアップウィンド(ジャッジラインから見て、左から右へ)から開始します。

b. ロール イン
コンペティション ターンに向けて、旋回する側へ少なくとも60度のバンク角を確立します。ロール インでのロール レートは一定で、かつ後のロール アウトと同一であることとされていますので、確認してください。また、ロール イン中はヘディングと高度は保持します。もし、ロール インの途中でターンが開始したり、ヘディングがずれてしまった場合は、5度=1点の減点が行われることは言うまでもありません。

c. ターン
ターン中は一度確立したバンク角を保持し、一定の旋回率で旋回します。ここでも高度は保持しますが、風の影響から旋回半径は変化しても判定には影響しません。

d. ロール アウト
指定された角度の旋回を終えたら、旋回を即座に停止し、そのヘディングを保持した状態でロール アウトを行って主翼を水平に戻します。ここでのロール レートは先のロール インと同じであることとされています。

e. ホリゾンタル ライン
アップウィンドから180° ターンを遂行すれば、終了したときはダウンウィンドに向かっているはずです。



3. リバース ハーフ キューバン



リバース ハーフ キューバンの表記の種類


今回のB用紙のシークエンスでは、リバース ハーフ キューバンは上の1のように描かれていますが、2のように描かれている場合もあります。一見異なるフィギュアに見えますが、シークエンスの表記上の理由で異なるだけで、内容はどちらもリバース ハーフ キューバンです。



リバース ハーフ キューバン


a. ホリゾンタル ライン
以降は、ヘディング、高度、主翼が水平であることなどの説明は省きますが、ホリゾンタル ラインの判定は他のフィギュアと同じです。

b. 1/8 ループ
アレスティ カタログでは、ここは鋭角状に描かれていますが、表記のルールとして、「180度未満のパーシャル ループ(1/8、1/4、3/8)は曲線は用いず、直線を組み合わせて描くとされています。急激なピッチ変化を用いて、角のある飛行をしなければならないという誤解を受けることもありますが、一定の半径を保ったパーシャル ループであれば、どのような半径でも許容されます。

c. 45 アップ ライン、アップライト
45度の角度は主翼の翼弦で判定します。風が強いときなど、フライト パスに惑わされないように注意してください。また、1/2 ロールの後の45 アップ ラインはここと同じ長さでなければなりませんから、長さを確認し、覚えておくようにします。

d. ハーフ ロール(1/2 ロール)
45度のピッチ角度を保ったまま、ハーフ ロールを行って180度姿勢を変化させます。ロール レートは一定で、ロール中もヘディングと45度のピッチは保持します。

e. 45 アップライン、インバーテッド
再び45 アップ ラインですが、ここの長さは1/2 ロール前と同じでなければなりません。判定基準は以前説明した通りです。

f. 5/8 ループ
一定の半径を保ってパーシャル ループを行います。1/8 ループと5/8 ループは同じ半径でなくても許容されます。

g. ホリゾンタル ライン
飛行方向を180度変化させ、再びアップウィンドに戻って終了です。

2013年8月26日月曜日

ジャッジスクール 107-8

2013 JAC プライマリー カテゴリー ノウン シークエンスの解説

ここまで説明してきた、フィギュアの判定と採点の基礎を理解していただいた方には、このシークエンスの判定は難しくはないことでしょう。ヘディング、ライン、ループ、パーシャル ループ、ラインの長さ、これらからフィギュアを判定し、そしてフィギュア間のラインを確認してシークエンスを完成させます。では、それぞれのフィギュアを個々に見ていきましょう。



2013年 JAC プライマリ カテゴリー ノウン シークエンス


用意したシークエンスがB用紙ですので、ここではオフィシャル ウィンドが右から左へと設定された状況を想定して解説を行います。皆さんはジャッジとして、ジャッジラインでB用紙を手に競技機を判定するとお考えください。「5度=1点」の基準を思い返して、図を元に判定してみましょう。



1 ターン アップライト スピンの動き


1. 1 ターン アップライト スピン

a. ヘディング
ついスピンの要素のみに注目してしまいますが、フィギュアの判定は開始のホリゾンタル ラインから始まっています。シークエンスの右上の「Wind Direction」の印を見て判るように、このフィギュアはオフィシャル ウィンドに向かってアップ ウィンド(風上に向かっての飛行の意)から開始となっていますから、ホリゾンタル ラインのヘディングは右方向へ、X軸に平行でなければなりません。

b. ホリゾンタル ライン
言葉が示すように、C.G(航空機の重心位置)の軌跡が一定高度でなれけばなりません。同時に、主翼も水平であることも求められます。

c. スピン
スピンとは日本語で「錐揉み」と呼ばれます。判定基準では、「航空機がストール(失速)した後、3軸の動きが同時に起こり、オート ローテーション(自転)が発生していること」、「オート ローテーションが停止まで継続していること」とされています。アップライト スピンですから、ストールもポジティブ側(正方向の迎角を伴うストール)となります。もし、3軸の動きが同時ではなく、例えばロールのみが先に起きてしまったら、そのロールの角度(5度=1点)の減点が与えられます。ここでは1回転のスピンですから、360度の回転をX軸のアップウィンドから行い、再び同じヘディングであるX軸のアップウィンドに戻って停止します。

d. バーティカル ダウン ライン
競技のスピンは特徴的です。通常飛行では、スピンは防止が何よりも重要で、アクシデンタルなスピンが起こった時は即座に停止させ、高度の低下を最小限にして高度を再び得ることが必要です。しかし競技では、スピンを停止させた後は航空機を垂直に下に向け、バーティカル ダウン ラインを確立しなくてはなりません。もちろん、ヘディングだけでなく、ここでの主翼は水平であることが求められます。

e. 1/4 ループ
バーティカル ダウン ラインからホリゾンタル ラインにかけて、パーシャル ループである、1/4 ループが存在します。このとき、航空機のC.G.の軌跡が一定半径を描いていなくてはなりません。また、ヘディングがX軸と平行であることと、主翼が水平を保っていることは引き続き求められます。

f. ホリゾンタル ライン
フィギュアはホリゾンタル ラインを描いて終了となります。C.G.の軌跡は再び一定高度となっていること、主翼が水平であること確認します。

g. ヘディング
1回転のスピンを行って、終了時の姿勢がアップライトであれば、ヘディングは再びアップウィンドで、X軸に平行となるはずです。


以上です。それぞれの要素について、判定基準を列挙してみました。スピン1つにしてもこれだけの確認すべき要素があります。初めは刻々と変化する航空機の動きに追いつかず、忙しさに目が回りますが、慣れてくると減点箇所が見える毎に順調に行えるようになります。私の場合は、手の指で減点を数える方法を使い、フィギュアが終わったときに10点から引き算して採点を算出しています。

塗装作業終了

週末に作業していた、胴体右側のAccess Doorの塗装が終わりました。先週はAileronの紺の塗装を終えて、ようやく目標が達成です。



使用したAero-Thane(商品名)


金属面への塗装なので、今回使用したのはPolyurethane(ポリウレタン)系塗料のAero-Thaneです。その毒性を恐れて今まで使用しませんでしたが、仕上がりは驚くほどきれいです。何の苦労もなく平滑になり、艶のある輝く表面になりました。ただ、外気導入のマスクを利用しても、時折吸い込んでしまうようで、気をつけなくてはなりません。



マスキング中。
少しにじんでしまいましたが、上手く修正できました。



しかし、よく見ると、ところどころに艶のムラがあります。
まだまだです。



Access Doorを開くとこのようになります。
今後、内部にSmoke Tank(発煙用オイルのタンク)を増設します。



Aileronも紺の線が入りました。
塗り分けは大変です。




今週末の8月30日から、Delano空港で曲技飛行競技会に参加してきます。Unlimited Categoryの練習をしていますが、どうなるのでしょうか。最大330HPのPowerplantを全開にしても、Pitts S-2SはVertical Up LineでRollをするには時間が限られ、とても慌しい飛行です。自身の性能と機体の制限内で、どこまで行けるのか。無理ならばまたAdvancedにと逃げ道は作っておいて、あと4日間練習をしてみます。

2013年8月25日日曜日

ジャッジスクール 107-7

2013年 プライマリー カテゴリー ノウン シークエンス(規定課目)の紹介

全日本曲技飛行競技会では、プライマリーからインターミディエイトまでのカテゴリーで、ノウン シークエンスはアメリカの曲技飛行団体であるIAC(International Aerobatic Club)が採用したものを用いています。例年、プライマリーのノウン シークエンスを構成するフィギュアは以下の6つです。


1. 45 アップ ライン


2. 1ターン エルロン ロール


3. ループ


4. ハーフ キューバン エイト


5. 1ターン アップライト スピン


6. 180° ターン


競技者が多く、人気のカテゴリーであるスポーツマンとインターミディエイトは、IACのノウン シークエンスは毎年定期的に更新されますが、プライマリーのノウン シークエンスは数年に1度という頻度です。日本では競技機の関係から、プライマリー カテゴリーに続けて参加する競技者も多くいらっしゃいます。2010年の第1回全日本から第3回まで、すでに同じノウンを3回使用していましたので、今年度は新しい挑戦をと、別のシークエンスを用意しました。



2013年度 JAC採用のプライマリー カテゴリー ノウン シークエンス


プライマリー カテゴリーのノウン シークエンスは、Cessna A152 Aerobatや7ECA Citabriaなどの小出力の曲技飛行機でも飛行可能なフィギュアで構成されていることが基準で、例年先に紹介した6つのフィギュアを組み替えて使用されてきました。全日本でおなじみの、富士重工製 FA-200 Aero Subaruも同様、またはそれを超える飛行性能を持っていると考えられますから、その性能の範囲内で、新しいフィギュアを1つ加え、再構成したものがこのシークエンスです。



リバース ハーフ キューバン


今年度のシークエンスに新たに加わったフィギュアは、3番に設けられたリバース ハーフ キューバンです。5番のハーフ キューバンに似たフィギュアですが、1/2 ロールを45 アップ ラインで行うことが特徴です。45 アップ ラインで減速しながらの1/2 ロールとなるため、低出力気では、ロールの遂行と完了までの速度維持が難しいフィギュアです。このフィギュアの採用には意見もありましたが、新たな可能性を追求していただきたいとの願いから採用となりました。

なお、例年見られた45 アップ ラインは、構成するフィギュアの数と、総合的な難易度を抑えるために削除されました。プライマリー カテゴリーに参加する競技者たちが、今年どのようにこのシークエンスを攻略するのか、楽しみです。

2013年8月24日土曜日

ジャッジスクール 107-6

フィギュア間のライン

全てのフィギュアはホリゾンタル ライン(水平ライン)から始まり、ホリゾンタル ラインで終わります。ジャッジはフィギュアの飛行がホリゾンタル ラインになったときをフィギュアの終了と判断し、判定を元にそのフィギュアの採点を行います。つまり、フィギュアとフィギュアの間には、明確なホリゾンタル ラインが求められます。

もし、ジャッジがフィギュア終了時のホリゾンタル ラインを確認できず、そのまま次のフィギュアの開始が見られた場合は、ノー ライン(No Line)またはミッシング ライン(Missing Line)として、1点の減点が前後のフィギュア両方に与えられます。



ハンプティ バンプとループを組み合わせたシークエンス

例えば、B用紙またはC用紙に、上に示すようなフィギュアの構成があったとき、ジャッジにはどのような飛行が見られるべきでしょうか。




ハンプティ バンプとループの飛行の例 1

上は望ましい飛行の例です。一つ目のハンプティ バンプを終えた後、競技機は一旦ホリゾンタル ラインを飛行し、その後ループに移行しています。ホリゾンタル ラインの長さに規定はありませんが、離れたところにいるジャッジにも明らかに判定できるような、十分な長さが必要です。



ハンプティ バンプとループの飛行の例 2

この競技者は、ハンプティ バンプを終えた後、即座にループを開始してしまいました。初めての競技会で焦ってしまったのか、それともボックス内にフィギュアを収める余裕がなかったのでしょうか。このような飛行は珍しくありませんが、初心者が初めての競技会で緊張していても、または高性能機の参加のため、飛行速度が速く、場所の確保に余裕がなくても、判定は公平に行われなければなりません。

以上のように、もし競技飛行中にノー ラインが見られたときは、A用紙のコメント欄に、どのフィギュアとの間にあったのか、判るように何らかの方法で記録をしてください。線の上に「ノー ライン(No Line)、または「ミッシング ライン(Missing Line)」と書き、元の採点と、減点を施した最終的な採点の両方を書くことが一般的です。元の採点には横線を引いて無効であることを示すなど、細かい対処の方法はチーフ ジャッジや他のジャッジの方にお尋ねください。

2013年8月22日木曜日

ジャッジスクール 107-5

ラインの長さの判定



シャークス トゥース(Shark`s Tooth、サメの歯)



45 アップ ライン上の1 ターン エルロン ロール


上の2つのフィギュアのように、ライン上にロール コンポーネントが加えられたときは、ロール コンポーネントはラインの中心、すなわち前後のラインの長さは均等でなければなりません。この判定基準は、いくつかの例外を除いて全てに適用されます。下に、6つの状況に分けて解説します。


1. ラインの長さが均等(X=Y)であるとき


減点なし


2. ラインにわずかな長さの差が見られるとき


1点減点


3. ラインの長さの差が2:1までのとき


2点減点


4. 長さの差が2:1を超えるとき


3点減点


5. ロール コンポーネントの前、または後のどちらかにラインが見られないとき


4点減点


6. ロール コンポーネントの前と後の両方にラインが見られないとき


2点減点 


5のように、ラインがどちらかに存在するときは減点が4点と高く、6のように、ラインがどちらにもないときはその半分の2点の減点に留まっていることに注意してください。例えば、低出力で、運動性能に限りのある競技機では、あえて両方のラインをなくし、減点を最小限にするという手法もあります。



<例外>

ラインの長さが均等でなくても許容される例外として、スピンの後に続くラインと、スピンと他のロール コンポーネントを組み合わせたラインとがあります。


1ターン アップライト(ポジティブ)スピン 

スピンはホリゾンタル ラインからストール(Stall、失速)し 、即座にスピンに移行しますから、スピンの前にラインは確立できません。つまり、スピンの前後のラインには、長さに関する判定基準は適用されません。



1ターン アップライト スピンと1 ターン エルロン ロールの組み合わせ

スピンの後にロール コンポーネントを加えた場合も、同様にラインの長さに関する判定基準は適用されません。スピンは単体でも高度を大きく失うフィギュアですが、この判定基準を利用して、減点を避けつつ、かつKファクターを高く設定することも可能です。

2013年8月20日火曜日

ジャッジスクール 107-4

ループ(宙返り)及びパーシャル ループ(部分ループ)の判定



ループ(宙返り)



ハーフ ループ


・ ループ、パーシャル ループは半径が一定とし、判定はフライト パスを用います。

・ ループは真横から見たとき真円となるため、開始と終了の高度も一致します。

・ 横風によるドリフトは判定に影響はありませんが、半径は一定でなければなりません。つまり、前後からの風の影響は考慮する必要があります。

・ ループ及びパーシャル ループ時のヘディングがボックスのX軸またはY軸に平行であること、主翼は水平であることが求められ、5度ずれる毎に1点の減点(5度=1点)の判定基準は引き続き用いられます。



以上がループ及びパーシャル ループの判定基準です。ループにおいても、ヘディングや主翼のずれには明確な減点判定基準がありますが、半径の変化に関するところには、「それぞれのジャッジが個々に判定基準を持ち、一貫した判定を行うこと」とだけ記されています。ジャッジによって、「半径が変化する度に1点の減点」、「開始と終了の高度が100ftずれれば1点減点」など、いろいろな意見が聞かれます。重要なことは、常に同じ基準で、一貫した判定を行うことです。

競技規則に紹介されているループの判定基準に、「最初の1/4のループの半径を基準にして、その後の変化の大きさに応じて1点ずつ減点する」というものがあります。ループの判定には経験を要するものですから、まずはこの方法を用いてはいかがでしょうか。下に、ループでよく見られる形を紹介します。




 様々なループの形

左: 縦長のループです。アルファベットの「L」の筆記体に似ていることから、「Lシェイプト ループ」(L-Shaped Loop、L形ループ)と呼ばれます。テール ウィンド(追い風)からループを開始したり、頂点で十分な速度がないときにこの形になります。

中央: 横長のループです。かぼちゃに似た形のため、「パンプキン シェイプト ループ」(Pumpkin Shaped Loop、かぼちゃ形ループ)などと呼ばれます。ヘッド ウィンド(向かい風)からループを開始したり、頂点でフロート(荷重を減らし、半径を維持すること)が過大であるとこの形になります。

右: 開始と終了の高度が異なるループです。アルファベットの「e」に似ていることから、「e シェイプト ループ」(e-Shaped Loop、e 形ループ)などと呼ばれます。

2013年8月19日月曜日

ジャッジスクール 107-3

バーティカル ラインの判定

・ バーティカル ライン(垂直ライン)は、鉛直線とZLA(Zero Lift Angle、無揚力角)が平行にになったときの判定します。

・ 機軸の角度は判定基準ではありません。主翼のZLAが対象となります。(下図参照)

・ 風による航空機のドリフトは判定基準に影響しません。フライト パスが垂直を維持していなくても、ZLAを維持している限り減点は与えません。

・ バーティカル ラインから5度ずれる毎に1点(5度=1点)の減点を与えます。


バーティカル アップ ラインを飛行する航空機

航空機によっては、機軸と主翼の翼弦にある程度の取り付け角が存在していることに注意してください。上の図の2機の航空機はどちらもZLA正確なバーティカル ラインを維持していると判定します。



<簡単な航空力学 / ZLA(無揚力角とは?>

主翼はAOAと対気速度があるときに揚力を発生しますが、AOAが少なくなれば揚力は減少し、ある角度で消失します。この角度を無揚力角、ZLAと呼びます。航空機が等高度で水平飛行をする場合、揚力の発生は必須ですが、垂直上昇と垂直下降時には揚力は不要です。例えば、ボールを垂直に上に投げて、続いて真下に落ちてくるような運動をさせるとき、ボールに揚力は不要であることと同じです。航空機も同じで、バーティカル ラインを飛行するときは、揚力は不要ですから、ZLAでの飛行が必要となります。しかし、実際のZLAは主翼の翼型毎に異なり、厳密には競技機の機種毎に覚えて判定に備えなければなりません。これでは曲技飛行競技の判定は困難を極めます。一般的な技法として、主翼の翼弦(前縁から後縁までの線)が鉛直線と平行であれば、無揚力角で飛行している、つまり正確なバーティカル ラインを描いていると言うことができます。



45ラインの判定

・ 45ラインは主翼の翼弦がZLAから45度の角度であることで判定します。

・ 機軸の角度は判定基準ではありません。

・ 風による航空機のドリフトは判定基準に影響しません。フライト パスが45度を維持していなくても、主翼の翼弦がZLAから45度の角度を維持している限り減点は与えません。(下図参照)

・ 45ラインから5度ずれる毎に1点(5度=1点)の減点を与えます。



45アップ ラインを飛行する航空機

風の影響を受けると、フライト パスが45度から変化しますが、判定基準には影響しません。
また、フライト パスの変化によって、45ラインがずれているように錯覚することもありますから、注意が必要です。

2013年8月18日日曜日

ジャッジスクール 107-2

 ヘディングの判定

・ ターン、ローリング ターン、ハンマーヘッドやハンプティ バンプなどのバーティカル ライン、テール スライド、スピンの旋転中などを除き、ヘディング(機首方向)は常にX軸またはY軸と平行に飛行します。

・ 風によるドリフト(偏流)は判定基準ではありません(下図を参照)。

・ ヘディングがボックス軸から5度ずれる毎に1点(5度=1点)の減点を与えます。



横風を受けて飛行する競技機
横風のため、図の競技機には偏流が見られますが、
ヘディングがボックス軸と平行である限り減点はありません。



<要点>

5度=1点の減点は、角度の判定の全てに見られます。採点は0.5点刻みで行われますすから、2.5度=0.5点の減点も用いられます。5度という角度に迷いが出たときは、時計の1分(または1秒)の角度が6度であり、5度という角度はほぼこれと同じと思い出してください。



ホリゾンタル ラインの判定

・ ホリゾンタル ライン(水平ライン)はC.G.(Center of Gravity、重心位置)の描くフライト パス(軌跡)で判定します。判定基準には、「ホリゾンタル ラインは鉛直線から90度のライン」と定義していますが、簡潔に言えば、一定高度で飛行している競技機の描くラインがホリゾンタル ラインです。

・ 競技機のAOA(Angle of Attack、迎角)は判定基準ではありません(下図参照)。

・ フライト パスとホリゾンタル ラインからのずれは、5度=1点の減点を用います。また、同時に主翼の傾きにも注意し、水平からの傾き5度につき1点の減点が行います。



 異なるAOAで飛行する航空機



<簡単な航空力学 / AOA(迎角)とは?>

主翼が揚力を発生させるためには、相対風に対して上向きの角度が必要です。主翼の前縁と後縁とを結んだ線(翼弦)と相対風との角度を迎角と呼び、今後はAOAと略して表記します。自転車で走っているときに、手の平を横に出して、向きを上下させると揚力の発生を経験できます。簡単に言えば、この相対風と手の平の角度がAOAです。航空機が空を飛行するにはこの揚力が必要ですが、航空機の対気速度が速ければ(上図の上の航空機)AOAは少なくとも十分な揚力を発生できますから、航空機は水平に近い姿勢で飛行します。対して、対気速度が遅いと(上図の下の航空機)、少ない対気速度で十分な揚力を発生させる必要がありますから、AOAは大きく、航空機は上向きの姿勢で飛行します。

2013年8月16日金曜日

ジャッジスクール 107-1

7. 判定基準及び採点方法の解説と2013年 プライマリー ノウン シークエンス(規定課目)の紹介

判定と採点の基礎

1. 採点は10点からの減点法で行い、ミスがあれば、判定基準に従って、減点方式で採点する。
→加点方式ではありませんので、失敗が見られない完全なフィギュアにば、10点が与えられます。


2. ストレート アベレージ法(全ジャッジによる採点を平均化して得点を算出する。ジャッジ数が3
-5人など、数に限りがある場合に有利な方法。)、あるいはフェア プレイ システム法(FPS、各フィギュアの最も高い採点と最も低い採点を除外し、残りの採点を平均化して得点を算出する。先入観や偏見を除外できるため、さらに公正な判定が行われるとして、国際選手権などで用いられる。)のどちらかが用いられます。


3. 1つのミスにつき、0.5点刻みで採点を行う。
→A用紙の採点欄には、5.5、6.0、7.5・・・といった数字が記録されます。


4. 判定基準は常に一貫して公平であること。
→競技者の経歴や評判、競技機種に左右されないようにします。

「この競技者は世界選手権で上位に立つ人だから、もう少し減点を少なくしよう。」
「この競技者は低出力機での出場だから、初心者に違いない。減点を多くした方が適当だろう。」

残念ながら、このような偏見はまれに見られることです。競技者が前年度の世界チャンピオンであろうと、今回が初めて競技会に出場する競技者であっても、判定基準は同じです。もし、同じフィギュアを同じように飛行したら、同じ判定と採点が行われるべきです。


5. ジャッジが手にするB用紙、あるいはC用紙を基準とし、そこに示されているフィギュアやシークエンスが行われていること。
→フリー(自由演技課目)でまれに見られる失敗ですが、競技者が過去にシークエンスを何度か変更したことなどが原因で、間違ったシークエンスを用意して飛行してしまうことがあります。この場合も、判定はジャッジが手にするB用紙またはC用紙が優先され、競技者が操縦席に用意したシークエンス カードということにはなりません。


6. X軸またはY軸に機首方向が一致しているか。
→旋回や、バーティカル アップ、バーティカル ダウンなどを除き、競技機はジャッジから見て左から右、または右から左(X軸)に飛行するか、ジャッジに向かって、あるいはジャッジから遠ざかる(Y軸)飛行をします。逸脱がある場合の減点方法は後に説明します。


7. フィギュアとフィギュアの間に明確なホリゾンタル ライン(水平飛行)があるか。
→フィギュアはホリゾンタル ラインから開始して、ホリゾンタル ラインで終了します。見られない場合の減点方法は後に説明します。


8. フィギュアの中で指定されたラインを維持しているか。




→航空機の描くフライト バス(軌跡)やラインは、ターン、ループ、ハンマーヘッドのピボット旋回、テール スライド、スピンなどを除き、上の図のような角度のラインに限定されます。それぞれのラインの判定基準については後ほど説明します。


9. ループ、パーシャル ループ部の半径が一定であるか。


10. 指定されたロールがラインの中間、またはループの中心で均等に行われているか。判定基準については後に説明します。


11. ラインの長さ、ループの半径、ロールの速さなどに惑わされないこと。
→高性能機の鋭い飛行はジャッジの目を眩ませることがあります。全ては判定基準に従います。


12. 各部の減点を合計し、その場で採点を行う。
→競技飛行は休みなく、連続的に行われますので、ジャッジは判定、採点でとても忙しくなります。後で飛行を思い返して、公正に採点し直すことはできませんから、避けるべきです。この対処法は後に説明します。

2013年8月15日木曜日

ジャッジスクール 106-9

フィギュアの構成上の注意

オプショナル ロールとマンダトリー ロールの記号があるところにロール コンポーネントを加えることができますが、どんなものでも、いくつでも加えられるという訳ではありません。そこにはいくつかの決まりがありますので、説明をしておきます。


1. それぞれのオプショナル ロールとマンダトリー ロールの記号のところに加えられるロール コンポーネントは2つまでです。



1/2 ターン エルロン ロール+1 ターン エルロン ロール
2つのロール コンポーネントの組み合わせですから、合格です。



1 1/2 ターン エルロン ロール+1 ターン エルロン ロール
これも2つのロール コンポーネントの組み合わせですので、合格です。
〈注意〉矢印が3つありますが、2つのロール コンポーネントとして扱います。



1 ターン ポジティブ スナップ ロール+1/2 ターン エルロン ロール+1 ターン エルロン ロール
3つのロール コンポーネントを加えていますから、認可できません。



1 ターン アップライト スピン+1 ターン エルロンロール
2つのロール コンポーネントであり、合格です。



1 ターン インバーテッド スピン+1/4 ターン エルロン ロール+1 ターン エルロン ロール
3つのロール コンポーネントの組み合わせとなり、認可できません。



2. 同じ型のロール コンポーネントが継続されることを示すため、同じ方向への、同じ種類のロール コンポーネントは、記号の上部を線で繋ぎます(リンクさせる)。



2 ターン エルロン ロール
360度 X 2で、合計720度の連続したエルロン ロールです。
合格です。



1 1/4 ターン アップライト スピン
1回転と1/4回転(360度 + 90度)の連続したスピンです。
合格です。



1 ターン エルロン ロール+1 ターン ポジティブ スナップ ロール
異なるロール コンポーネントですから、このようにリンクはさせません。
この場合は、次のようにリンクさせずに構成してください。



異なるロール コンポーネントの組み合わせであり、合格です。


3. 同じ方向へ回転するロール コンポーネントは、異なる種類のものを組み合わせます。



1/2 ターン エルロン ロール+1/2 ターン ネガティブ スナップ ロール
同方向への回転ですが、異なる種類のロール コンポーネントですから、合格です。



1 ターン エルロン ロール+2 ポイント ロール(180度で一時停止する)
2 ポイント ロールも同じエルロン ロールの一種ですから、認可できません。



1 ターン ポジティブ スナップ ロール+1 ターン ネガティブ スナップ ロール
どちらもスナップ ロール としては同じであり、認可できません。
〈注意〉このネガティブ スナップ ロールの記号は黒く塗りつぶされていますが、先の赤く塗ったものと同じ意味です。白黒の印刷では黒に、カラーでは赤になります。)



以上で、アレスティ カタログの基礎に関する説明は終わりです。「この数字は何を意味しているのか?」、「どうやってフィギュアが出来上がるのか?」など、疑問を解消するために説明をしてきましたが、実務もなく、このBlog上の説明で、全てを理解することは 難しいことと思います。しかし、全日本曲技飛行競技会のジャッジには、競技者が作成したフリー シークエンスの確認と承認などに関する業務はありませんから、これらフィギュアの構成に関する知識がなくても、次に説明するフィギュアの判定基準と採点方法さえ理解して頂ければ、ジャッジングは十分に可能です。