2014年3月25日火曜日

Aileron Spade




曲技飛行機、特に曲技飛行競技に使われる飛行機の多くには、Aileron(補助翼)にSpadeと呼ばれる板が取り付けられています。Aileronの回転軸より前方に板を取り付けることで、飛行中の相対風を用いて、Aileronの操舵力を軽減させる働きがあります。




Panzl S-330



中には、Panzl S-330のように、Aileronだけでなく、Elevator(昇降舵)やRudder(方向舵)にも取り付けられている飛行機もありますが、これは少数派のようです。余計な部品を取り付けて抵抗を増やすよりも、Horn Balanceを大型化するなどして、操舵力を低減させた方が有効なのではと感じますが。

このような部品を機外に追加することは私の好みではありませんが、飛行中に最も頻繁に、大きな操舵角で用いるAileronが軽くなることは大いに歓迎です。むしろ、非力な私が曲技飛行を行うには、Spadeは必需品とも言える装備です。




これまで使用してきた主なSpadeたち。




2006年、Pitts S-2Sを共同所有していたときから使用していたSpadeです。縦6.35in(16.13cm)、横7.60in(19.20cm)の犬小屋型。Aileron Weightも兼ねて、厚さ0.125inchの2024-T3素材を用いました。




上下にSpadeが取り付けられたPitts S-2S。
今となっては懐かしいLivermore空港です。




上側Aileronに取り付けられたSpade。



当然ながら、下側AileronだけにSpadeを取り付けるとAileronが重い。しかし、上下全てのAileronに取り付けると、軽くはなるものの、操舵感覚が奇妙でした。仕方なく、下側のみに取り付けて飛行していましたが、やはり操縦桿が重いと不満が出ます。




昨年9月のDelanoの競技会前に作成したSpade。



縦7.50in(19.05cm)、横7.25in(18.42cm)、0.063inch厚の2024。一般的な金属製のSpadeを参考にして、取付部をDoublerとして補強しました。Spadeを大型化して、交換直後はAileronが軽くなったと喜んでいましたが、次第にまだ重いと不満を感じるようになりました。




先月2月に作成したSpade。縦7.75in(19.69cm)、横8.75in(22.23cm)、厚さ0.050inch。基本形はPitts S-2Bのものを参考にしました。薄い素材を使ったため、剛性を保つために端を45度に曲げています。



さらに大型化したことで、軽さでは文句のないものになりました。しかし、Centering(舵の中立位置)が判り辛く、またRollが継続する傾向が出始めました。




SpadeのDoubler(補強)部分。飛行中に相当な応力がかかり、変形を繰り返しているようでした。明らかに剛性不足です。Rollが継続しようとしていたのもこのためでしょう。



以上のようにSpadeを作成してきましたが、曲げ加工やRivetingは面倒な作業です。では、厚めの素材を用いたら工程を省くことができるのではないでしょうか。手元に0.090inch厚の2024があったため、次はこれを使ってみることにしました。




今月作成の新型Spade。



新しいSpadeの大きさは、縦8.00in(20.32cm)、横7.50in(19.05cm)、厚さ0.090inch。今回は縦方向に長くして、Aspect Ratio(縦横比)を小さくし、Spadeが失速(?)しにくいようにしてみました。Armが長くなることで、小さいながらも効果が得られるという利点もあるかもしれません。




新型Spade下部。Doublerがなく簡素です。



十分な厚さのため、曲げ加工をしなくても剛性は十分です。当初はこの厚い素材による重さの
影響を心配していましたが、実はこの素材は正解だったようです。広い面積のために操舵力は軽く、同時に重心位置が前方に移動したためかCenteringが判りやすくなりました。相反する要求を満たすことができたことは意外です。

現在の飛行中の操舵感覚は、どことなくMarchetti SF-260やT-6のような、Servo TabをAileronに用いた軍用機のような雰囲気があります。曲技飛行機らしからぬ乗り易さにはつい笑みがこぼれます。正直なところ、あと、もうほんの少しだけ軽かったら・・・という欲も まだありますが、これ以上のバランスは難しいでしょう。現状にとても満足です。

2014年3月22日土曜日

夏時間です




3月に入って夏時間になり、日没が1時間遅くなりました。ついこの間までは夕方5時を過ぎると暗くなっていたのに、夏時間になると7時過ぎまで明るいまま。外の明るさに気を許していると、つい帰りが遅くなってしまいます。要注意です。

3月は春も本番、この暖かさは嬉しいのですが、毎年1つだけ気が重くなることがあります。それは毎年4月15日を期限とした、Tax Return(納税申告)です。専門の方に依頼することもできますが、私はここ数年、Web上で数字を入力して進めて行く「TurboTax」を使っています。面倒ではありますが、英語で専門用語を交えながら会話することはさらに面倒ですし、こうして自分の都合に合わせて進められることはいいものです。それでも、ここ10日間は寝不足になりながら、憂鬱な日々を過ごしました。




4 Minute Freestyle 練習飛行中

角度の調整を忘れ、画面が真横になってしまいました。画面を横にしてご覧ください。まだ乱雑に科目をこなしているだけで、表現力が乏しいです。練習に加え、研究が必要です。



そんなTax Returnはまた来年までお預け。次は4月のBorrego空港の競技会に向けて、練習飛行を再開です。あと2週間でどこまで上達できるでしょうか。可能なら、4 Minute Freestyle(4分間の時間制限内で行う自由演技)も参加してみたいものです。

2014年3月13日木曜日

Master Warning Lightを新設


Cessna C-208Bの計器盤。
計器盤の左上部にAnnunciator Panelがあります。



飛行中に異常を知らせてくれるWarning Light(警告灯)やCaution Light(注意灯?)。計器が示す異常を早期に視覚で知らせてくれる便利な装備ですが、曲技飛行中の忙しいときはそれすら注意が行き届かなくなります。点灯に気付かずに飛行を続けてしまうことがないよう、いずれ大型のWarning Lightを新設しようと計画していました。

新設作業はそのうちに・・・と考えていましたが、予定を急遽変更して、本日作業を行いました。それは、昨日このようなことがあったからです。




〈動画〉Warning Light ON!



この飛行機では、EGT(排気温度)やCHT(シリンダー温度)などの状況などを表示するEngine Monitor、Oil Pressure(油圧)やOil Temp(油温)を表示するOil Gauge、そして燃料流量を元に残量や使用量などを表示するFuel Totalizer、以上の3つの計器の信号を1つのWarning Lightで表示するようにしています。複数の警告を1つでまとめて表示するため、Master Warning Light(主警告灯)と呼ばれます。

確かに、Engine MonitorにはEGTが限界を超えたとの表示がありましたが、数値は通常通りで異常は見られません。それとも、私が気付くまでに時間がかかり過ぎていたのでしょうか。もし高温状態で10-20秒も飛行していたら大問題です。しかし、飛行中の映像を見ると、点灯から気付くまでおよそ3秒。数字までは読めませんが、縦の棒状グラフの表示も通常値です。

誤報だったようで一安心ですが、高出力時のEGT超過はEngineを一瞬に破壊する危険性がありますから、映像で確認するまで穏やかではありませんでした。




高度計の上にMaster Warning Lightを新設。



元からの赤のWarning Lightは、Fuel Totalizerの配線のみを接続して、「LOW FUEL」の表示をするようにしました。新設したMaster Warning Lightは、Engine MonitorとOil Gaugeからの2つの配線のみです。




KISS(Keep it simple, Stupid!)です。
シンプルにしようよ、頭悪いんだからさ!



というわけで、今後、曲技飛行中に見るべき計器は、速度計、高度計、そしてMaster Warning Lightの3つのみになりました。何という簡素な計器盤。私自身がこのMaster Warning Lightを信頼できれば、飛行中の注意を他の部分に向けられますから、曲技飛行の能力の向上になるのではないでしょうか。少しだけ期待したいと思います。

2014年3月6日木曜日

AT-6D 単独飛行




11月にAT-6Dの同乗訓練を受けた後、Solo(単独飛行)も行わずにそのままになっていたCheckout訓練。「もう残っているのはお前だけなんだ。写真撮影もあるのだから、きちんと終えておけよ。」by Sean。判りました。Pitts S-2Sの整備の口実はもう使えません。忙しくなる前にCheckoutを終えておきます。




まだ時折混乱しますが、Tugの運転も少しずつ慣れてきました。
飛行よりも難しいのは、このTugで飛行機を牽引することです。



T-6各種は左右のMain Landing Gearの間隔が狭いため、着陸が難しいなどと言わているそうですが、そうでしょうか?飛行機の操縦の基礎ができていて、大柄な尾輪式飛行機の挙動に慣れている方なら、すぐに乗りこなせる飛行機です。考えてみれば、大戦中は多くの飛行士を効率よく育成しなくてはならなかった訳ですから、乗りやすい飛行機を作ることは条件の一つだったのでしょう。




同僚のKenと完熟訓練を行い,、もう大丈夫です。
天気も良好。では、単独飛行へ出発。




計器盤の様子。
古風な計器の配置のため、情報を即座に得るには慣れが必要です。





WACO YMFやPittsなどの複葉機に比べ、視界がとてもよく、操縦しやすい飛行機です。




横方向、後方の視界も良好。




やはり軍用機。曲技飛行も機敏に行えます。

この飛行機にはInverted Fuel / Oil System(燃料と滑油系統の背面飛行設備)は装備されていませんので、曲技飛行はPositive G Maneuversのみです。




AT-6D First Solo

手順の復習ができるよう、機内の様子を撮影してみました。次回は外の景色を撮影してみます。




課題を一つ終えて、ほっと一息。



午後はPitts S-2SでUnlimitedの訓練へ。こちらはさらに課題が山積みです。UnlimitedのSequence中の無理のあるFigureを捨てて飛行するか、それとも今年はAdvancedに戻って飛行するか。大事な飛行機に無理をさせてまで飛行することもありません。しばらく解決の道を探ってみます。

2014年3月4日火曜日

競技会シーズンになりました


アメリカ西部地区 曲技飛行競技会の予定表


まだ雨季が続いているCA州ですが、ここ最近は春を感じるようになってきました。CA州の曲技飛行競技会は、来月4月10日(木)から12日(土)に、Borrego Valley空港(L08)で行われる競技会から幕を開けます。どういうわけか、IACのHP(https://www.iac.org/)に掲載されていない競技会が多くありますが、上の予定表のように例年通りに行われる予定です。競技参加予定の方は早めに機体の確保をどうぞ。

JAS Redlands校は、今年もBorregoの競技会に参加予定です。Redlands校の白鳥 洋平教官と、鐘尾 みや子さんは昨年に続き参加します。私、高木 雄一もお手伝いと競技参加に向かいます。まだ今年度のUnlimited Knownは課題が多くありますが、あと一ヶ月の間に完成させたいと思います。






ちょっとしたお知らせです。「Redfox Airshows」と名付けて活動をするために、HPを開設しました。Addressはhttp://redfoxairshows.com/です。日本語はhttp://redfoxairshows.com/index-jp.htmlからどうぞ。

おや?Redfox?Team Red Fox II(https://sites.google.com/site/redfoxsecond/home)ではないのでしょうか?元々は、日本のTeam Red Fox IIと、曲技飛行に関する意見交換をしながら、姉妹関係のように行えたらと思っていましたが、私が曲技飛行滑空機「Fox」の飛行を克服できず、アドバイザーという立場を諦めたことで、この計画は頓挫しました。しかし、なかなか覚えてもらえない私の本名をAir Showに用いるよりも、英語系の名前にすることが得策だと、少し名前を変えて使わせていただくことになりました。

ご覧のように、今年のAir Showは10月のLivermore空港の1日限りの小さなAir Showだけ。それも、Livermore空港の駐機場が現在工事中のため、工事の進行によっては中止もあるとのことですので、今年の活動は競技会の参加だけになるかもしれません。来年は活動が少しでも活発になるようにと、12月のICASの展覧会ではブースを出して、宣伝を行いたいと思います。

Redfox Airshowsのロゴの原案をしていただいた松井様。ロゴや写真の加工をしていただいた堀川様。HPを作成していただいた青山様。「Redfox」の名称を使うことを快諾していただいた鐘尾様。皆様のお力で素晴らしいHPが完成しました。本当にありがとうございます。