2022年9月17日土曜日

大地の広さを知る

米国帰国の朝です。今日もよい天気です。

飛行時間がどれだけ増えても、新しい飛行の前にはいつも初心者です。長期予報では、滞在中に雨の予報も見られましたが、概ねよい天気でした。帰り道の天気も安定している様子で助かります。



Ramada Lethbridge

広い土地なのに、なぜか9階建ての、1970年代風の建物でした。古いですが、リフォームされて、あたたかい朝食もあり、過ごしやすいところでした。



QL Aviationには2週間も駐機させてもらいました。お世話になりました。



レスブリッジ飛行場(CYQL)からグレーシャーパーク国際空港(KGPI)へのルート

米国への入国手続きはAOE(Airport of Entry)である、モンタナ州グレーシャーパーク国際空港(KGPI)で行います。国境通過は、US89号線とAB2号線にある、ピーガン/カーウェイのボーダークロッシング(赤い丸のところ)上空で行います。どこでもよい(と思っていた)のですが、フライトプランの国境通過点の指定に便利でした。飛行高度は10,500ft MSLとすると、このようなルートができました。



休日ということもあり、飛行訓練の飛行機や、遊覧飛行のヘリコプターが周辺を飛んでいます。Lethbride Radio(飛行場やトラフィックの情報を伝える施設。タワーではないため、離着陸のクリアランスは与えない。米国には存在しないが、日本のRadioに相当するようです)へ飛行経路を伝えると、トランスポンダのスクウォークコードを伝えてくれました。



先日訪れたウォータートンレイクス国立公園が右前方に見えます。

レスブリッジから約30Miles。今日のレスブリッジは航空機が多く、レディオは休みなく交信しています。レディオからはその後何の連絡もありませんが、レディオの管轄はこんなにも広いのでしょうか。もうアプローチコントロールやセンターに移行してもいいはずですが。次のセクターの周波数を聞くと・・・


レスブリッジ レディオ: 君の今の位置だと、もう私の管轄外だよ。


との返事でした。

ちょっとお待ちください。スクウォークコードを与えて、VFRとはいえ、国境通過を計画している航空機に対して、「あとは知らない」はおかしいでしょう。これもアウェイの洗礼でしょうか。エドモントン センターの周波数を受け取って、状況を伝えます。


エドモントン センター: おそらく、米国側にはこの周波数が使えると思うから、これを試してくれ。


おそらく、ですか・・・。 しかし受け取った周波数はどれも通じず、仕方なく自分で周波数を探すことになりました。国境沿いに高度を上げながら飛行し、十数分。同じくAOEであるカットバンク国際空港(KCTB)に近づくと、ソルトレイクシティー センターの周波数につながりました。これで国境を超えることができます。



周波数を探して東へ、西へ。改めて、地球が丸いということと、大地の広さを知りました。



グレーシャー国立公園

入国管理事務所への到着予定時間を大幅に過ぎています。急ぎます。





近年の温暖化傾向の中にあって、ここグレーシャー国立公園の氷河は多くが消え去りました。本当に、人間の活動の結果からの、温暖化ガスの影響なのか、学のない私にはわかりません。温暖化と寒冷化を繰り返してきたこの地球の定めの一つと思いますが、どうなのでしょうか。



〈動画〉 2022年8月7日 レスブリッジ ー カリスペル




モンタナ州カリスペル、グレーシャーパーク国際空港(KGPI)



グレーシャーパーク国際空港のUSCBP(U. S. Customs and Border Protection、アメリカ合衆国 税関国境警備局)の事務所は、Glacier Jet Centerの隣にあります。お世話になります。



入国を終えて、ほっと一息。コーヒーを飲んだら出発です。



それにしても、今回なぜ国境通過の際に無線交信で苦労したのでしょうか。次回、エドモントン センターへの周波数の変更を早めにするように心がけるとしても、国境付近でUS側の周波数にコンタクトできなかったのはなぜだったのでしょうか。

冷静に考えればわかることですが、それはこんなところでしょう。



グレーシャーパーク国際空港周辺のVFRセクショナルチャートです。オレンジ色の線は私が設定したルートです。ご覧のように、国立公園内の標高の高い山々を避けるため、南東から南西方向を除き、エアウェイ(水色の線)が設定されていません。つまりここを18,000ft MSL以下で、IFRやRadar Serviceを受けて飛行することは想定されていないのです。RCO(Remote Communications Outlets、遠隔地からATCやFSSなどへ無線交信を可能にする、山頂などに設置されたアンテナ)もないため、18,000ft MSL以上のClass A空域はともかく、低高度では無線交信ができませんでした。

そして、カットバンク国際空港に近づくに従い次第に無線が通じるようになったのは、そこにエアウェイ(V21)が設定されていて、やはりRCOなどがあったためと思われます。



私のルートはせめてこうあるべきでした。

お粗末でした。



国境通過で疲れたので、初日は2レグで終えます。



今夜はオレゴン州ペンドルトンで一泊します。



ペンドルトンは2008年8月以来です。ここで開催されたAWAC(Advanced World Aerobatic Chamiponships、現在のWAAC)に出場した、ウィスキーパパ競技曲技飛行チームの内海さんの支援に来ました。







来年2023年はWAAC(World Advanced Aerobatic Championships)がネバダ州ジーンで開催されます。Team Japanは参加者を募集中です。


15th FAI World Advanced Aerobatic Championships: https://www.waac2023.com/



食事は旅の楽しみのメインです。今夜はタイ料理店です。



ダウンタウンは以前よりも整備されて、ちょっとした博物館になっていました。見ごたえがありました。



移転された古い学校。

教育は国の要です。外国人よりも、まずは日本国民にこそ、豊かな教育と研究の機会を。





夢を抱いてアメリカ大陸を横断した開拓者たち。多くの人々がその途中で命を落としました。私の想像を超える、さぞ厳しい旅だったことでしょう。


翌日。

雨雲の峰を超えて、家路を急ぎます。



雨雲を避けて飛行。



もうすぐオレゴン州レイクビューのレイクキャウンティ飛行場(KLKV)です。でも、目標の湖が見えません・・・。 なるほど、夏で湖が干上がっているのですね。GPSがないと混乱して迷子になりそうです。



カリフォルニア州パレーサービル、パレーサービル飛行場(KPVF)

あと1レグでキングシティーです。



ただいま!

風の谷キングシティー。何もないところだけれど、恋しい、私の小さな町です。でもいつか、次の町が見つかるかもしれません。


さて、これからENGオイル交換です。前回のオイル交換から約18時間。たくさん飛んでくれて、ありがとう。

おやすみ、Pitts Special S-2S。

2022年8月27日土曜日

大草原の飛行学校をたずねて

米国への帰国を明後日にひかえ、今日はブルックスという町へ出かけてみます。



アルバータ州ブルックスは、ここレスブリッジから車で約2時間のところにある、人口約15,000人の小さな町です。私の住むキングシティーと同じくらいの規模です。



ブルックス飛行場(CYBP)の入口です。



飛行場が見えてきました。


ここブルックス飛行場では、村上千代子さんとおっしゃる日本人女性がかつて飛行学校を運営され、私の知人もお世話になったことがありました。飛行学校は1994年に閉校し、村上千代子さんも引退されています。2011年にはお元気だったそうですが、今はどこにいらっしゃるか、私にはわかりません。村上千代子さんにお会いできるわけではありませんが、彼女の人生を紹介したBlogを拝見して、大草原の飛行学校を見てみたいと思い、出かけました。



カナダの青い空を飛ぶ ~女性パイロット・村上千代子物語~ (田中えり子氏著): https://cmtruth.exblog.jp/



Blogにも登場するターミナルビルディング。



大草原の中の飛行場。



比較的新しい建物ですが、テナントもなく、管理人も、誰もいませんでした。



ここで村上千代子さんたちはパーティーを楽しんだのでしょう。









100LL Avgasの給油設備は完備です。



・・・おや?



ここは村上千代子さんの格納庫です。





飛ぶ飛行機もなく。はるか遠くの草原をトラクターが行き来するのみ。

ただ、風が静かに吹いていました。





農薬散布の会社がここの唯一のFBOのようです。









村上千代子さんは、1930年横浜生まれ。空を飛ぶことに憧れ、日本を離れて、フランスで単独飛行を達成しました。そしてカナダに渡り、念願のパイロットライセンシーになり、その後はプロパイロットとして活躍し、このブルックスの地でたくさんのパイロットを育てました。



「・・・ほとんど人の来なくなったターミナルビル、そして飛行機の音のしない空を見ると、寂しさで胸がいっぱいになる・・・」



風だけが時を刻む、大草原の中の飛行場。私は草原に腰を下ろして、空を流れる雲を見つめました。Blogの一文を思い出して、私も少し切なくなりましたが、夢に生き、プロとして数々の仕事をやり遂げた村上千代子さんは幸せだったことでしょう。





愛猫のチャーリー君と一緒に、「次はどこへ行こう?」と相談しているような、そんな村上千代子さんの心を感じました。


さて、明日は米国への帰国の準備です。私の旅路はまだ続きます。




Blog版 カナダの青い空を飛ぶ ~女性パイロット・村上千代子物語~ (田中えり子氏著): https://cmtruth.exblog.jp/

Amazon Kindle版 カナダの青い空を飛ぶ ~女性パイロット・村上千代子物語~: カナダの青い空を飛ぶ ~パイロット 村上千代子物語~  | 村上千代子 田中えり子 共著 | 歴史・地理 | Kindleストア | Amazon

(注: Kindleなどの設定が完了していないのか、私は閲覧することができませんでした。購入前にご確認ください。)