2015年5月25日月曜日

今日の失敗談 - Elevator Jammed




曲技飛行機からのBailout(緊急脱出)の最も大きな原因は操縦系統の故障と言われます。エルロン、エレベーター、ラダー、3つの主操縦系統の中では、機体尾部に異物が入り込み、エレベーターの作動角度が制限されること、そしてラダーを操作するラダー ケーブルが疲労で破断してしまうこと、この2つが一般的です。

飛行前点検では、ライトを使って胴体内部を注意深く検査していますが、それでも100%完璧に行えることはないのでしょう。今回は練習飛行中に起きたエレベーターの故障について、記録も兼ねてこのBlogに書いてみます。




垂直姿勢から背面飛行に移行する予定でしたが、Elevatorを引き切れないことに気付きました。Rudderを蹴ってHammerhead turnでRecovery。さあ次はどうする?

訓練生にも伝えることですが、「もしElevatorを引けなければ押せ。それもできなければBailoutだ。」は心に留めておかなくてはならないことの一つです。時間的な猶予は高度が低くなればなるほど少なくなり、迷いは事故につながります。

幸運なことに、Elevator Travelに余裕があり、UprightでRecoveryすることも、+1G下で飛行を継続することもできました。どうやら着陸速度の80 - 100 MPHでも問題なく飛行できるようです。大切な機体を手放すことなく戻れそうです。




〈動画〉 Today's Mishap - Elevator Jammed




無事に着陸できました。後を見ると、ああ、やはり。AN4 Boltに取り付ける大きさの、AN365 Nutが引っかかっていました。




このNutは見覚えがあります。冬に行ったCondition Inspectionで行方不明になった部品です。無くなったものと思っていましたが、その後も3ヶ月の間、20時間近くの曲技飛行中、ずっと機内にあったことになります。




Elevator Travelに余裕があって助かりました。




Pitts S-2B 胴体下部

Pitts S-2BやS-2Sの問題点は、胴体後部の点検や作業に用いる開口部が少ないことです。ご覧のように、胴体は羽布で完全に覆われ、内部の清掃や整備では、実際に入り込まないと行えません。小柄な私でも苦労します。




Pitts S-2C 胴体下部

S-2Cは胴体下部がパネルになっています。毎回の飛行前点検で開くことはありませんが、整備作業が簡易になりました。




Extra 300L 胴体上部

Extra 300LやEdge 540は胴体上部の覆い(Turtle Deck)が外れる構造になっています。




胴体後部の点検窓も大きく、飛行前点検ではとても助かります。




Challenger II(Pitts S-2S)

胴体後部右側に追加したInspection Panelが外れるようになっています。同型機ですし、これが最もよい案でしょうか。




Challenger III

ExtraなどのMono Planeを参考にした構造になっていて、胴体後方上部の覆いが外れるようになっています。



先輩方に聞くと、どれだけ気をつけていてもElevatorがJamすることはよくあることだそうです。「俺は一ヶ月の間に2回起きたことがあったよ。」とおっしゃる方もいました。2度と起こさないためにも、改善が必要です。

今年の冬の検査では、胴体後部の羽布の張替えを計画していますが、同時に操縦系統の部品交換と、Inspection Panelの追加もしたいと思います。お手伝いに来て頂ける方を引き続き募集中です。

2015年5月23日土曜日

MA州Chicopeeへ




Apple Valley空港の競技会の翌日は、Team Oracleの飛行機のFerry Flightです。ほぼ毎年CA州Chino空港のAir Showで始まり、次は東海岸へ向かうという流れのようです。今年からは新しい2人の飛行士が加わり、平均年齢が若返りました。いろいろと新しいこともありますが、私もできる限りお手伝いします。お互いがんばりましょう。




King Cityから南CAのChinoまでは、早朝にMonterey空港から出発して、Ontario空港まで旅客機で行くという手段もあります。去年はMonterey - San Francisco - Ontarioと飛行機を乗り継ぎました。たったこれだけの距離で、乗り継ぎも含めると5時間。今回は車でのんびりと向かいます。自動車は気楽です。




全般的に、今回のFerryでは進路上に前線があり苦労しました。もっとも、Oracle Challenger IIIは装備が限られているため、航法はSenecaとExtraに任せ、私は着いていくだけですが。




山火事です。雷でも落ちたのでしょうか?




「お前たち、TSが近付いているから、行くなら急いだ方がいいぞ。」

NM州Santa Fe国際空港。きれいなところですが、楽しむ間もなく先を急ぎます。




Oracle Challenger IIIは手放しでは飛行できないと思っていましたが、コツが判れば簡単です。若干左にRollする癖があるので、左足のひざで操縦桿を押さえて操作すればいいのです。これでご飯も食べられます。


余裕ができたので、仲間の写真でも撮ってみます。














難しくてきれいな写真は撮れませんでした。また次回に。




今夜は次の空港で一泊です。あともう少し。




KS州Coffeyville、Coffeyville Municipal Airport (KCFV)

元は栄えていた町のようですが、朽ち果てた格納庫や事務所、家、空港もダウンタウンもまるでゴーストタウンです。唖然として見ている私に、同僚は「カンザス州だからな」と。数十年後には日本の町もこうなってしまうのでしょうか。




おなじみミシシッピー川。半分以上を飛行しました。




日本のように、数Km毎に橋があるというわけでもないようです。対岸への行き来は大変そうです。




〈動画〉 Ferry Flight to Massachusetts

Day 3, over Lebanon, Missouri. About 1230 miles from Chino, CA, and about 970 miles to Chicopee, MA.




IL州Centralia、Centralia Municipal Airport (KENL)

中国からの訓練生が飛行訓練をしていました。いろいろなところで訓練をしているのですね。




PA州Towanda、Bradford County Airport

山間にある小さな空港です。ペンシルバニア州は起伏に富んで、まるで日本を思わせます。とてもきれいです。次の目的地のMA州Chicopeeまであと1 Leg!

今回も無事に飛行機を送り届けることができました。Team Oracleも人手不足ですが、飛行学校も教官が足りていませんので、あまり空ける事もできません。人員補填が急務です。

2015年5月17日日曜日

荒野に散る




都合よく仕事に合間ができ、4月30日(木)から5月2日(土)まで、Apple Valley空港で行われた曲技飛行競技会、「Duel in the Desert(荒野の決闘?)」に参加しました。

明日は日の出と共に離陸!・・・と意気込んでいましたが、昨夜遅くに飲んだワインが古かったようで、二日酔いになりました。朝、準備をしているとさらに気分が悪くなり、ついに寝込むほどに。曲技仲間のEさんには今回こそは出場すると伝えてあるのに、Borregoに続き、またキャンセルなんてことになったらとても格好悪いです。昼過ぎには起きられるようになり、出発することにしました。




楽しいキャンプのはずでしたが、用意したキャンピング マットが硬く、寝心地は最悪でした。明日は別のところにテントを張ります。




こんなにきれいな朝なのに、まだ二日酔いです。しばらく酒は見たくもありません。




今回のUnlimitedの出場者はEさんも含めて3人です。昨日は出発が遅かったため練習飛行はできませんでしたが、目標物も多少は覚えていますから、何とかなるでしょう。




午前中のKnownは散々な結果になりました。Zeroをいくつも取って、58%、3位です。午後のFreeで挽回です。




つむじ風!あの中に飛行機が巻き込まれたら、やはり大変なことになるのでしょうか。




長くLaser 230でUnlimitedを飛行していたHowardさんは自身のGreat Lakesに戻り、Intermediateを飛行します。私も曲技飛行競技を引退したら、こんな飛行機で空を楽しみたいと思います。

結局、FreeもUnknownも挽回することはできませんでした。私は総合で3位、EさんはUnlimited参加2回目で優勝を手にしました。素晴らしい快挙です。おめでとうございます。




すべてのCategoryの飛行を終え、これから4-minute Freestyleです。二日酔いからも全快です。今度こそはよい飛行をしたいものです。






それでは、行ってきます。











写真からはまあまあの飛行にも見えますが、自己採点は30点。Micro LoopはただのToque Rollに、Double Hammerhead TurnはSpinになり、満足とは程遠い出来でした。

ここApple Valley空港は標高3000ft、当時の気温の影響を加味すると、Density Altitudeは5000ftを超えます。最初のMultiple Snap Roll Downでの失高と、その結果からの速度不足は目を疑うほどでした。言い換えればよいデータが得られたということでもあり、今後は注意をしたいと思います。

2015年5月10日日曜日

CF撮影舞台裏




職場がお世話になっている、ある会社のコマーシャル フィルムの撮影を行いました。わずか30秒のCFということですが、撮影には2日間を費やし、最終日は深夜にまで及び、こんなにもたくさんの作業量があるとは思いもしませんでした。

これが30分番組だったり、2-3時間の映画作品だったりすると、どんなことになるのでしょうか。本当に大変な作業です。




CFにはFormation Flightの映像を使うそうです。飛行経路やFormationの形態などを入念に打ち合わせをします。




「いや、そこはこうした方が・・・」

打ち合わせは続きます。




私はT-6の右翼を飛行することになりました。位置を確保する目安を覚えます。




CF撮影舞台裏




こちらはPitts S-2S。帰国してからは毎日作業。1週間かけて、ようやくAnnual Inspectionを終えることができました。




しばらくOpen Cockpitで飛行していました。Canopy Railの可動域が狭く、また動きも滑らかでなく、いつも不満に思っていたところでした。今回、思い切って交換することにします。




Open Cockpit状態で200MPH+で飛行して大丈夫なのか心配でしたが、問題はありませんでした。利点は、緊急脱出もCanopyを開ける手間が省けること、そして軽量化。欠点は、空気抵抗が大きく、水平飛行で15MPHほど速度が低下することです。




複葉機にはOpen Cockpitが似合います。でも、飛行性能の確保や、冬の季節や10,000ft MSL以上の高度での飛行などを考えると、Canopyは必要でしょうか。仕方なく部品探しを継続します。




2015 Air Show Routine(の一部)

まだ迷いが見られます。練習続行。