2013年1月30日水曜日

Pitts S-2S 更新継続中

今日は右側Rudder Pedalの作業を行います。
 
昔のオートバイ事故による右足短縮で、右へのSnap Rollなど、右側Rudderを大きく使う飛行には苦労をしていました。
左右のRudder Pedal位置を自由に調整できるExtraならこの作業は必要ありませんが、Pittsでは部品作成やRudder Cableの短縮などの工夫が必要です。
 

Rudder PedalとRudder Cable、そしてReturn Springを繋ぐ部品(上の黒い部品)はこんな形でした。
中心の穴にRudder PedalへのBoltが入り、左はReturn Spring、右はRudder Cableがそれぞれ入ります。
非対称ということは、この部品を前後逆に入れれば、穴のOffset分だけ、Rudder Pedalは手前に移動するのではないでしょうか。



期待通りです。
Rudderを中立にして、右側Rudder Pedalが手前に約1.5cm移動しました。
加えて、少し立ち気味だったBrake Pedalの角度も調整して、地上移動も楽になりました。

言うまでもありませんが、操縦系統の変更は、それが多少であっても、時間をかけて動作と組み上げを確認します。


上側Aileronのそれぞれの上部に、Spade(操舵力軽減の板)を取り付けました。
2006年の初期購入時に取り付けてあった部品ですが、操舵力が軽くなりすぎて、取り外した経緯があります。
このように外部に突出する部品は好きではありませんが、非力な私には助かります。

 
取り付けた上側AileronのSpade部分。
美しくありません・・・。
 
残念ながら期待したほどの操舵力の軽減はなく、またAileronの中立位置も判り辛くなりました。
美しさと性能は比例すると信じていますが、やはりと言った感があります。
これも今後の調整次第ですが、次の解決を考えてみましょう。

2013年1月29日火曜日

Pitts S-2S更新中

Pitts S-2Sの細かな改良を続けています。

この飛行機を製作したTim氏は身長が190cm+、共同所有者だったAndrewは180cm+。
彼らなら問題なかったのでしょうが、173cmの私の体格では、前方に押したときの操縦桿はわずかに遠く、Outside系の飛行に少し無理を感じていました。


操縦桿の稼動範囲にはまだ余裕があったので、Elevator ControlのRod Endを2回転分長くし、操縦桿が少し手前に来るように調整しました。
Witness Holeを見るとまだ長さを伸ばせるようでしたが、一箇所の延長はこのくらいにします。
もう少し長さが欲しいかな?と、さらにSeat後部のRod End部も2回転分延長させました。


Elevator ControlのStop Boltも調整し、Elevatorの作動角度が規定範囲内であることを確認して作業終了です。
わずかな調整でしたが、これで操縦桿が上の部分でおよそ4cm手前に移動し、飛行の自由度が上がりました。


次はRudder Pedalを手前に移動させる作業も行ってみます。

2013年1月25日金曜日

Stall and Spin Awareness (試験版)

今日の練習飛行で、Spinの様子を撮影してみました。
曲技飛行競技のIncipient Spinの領域だけではなく、さらに現実的な、Fully Developed Spinの領域にまで移行したSpinです。
説明も加えて、何か参考になるような映像をと思ったのですが、想像していたものとは異なり、騒々しいだけの映像になってしまいました。

どうにかして音声も加えてみたいのですが、使用しているVideo Cameraには音声用Jackはありません。
どうしたものでしょう。
不完全な動画ですが、参考までにどうぞ。


Upright Normal Spins


曲技飛行や誤操作でもない限り、通常StallはUpright(通常飛行状態、Positive G下の飛行)で起きますが、この状態でSpinに移行する十分なYawing(Skidding)があると、Uprightで、かつNormal Spinが起こります。
Upright Normal Spinでは、Positive Gが存在し、Pitching、Rolling、そしてYawingの、3軸の動きが同時に起きています。
これが基本となるSpinの状態と言えます。


Inverted Normal Spins


Inverted(背面飛行状態、Negative G下の飛行)でStallし、その状態で十分なYawingがあれば、それはInverted Normal Spinとなります。
Upright SpinかInverted Spinかに関わらず、Spinの回転方向の判断には機首方向を視認することに注意します。

映像の上部を見て頂くと判るかと思いますが、先のUprightでのSpinでは、回転軸は機首下に隠れて視認できませんでした。
しかし、Inverted Spinでは回転軸が頭上(地上)に見えますから、ここを視認することで回転方向を逆に判断してしまい、回復できずに事故になることは多いようです。

Spinの回転方向の判断するには、左右の主翼の高低を見るでもなく、Turn CoordinatorやInclinometer(Ball)を用いるのでもなく、また踏んでいるRudderの方向を確認するでもありません。
VMCである以上、UprightかInvertedかに関わらず、Engine Cowlを通して前方を見て、ここで回転方向を判断し、回転方向とは反対方向のRunnder(ここでは左Rudder)を使用して、Spinから回復させます。


そしてLivermore空港へ。

Wheel Landing


今日もありがとう、S-2S。
今後も、曲技飛行競技だけに留まらない、現実的な曲技飛行の話題も交えて行きたいと思います。

2013年1月23日水曜日

IAC曲技飛行競技会へのお誘い


今日は雨。
射撃に行ってからすでに数日、放っていたP229RとM700の手入れをします。
 

CA州の最初の地方曲技飛行競技会となる、Borrego Valley空港の競技会が4月に行われます。
日程は以下の通りです。

場所: CA州Borrego Springs、Borrego Valley空港(L08)
開催Category: Primary、Sportsman、Intermediate、Advanced、Unlimited
選手登録、練習飛行: 4月11日(木)
競技会1日目: 4月12日(金)
競技会2日目、表彰式: 4月13日(土)
予備日: 4月14日(日)

日本人競技者も何人かの方々が参加を計画しています。
どうぞご参加ください。

2013年1月22日火曜日

Canopy調整作業

昨日の練習飛行中、Canopy(風防)のLatchが外れ、Canopyが開きかけているのを見つけました。

大戦中の軍用機のような頑強なCanopyなら、速度制限以下で飛行中に開くことも可能ですが、曲技飛行機の華奢なCanopyでは破損が確実です。
300km/hを超える速度で突然Canopyが破損したら・・・
考えただけでも恐ろしくなります。


対策として、Canopy Railの切り欠き部分を深くして固定を確実に、さらにCanopyの遊びを少なくなるよう調整し、飛行中の振動や風圧でも動きがないように工夫してみました。
試しに、力を込めてCanopyを押し引きしても、遊びや動きは全くありませんでした。
もう大丈夫でしょう。

2013年1月21日月曜日

日曜の朝

今日の朝一番の飛行はPiper J-3 Cubです。

職場のAttitude Aviationに在籍している飛行機の中で、私が好きな飛行機というと、まずPitts S-2Cが上がりますが、次に好きな飛行機というとこのJ-3 Cubです。
1941年製、電気系統を持たず、セルフスターターもなく、始動は木製のプロペラを手回しして行います。
始動が困難な寒い冬の朝は苦労しますが。


Super DecathlonやCitabriaなどと異なり、重心位置の関係で、この飛行機の機長席は後席です。
というわけで、訓練生は後席に、私は前席に座ります。
翼面荷重が低く、ほんの少しの前進速度+風でもあおられてしまうため、飛行機を飛行機として扱う、地上での操縦の基本を学ぶにはよい飛行機です。


のんびりとした日曜の朝でした。

製造者: Piper
型式名: J-3 C-65 "Cub"
製造年: 1941年
発動機: Continental A-65、空冷、対向、4気筒
最大出力: 65HP/2,350RPM
巡航速度: 65KTAS

2013年1月16日水曜日

Pitts Special S-2S

今年はこの飛行機で新たな挑戦をします。
さて、どのような結果になることか。
どうぞお楽しみに。


 


2013年1月15日火曜日

再会

Japan Aerobatic Academy。
CA州Redlands空港に新たに設立された、曲技飛行学校です。
Unusual Attitudeな方々ならすでにご存知のことと思います。

今回、室屋氏を始め、数人の日本人曲技飛行士が集い、トレーニングキャンプを開くことになりました。
私も訓練教官役でお手伝いに向かいます。


LivermoreからRedlandsへは車でおよそ7時間。
到着して、南CAの景色を見ていると、私が初めてアメリカに来て、飛行訓練を行った時のことを思い出しました。

そう言えば、今日は12月17日。
私が初めてアメリカに来たのは1992年12月17日です。
滞在したRiversideはここからすぐ近くですが、ちょうど今から20年前の今日、私は初めてアメリカに来たのでした。

初めてのアメリカは私にとって初めての海外生活で、とにかくカルチャーショックの連続でした。
日本語が通じない人々、道を走る巨大なトラック、何車線もの高速道路、そして空がすぐそこにあるこのRiverside空港。

訓練の合間には整備場へ行って、飛行学校で訓練機の整備をしている整備士の方々を眺め、彼らのように、青空の下で小型飛行機の整備をしたいと、そして自分で整備をした飛行機で空を飛んでみたいと、無理だと知りながら憧れたものでした。


翌日、雨でトレーニングキャンプを中断となり、格納庫で作業をしていると、初老の男性がふと格納庫にやってきました。
「どうだ、俺の飛行機を見に来ないか?」
どうやら、隣の格納庫でご自分の飛行機の整備をしているそうで、お邪魔することになりました。

話がいろいろと進み、次第にこれまでの昔話になりました。

男性: 俺はこのRedlandsやRiverside近辺でもう30年くらい仕事をしていてね。
おや、Riversideですか。奇遇です。

男性: 昔は日本人の訓練生たちも多く教えたものだよ。
私: JALやANAの訓練所ですか?
男性: いや、昔Riversideにあった飛行学校で、そこには日本人がたくさん来ていてね。
え?それはもしや?

男性: Parfliteという飛行学校で、もうなくなってしまったけれど。
私: 本当ですか?私はParfliteで飛行を習ったんです。実は20年前の昨日、私は初めてアメリカに来ました。

その時の訓練機の話や、飛行学校のこと、在籍していた教官たち、そしてJackという人がChief Pilotだったと話すと・・・。

男性: 俺がそのJackだよ。

20年ぶりの再会でした。

当時、私は英語も全くできず、また彼がChief Pilotということもありましたが、サングラスをかけ、細身の体を革のフライトジャケットで身を包むJackさんは、格好よくも少し近寄りがたい存在でした。
一緒に飛行したことも、話をしたこともありませんでしたが、またこうしてお会いできて光栄です。


あの頃の教官や訓練生たちはどうしているのでしょうか。
AirlineやCorporateへ進んだり、また20年前のことですから、今では違った仕事をしている方もいると思います。
こうして空港に出入りしていると、この先も、どこかで突然の再会があるのでしょう。

あの人は今どこに。

2013年1月4日金曜日

Pitts S-2Cの飛行へ

年末は雨の多い日が続いていたLivermoreも、ここ最近は安定した天気になりました。
冬は雨季となる西海岸では雨が降り続くこともありますが、それもいつまでも続くものでもありません。

青空の戻った本日は、LorenさんとPitts S-2Cの飛行です。
これまで、Super Decathlonで曲技飛行を続けてきた彼は、現在DR-107という単座の曲技飛行機を製作中です。

初飛行では、S-2Cの性能を知っていただこうと、Aileron Roll、Loop、Half Cuban、UprightでのSpinなどを行います。
「何て軽い操縦桿なんだ。Roll RateもSuper Dとは桁違いだ。もうあの飛行機には戻れないよ。」とLorenさん。
その後、HammerheadやVertical Rollなどに続き、Super Dでは行ったことがなかったInverted Flat Spinも試していただいて、十分に楽しんだようでした。

「DR-107が完成したら自分で飛ぶことになる。それまで、この飛行機でしっかりと準備をしておきたいな。」

将来の愛機の飛行に向けて、また新たな世界に踏み出しました。

2013年1月1日火曜日

Aerobatic Channelへようこそ


初めまして、高木 雄一です。

飛行訓練や留学を経て、その後アメリカに移住し、早いもので今年で14年になります。
California州、New York州、いろいろな町を移り住み、今はCA州のLivermoreという町に住んで住んでいます。

Livermoreは、San FranciscoからはBARTという電車でおよそ1時間のところにあり、冬の一時期を除いては穏やかな青空の日が続くところです。
周囲には、緩やかな丘陵地帯にワイナリーが広がっています。

私の職業は曲技飛行を専門とする飛行教官、そして小型飛行機の航空整備士です。
ここでは、私の少しUnusual Attitudeな日々をご紹介していきます。
お時間があるときにどうぞお立ち寄りください。

Aerobatic Channelへようこそ。