2018年5月2日水曜日

愛機 Pitts Special S-2Sのご紹介



写真提供: John King氏



20169月、テキサス州で行われたUS National Aerobatic Championships(全米曲技飛行選手権)に、私は初めて出場しました。使用する機体はPitts Special S-2S。複葉機形式の、単座の曲技飛行機です。Pitts Specialの特徴的なカラーリングに、古典的な、丸みを帯びた翼端や尾翼部分。一見すると何の特徴もない、普通のPitts Specialです。




Pitts Special S-2S



1980年代の曲技飛行競技というと、アンリミテッドカテゴリー(5つある曲技飛行競技のカテゴリーで最上級)も含め、まだPitts Specialが多く占めていました。1990年代になるとドイツ製Extra やロシア製のSukhoiが数多く見られるようになり、それら単翼機型の曲技飛行機の特性に合わせ、競技飛行の難易度は年々高くなっていきます。その結果、Pitts Specialは次第に性能が不十分、過去の機種であると認識されるようになり、競技者たちは次々に単翼機に移行していきました。


(いえ、全てはエナジーマネージメントが問題で、少なくとも1990年代のシークエンスなら、性能が不十分だったわけではありませんが、ここはまた次の機会に。)




2016 Unlimited Categoryの参加機

Extra 330SC、MXS、Edge 540、Extra 300S、Extra 330LX、CAP 231、Panzl S-330、そしてPitts Special S-2S。こんな光景がもっと増えて欲しいと思います。



そのような背景があるためでしょう。「お前は本当にあの飛行機でアンリミテッドを飛行するのか?」と、現地で疑問の声が聞かれました。「多分お前は何か勘違いしているんだ。やめた方がいい。」という意見も。私がこれまでアンリミテッドで競技に参加行してきたと言っても信じる人はここにはいません。では私のすることは1つ。このいわゆる「古典機」のPitts Specialでアンリミテッドを飛行することです。




最終日、Free Unknown 2の出発前。想定できる全てのポジショニングの組み合わせを確認、対処方法を復習します。



2016年度US Nationalsの私の最終的な成績は65.44%13人中11位の成績でした。3回行った競技飛行の全てでHZ(ハードゼロの意、規定のフィギュアを誤って飛行した、または飛行しなかったとの判定)を受けたこと、そして細かな精度がまだ不十分なことが残念でした。しかし、全米各地からのベストパイロット達を相手に、「古典機」Pitts Specialで他の高性能単翼機たちに堂々と戦いを挑み、競技飛行を成立させたことで周囲の視線は一変。以降、疑問の声は消え、応援の声が聞かれるようになりました。




Pitts Special S-2Sの計器盤



具体的に、Pitts Specialと単翼機型の曲技飛行機で、特徴や飛行特性はどれほどの違いがあるのでしょうか。出力は同程度として、簡単に比較してみます。






Pitts Specialと単翼型曲技飛行機で、それぞれの項目で優劣があるため、一概にどちらが優れているとは言えません。言い換えれば、最新型の単翼型曲技飛行機が複葉機型よりも優れているとも言えず、私は「単翼機が曲技飛行機の答えではない」と考えます。




胴体のファブリック張り替え作業



上のような特徴を持つ複葉機型のPitts Specialですが、確かに市販のPitts Special S-2BS-2Cでは、現在のアンリミテッドカテゴリーの飛行は性能的に無理があります。年々高くなるアンリミテッドの難易度は、20年前と比べると30%から40%増。そのような「スーパーアンリミテッド」なシークエンスでも、数々の改良を施し、性能を大幅に向上させた私のPitts Special S-2Sなら十分に対応が可能で、つまり勝利できるかどうかは飛行士の性能次第です。




動画: 2016 US National Aerobatic Campionships、4-Minute Freestyle
撮影: Michael Lentz氏



搭載するLycoming社製AEIO-540-D4A5 EXPエンジンは、260HP2700RPMから330HP2800RPMに出力を向上。大推力を発生させるMT-Propeller社製のMTV-9-B-C、直径203㎝、ブレード幅25㎝の大径プロペラを組み合わせ、加速性能と上昇性能が大きく向上しました。エルロン面積は約50%大型化し、ロール率を360/秒まで向上し、アンリミテッドカテゴリーの複雑なフィギュアにも対応可能です。さらに、水平尾翼部分を改良し、45度を超える超高迎角での飛行を難なく行う性能を得ました。総合的な飛行性能は200%(?)向上したのではないでしょうか。




High α Challenge!

迎角45度以上の超高迎角の飛行も、この状態からのLoop(宙返り)も難なく可能です。



私が好み多用する「低速」、「超高迎角」の飛行はこの飛行機が最も得意とするところで、私とこの飛行機の相性は最高レベルだと思います。これまでの曲技飛行競技で培った精確かつダイナミックな飛行技術で、きっと皆さまを魅了することでしょう。Pitts Special S-2Sの異次元の飛行にどうぞご期待ください。

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