健康で平和な一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます
令和四年 元旦
January 1st, 2022
・・・と書きましたが、実は昨年春の作業です。昨年「ADS-B Out」をPitts Special S-2Sに搭載しました。
ADS-Bとは「Automatic Dependent Surveillance-Broadcast」の略です。日本語では「放送型自動従属監視」という意味になるそうですが、訳してもよくわかりません。要はGPSの信号を基に自機の位置を精確に特定し、得られた位置情報を自動的に地上局に送り、航空管制の効率化に役立てる新たなシステムです。
ADS-Bのシステムの概要 FAAのウェブサイトより
FAA.gov / Automatic Dependent Surveillance-Broadcast (ADS-B) https://www.faa.gov/nextgen/programs/adsb/
AOPA / What you need to know about ADS-B https://www.aopa.org/go-fly/aircraft-and-ownership/ads-b
このように、航空機側から位置情報を発信するシステムがADS-B Outで、米国では2020年1月からADS-B Outの装備がClass A、B、Cなど多くの空域で義務化されました。もちろん、装備しなくても飛行自体は可能ですが、その場合は該当する空域を避ける、または到着前に事前連絡が必要となっています。これも時代の流れでしょう。素直に装備することにします。
Mode SトランスポンダとADS-B Outの双方を兼ねる、Trig Avionics社製の製品を購入しました。トランスポンダとADS-B Outの2つの装備が同時に解決です。
これまで管制に用いられていたのは、地上のSecondary Surveillance Radar(二次レーダ)と機上のTransponder(トランスポンダ)の組み合わせでした。今後もそれらは変わらず利用されますが、次第にGPSベースの完成方式に置き換わっていくのでしょうか。
その内容は・・・
左上: TA70 GPSアンテナ
左下: TT22 コントローラ
右上: TT22 本体
右下: TN72 GPSポジションソース
以上です。
Trig Avionics https://trig-avionics.com/
小柄なGPSアンテナであっても、可能な限り機外への露出は避けたい・・・ いろいろと考えた末、GPSアンテナは上側主翼内に隠すように設置できました。主翼の素材は木とファブリック、そして塗料ですから、GPSの信号は問題なく受信します。 Good!
TN72とTT22の本体を収めるトレイを作成し、胴体内部に固定します。
ハーネスの作成。見慣れない端子を用いる形式でした。いい勉強になりました。
コントローラの画面上でADS-B Outの設定をします。
私にとって聞いたこともない、未知の言葉ばかりで悩みましたが、説明書とインターネットのお陰で何とかできました。機材に約$3,000。配線や工具に約$400。Experimental機ということもあり、比較的安上がりにできました。やればできる!
完成!
ADS-B Outを装備した航空機の飛行はいくつかのウェブサイト上で確認できます。
FlightAware https://flightaware.com/
FlightRadar24 https://www.flightradar24.com/
FlightAware N8061J Flight Tracking and History https://flightaware.com/live/flight/N8061J
2021年8月23日 N8061Jの飛行
FlightAwareの無料での情報公開は10日間までのようです。
プライバシーを考慮して飛行情報の公開を拒否する方もいますが、私は万が一の遭難などを考え、公開に賛成します。人里離れた山岳地帯を飛行しても、荒野を飛行していても、誰かに飛行を見守られているというのは心強いものです。どうぞこれからもPitts Special S-2S N8061Jの飛行を見守ってください。
アリゾナ州ウィンスロー、荒野に残る隕石のクレーター。
ところで、ADS-B Outの「Out」という言葉に疑問を感じた方もいるかもしれません。そう、ADS-B Outに加えて、ADS-B Inというシステムもあります。
こちらの装備は義務ではありませんが、他の航空機が発信したADS-B Outに含まれるTIS-B(Traffic Information Service-Broadcast)、つまり航空機の位置情報を受信して、機内の画面上で他機の様子を表示するというものです。管制側だけでなく、ADS-Bは航空機間でも情報を共有することができ、安全性の向上に大きく貢献します。
さらに、ADS-B InのFIS-B(Flight Information Service-Broadcast)を介して、飛行中に随時気象や空域などの情報を得ることができます。ADS-Bはとても便利です。
USB電源で動作するADS-B Inを自作、というほどではありませんが、試してみることにしました。・・・Pi 3B?・・・ドングル? 揃えた各部品が一体何をするものなのか、私にはさっぱりわかりませんが。
作り方はこちらから。
Stratux ADS-B - DIY/Low-cost Portable ADS-B http://stratux.me/
完成したADS-B Inを試運転・・・。あ、ライトが点灯しました!
飛行する航空機からの信号を受信して、得られた情報をWifiで送信します。PCや携帯電話でWifiに接続すると、互換性のあるソフトウェアを用いて上空を飛行する航空機の様子がわかります。
携帯電話のGPS画面
Eva006便がKing Cityの南西約15Mileを飛行中だそうです。どうぞよい飛行を!
9月のユタ州、早い冬が訪れる。
21世紀になっても小型航空機での飛行は冒険です。そのリスクが消えることはありませんが、ADS-Bによって、冒険が次第に日常に変わりつつあるようにも思います。「冒険」という言葉に危険な魅力を感じつつ、しかし安全や安心は大いに歓迎です。ありがとう。
ワイオミング州ロックスプリングス
標高6,765ft、2,062m。雲は低く、代替案も考慮して出発。
昨年は武漢ウィルスでキャンセルになった、CA州サンカルロス空港のHiller Aviation Museum主催のイベント、「The Biggest Little Airshow」。今年の6月に行われる予定だと連絡が入ったのは年末だったでしょうか。無事に行えれば、パンデミック後のSF Bay Areaでの初めてのエアショーであり、私にとっては1年半ぶりのエアショーになります。
The Biggest Little Airshow https://www.hiller.org/event/biggest-little-airshow/?fbclid=IwAR1036A91X92Q5sDh4R8MmiUenUuCuEhlVHnSQim0JRKsqTeEl5Zi1CaPXE
注: 予定通りに終了しました。応援ありがとうございました。
今回はそれまでの整備作業の内容を載せることにします。
Item 1 キャノピー取り付け作業
以前にも話題にしましたが、2019年8月、練習飛行中にキャノピーを壊しました。原因は機内の消火器の固定が不十分だったため。私の不注意です。Negative Gの飛行で消火器が外れ、キャノピーに穴を開けてしまいました。
幸いにもPitts Specialはキャノピー前部にウィンドシールドが備えられ、単座機ではこのように後方にスライドする方式が一般的です。複座機は右側にヒンジを備えて開く方式いなっています。元々はオープンコクピットとして飛行するように設計されていた機種ですから、この数日後のエアショーと、それ以降はキャノピーを外しオープンコクピットとして飛行しました。
オープンコクピットは開放感がありますが、8,000ft近辺の巡航高度の気温は海抜高度よりも20℃ほど低く、真夏でも寒いです。また機内に吹き込む風のためにチャートを広げることも困難で、水を飲むのも気を使います。速度が比較的遅い複葉機とはいっても、6気筒ENG装備のこの飛行機の巡航速度は約160KTS、約300㎞/h。やはりキャノピーは必要です。
インターネットで検索すると、Aero Canopyという会社がPitts S-1/S-2用のキャノピーを制作販売していることを見つけました。
AeroCanopy https://www.aerocanopy.com (後述の理由からか、現在のLink先の内容は以前と異なるようです。)
1つで$626.00、予備にもう一つ購入し、FL州からの送料を含めると約$1,600でした。$1,600・・・。いや、深く考えないようにします。
私の初めてのキャノピー作業。不安が募りますが、準備はできました。勇気を出してやってみましょう。まずは破損した古いキャノピーを載せて、大きさや形を確認します。
・・・おや?どういうことでしょう。外側にも内側にも、前後を逆にしても、新旧のキャノピーが全く一致しません。
Aero Canopy社に連絡すると、「そのキャノピーはトリミングしないといけないんだぞ。お前分かっているのか?」との返答でした。いや、トリミング以前に形が全く違うのですが。
知人に相談したところ、これらはFree Blownと呼ばれる製法で作られた低品質なもので、型を用いて作られた原型のキャノピーとは別物だそうです。数日間Aero Canopy社と交渉し、返品は受け入れるが、しかし返品時の送料(約$300)は私が負担するということになりました。そして返金も現物が再販売できることが条件とのことです。やれやれ。
しかし何があったのか、その後Aero Canopy社はこれらのキャノピーに製品としての価値はないと判断し、返品の必要はないと伝えてきました。後日返金も無事に行われ安心しました。
皆さまももしキャノピーの購入の際はご注意ください。
続いて、知人にAirplane Plastics社を紹介していただき、2週間後、見覚えのある形のキャノピーが届きました。ありがとうございました。
Airplane Plastics https://www.airplaneplastics.com/
まず3㎝くらいの余裕を持たせ、大きめにトリミング。その後サンダーを用いて、数㎜刻みで削っていきます。気長に、慎重に・・・。
削って、機体に載せて、確認して。また削って・・・。
形が整ったところで、続いて取り付け穴を開けていきます。
始めてから2か月後。ついにできた・・・。嬉しくて、言葉がありません。
これでもう、飛行中の風や寒さに悩まされなくなるのでしょう。
<動画> Pitts Special S-2S Canopy動作確認