曲技飛行機、特に曲技飛行競技に使われる飛行機の多くには、Aileron(補助翼)にSpadeと呼ばれる板が取り付けられています。Aileronの回転軸より前方に板を取り付けることで、飛行中の相対風を用いて、Aileronの操舵力を軽減させる働きがあります。
Panzl S-330
中には、Panzl S-330のように、Aileronだけでなく、Elevator(昇降舵)やRudder(方向舵)にも取り付けられている飛行機もありますが、これは少数派のようです。余計な部品を取り付けて抵抗を増やすよりも、Horn Balanceを大型化するなどして、操舵力を低減させた方が有効なのではと感じますが。
このような部品を機外に追加することは私の好みではありませんが、飛行中に最も頻繁に、大きな操舵角で用いるAileronが軽くなることは大いに歓迎です。むしろ、非力な私が曲技飛行を行うには、Spadeは必需品とも言える装備です。
これまで使用してきた主なSpadeたち。
2006年、Pitts S-2Sを共同所有していたときから使用していたSpadeです。縦6.35in(16.13cm)、横7.60in(19.20cm)の犬小屋型。Aileron Weightも兼ねて、厚さ0.125inchの2024-T3素材を用いました。
上下にSpadeが取り付けられたPitts S-2S。
今となっては懐かしいLivermore空港です。
上側Aileronに取り付けられたSpade。
当然ながら、下側AileronだけにSpadeを取り付けるとAileronが重い。しかし、上下全てのAileronに取り付けると、軽くはなるものの、操舵感覚が奇妙でした。仕方なく、下側のみに取り付けて飛行していましたが、やはり操縦桿が重いと不満が出ます。
昨年9月のDelanoの競技会前に作成したSpade。
縦7.50in(19.05cm)、横7.25in(18.42cm)、0.063inch厚の2024。一般的な金属製のSpadeを参考にして、取付部をDoublerとして補強しました。Spadeを大型化して、交換直後はAileronが軽くなったと喜んでいましたが、次第にまだ重いと不満を感じるようになりました。
先月2月に作成したSpade。縦7.75in(19.69cm)、横8.75in(22.23cm)、厚さ0.050inch。基本形はPitts S-2Bのものを参考にしました。薄い素材を使ったため、剛性を保つために端を45度に曲げています。
さらに大型化したことで、軽さでは文句のないものになりました。しかし、Centering(舵の中立位置)が判り辛く、またRollが継続する傾向が出始めました。
SpadeのDoubler(補強)部分。飛行中に相当な応力がかかり、変形を繰り返しているようでした。明らかに剛性不足です。Rollが継続しようとしていたのもこのためでしょう。
以上のようにSpadeを作成してきましたが、曲げ加工やRivetingは面倒な作業です。では、厚めの素材を用いたら工程を省くことができるのではないでしょうか。手元に0.090inch厚の2024があったため、次はこれを使ってみることにしました。
今月作成の新型Spade。
新しいSpadeの大きさは、縦8.00in(20.32cm)、横7.50in(19.05cm)、厚さ0.090inch。今回は縦方向に長くして、Aspect Ratio(縦横比)を小さくし、Spadeが失速(?)しにくいようにしてみました。Armが長くなることで、小さいながらも効果が得られるという利点もあるかもしれません。
新型Spade下部。Doublerがなく簡素です。
十分な厚さのため、曲げ加工をしなくても剛性は十分です。当初はこの厚い素材による重さの
影響を心配していましたが、実はこの素材は正解だったようです。広い面積のために操舵力は軽く、同時に重心位置が前方に移動したためかCenteringが判りやすくなりました。相反する要求を満たすことができたことは意外です。
現在の飛行中の操舵感覚は、どことなくMarchetti SF-260やT-6のような、Servo TabをAileronに用いた軍用機のような雰囲気があります。曲技飛行機らしからぬ乗り易さにはつい笑みがこぼれます。正直なところ、あと、もうほんの少しだけ軽かったら・・・という欲も まだありますが、これ以上のバランスは難しいでしょう。現状にとても満足です。