2021年5月31日月曜日

新たな出発

 

ASU(Aviation Specialties Unlimited)のメインハンガー
CA州サリナス Salinas Municipal Airport(KSNS)


皆さまご無沙汰しております。お元気でしょうか。

武漢ウィルスが世に出てから1年半になりますが、まだ世界は騒々しく。これもパンデミックの常のようで、落ち着くまでに時間がかかりそうということもまた想像した通りです。

ここCA州は新規感染者数も減り、レストラン内での飲食も許容されるようになり、少しずつ日常を取り戻しつつあります。ワクチンも若年層にも接種可能となっていますし、いずれこの騒動も歴史の記録の一つとなるのでしょう。あともう少しです。



Challenger IIのRC機


昨年は、職場の飛行訓練業務を停止し、Airshow関連のイベントもなくなり。REDFOX Airshowsの活動資金はもちろん、生活が危機的な状況に落ち込みました。

曲技飛行競技はほぼ全てがキャンセルになったこともあり、Pitts Special S-2Sの整備を終えた後、保険は地上のみのカバーとして冬眠状態としました。ずっと格納庫に置き去りの飛行機を見るのは悲しいものでした。


「ちょっと待って。収入がなくなったって、別に解雇された訳ではないのでしょう?」


例えば大手航空会社のパイロットや、飛行教員であっても大手の訓練施設に勤務しているのであれば、解雇がない限りは給料の支払いはあるのでしょう。しかし我々のような小規模の飛行学校は異なります。一般的に固定給という考えはなく、賃金は全てお客からいただく飛行訓練費からの完全な出来高制です。

そういう訳で、職場を閉鎖した昨年の半年間は、雑務からのわずかな収入のみでした。有給休暇も、ボーナスなどの待遇もない、なぜそのような環境にいるのか。それは好きだから。そしてそんな私たちを必要とする人々がいるから、です。

正直なところ、私も大型飛行機に乗ってみたいと思います。旅客機やクールなビジネスジェットにも乗ってみたい。DC-3の貨物便などあこがれます。でもおそらく、これからも、少なくともあと2-3年はここで仕事を続け、また引退まで曲技飛行関連の活動を続けるのでしょう。



Sean D. Tuckerの軌跡


2月。再開した飛行学校で過ごしていると、ボスから連絡がありました。彼はこれまで「Collaborators」というFormation Aerobatic Team(編隊を組んでの曲技飛行チーム)のLead(先導機)として飛行をしていましたが、今度はWing(Leadに追随して飛行する役割)の練習をしたい、そして私にそのLeadをやれという依頼でした。




〈動画〉Collaborators at EAA AirVenture 2007 (https://youtu.be/IfpTHTUsTnA


Formation Aerobaticsはもう3年ほどしていませんし、楽しそうです。そしてこれで貯蓄も回復できそう・・・ ありがとうございます。



ボスのオフィス。ご意見や苦情などは赤い電話でどうぞ。



ブリーフィングを終えて出発です。



行先は海岸近くのモスランディング。

ここは1995年にワトソンビル空港で事業用や計器飛行の訓練をしたときに飛んだ場所でした。あの頃は英語も不自由で、飛行もまだよくわからず。不安な中でこのような曇り空の中を飛んでいたことを思い出します。

あれから26年・・・ またこうして飛行していることがうれしいです。



Clover Loop, Ready, Go



<動画> Overhead APP KSNS RWY 26 (https://youtu.be/ylSwxFjy1vE



Leadの飛行はスムーズに、プリダクタブルに、コンシステントに。私もここまで集中してLeadとして飛行するのは初めてです。先ほどの動画でボスも言っている通り、Professionalとして常に精進していくことは大切です。素晴らしい機会をありがとうございます。



ところで、Formation Flight(編隊飛行)の定義とは何でしょうか。ThunderbirdsやBlue Angelsの飛行のように、翼と翼が接触間近な、極度に密接した状態で飛行することでしょうか。

いいえ。単機での飛行はVMCなら地平線を、IMCなら姿勢指示器などの飛行計器を対象に飛行します。編隊飛行とは、「LeadやWingなどを対象にして、複数の航空機が一つの航空機として飛行する」ことです。

昨年、東京都心上空を日本の航空自衛隊のデモンストレーションチーム「Blue Impulse」が見事な編隊飛行を披露し、人々にメッセージを送りました。それは、それぞれ見えないジョイントでつながれた6機の飛行機が、飛行も、管制上の扱いも、「一つの飛行機」として飛行したのでした。

今私が直面しているのは、これまで小型飛行機の飛行経験のみだった私が、各部品がフレキシブルなジョイントでつながれた、運動性能に劣る大型機の飛行を任された、というものです。そして、ボスはその「部品」になる練習をしている・・・。とてもよい勉強になります。



冬が過ぎ、青空が戻りました。今日も出発です。



お手伝いありがとうございます。再度ブリーフィングをして、準備ができたら再び出発です。今日も計3回の練習飛行の予定です。



新たにプロモーションビデオを撮影するとのことで、今日は補助に駆り出されました。ボスも来季のスポンサー獲得に精を出しています。いつも電話会議やメッセージのやり取りをしていて、私の3倍くらいの仕事をこなしています。



ボスがAirshowで使用したこのChallenger IIIは、2019年の活動を最後に引退しました。すでにTX州の博物館に運ばれ、そこで50年間展示されることになっています。



2018年5月、NY州までのフェリーフライト、一日の飛行を終えて。私はChallenger IIIのフェリーフライトを数年行いました。北米大陸横断を小型機で、それも何度も行った人はそういないのではないでしょうか。



LeadはPiper Seneca III、右翼はExtra 300L。一緒にあの雲をこえよう!

これだけ距離が離れていても、やはり指標となるのはLeadとWingの機体です。もちろん、近いほどStation Keeping(機体同士の位置関係の維持)は楽になり、また航空管制上は「全機が1 NM以内にあること」とありますが、Formation Flightとは、機体間の距離が問題なのではありません。そこにあるのは各機の役割と契約です。



Challenger III、いつか博物館に会いに行きます。元気で。



今朝は山の上には雪が見えます。3月になってもまだ時折低気圧が通り過ぎます。

こんな日は飛ばずに帰りたくなりますが、ボスは「このような天気だからこそ飛ぶんだ」と言います。確かにその通りです。VMCで飛行できる気象なら、練習空域に飛行できる状況があるなら。そして安全が維持できるなら行くべきでしょう。

雲を避けて、Boxの中のポジショニングを維持して、曲技飛行のシークエンスを行う。私は時折オーバーロードとなり、判断が怪しくなりました。こうして人は成長していくのだと、今更ながら思いました。



今日はファンの男の子と一緒にアクロバットの体験飛行だそうです。いつも我々の練習飛行を家から見ていると言っていました。嬉しそうです。



私が初めてアクロバット飛行機に乗った時のことを思い出します・・・。今の彼の嬉しさはそれ以上でしょうね。




近く、「Tutima Academy of Aviation Safety」のブランド名を変更し、職場の改編を行う予定です。Pitts Special S-2BとS-2Cの2機は売却され、いずれこのExtra 300Lも離れる予定です。寂しくなります。

次に職場にやってくる飛行機は、今話題の新鋭機、Game Composites社製のGB1 GameBird (GB1 GameBird | Game Composites)。計画では2機がここサリナスまたはキングシティーにやってくる予定です。

ところで、このGB1・・・ 個人Blogですから正直に書いてしまいますが、私には「全く関心のない飛行機」です。こんな飛行機で、曲技飛行の基礎をどう伝えるというのか。Advanced Aerobaticsができたところで何の意味もなく、ただ虚しさが残ります。

そうは言っても私も「大人」ですから、いずれこの飛行機を「褒め称える」ようになるのでしょう・・・。

もう一つ残念なことがありますが・・・、来年2022年以降の活動が楽しみです。