Photo: PM Photography
2019年 REDFOX
Airshowsは、 3月のサリナス空港の California
International Airshow Salinasとトラビス空軍基地の Thunder
Over the Bay、 8月の OR州マドラスの Airshow
of the Cascades、 10月のリバモア空港の Livermore
Airport Open House and Air Show、そしてアップルバレー空港での Apple
Valley Airshowに参加しました。
飛び足りない思いもありますが、こうして 2019年の REDFOX
Airshowsの活動を無事に終えられたことはとても嬉しく思います。皆さま、応援ありがとうございました。
Apple Valley Airshowから帰還して、愛機Pitts Special S-2Sは冬季整備に入りました。いくつか手直しや新たな無線機器( ADS-B)の取り付けを行い、来年 2月には整備を終え練習飛行の予定です。
実は、毎年始めの数回の飛行 は、飛行感覚を取り戻すことやマニューバーの手順を思い出すことに時間を費やしていて、非常に非効率・・・。
今回は REDFOX
Airshowsがパフォーマンスフライトで行うマニューバーのいくつかを、私自身の備忘録として記述します。まず第 1回目はダブルハンマーヘッドターン( Double
Hammerhead Turn)です。
VIDEO
<動画> ダブルハンマーヘッドターン 地上から
2016年全米曲技飛行選手権 4-min Freestyle
動画提供: Mr. Michael Lents
ダブルハンマーヘッドターンは略してダブルハンマーとも呼ばれます。通常のハンマーヘッドは、バーティカルアップラインの頂点で 180度のピボットターンを行うマニューバーですが、ダブルハンマーではさらに 360度のピボットターンを継続して行い、合計 1回転半のピボットターンを行うものです。
まずは、ノーマルな、 180度のピボットターンのみのハンマーヘッドターンの解説から行います。
VIDEO
<動画> ハンマーヘッドターン
2018年9月 能登空港上空 試験飛行
ハンマーヘッドターン( Hammerhead Turn)
1. 十分な速度( Pitts
S-2では 140MPH以上を推奨)を確保した後、バーティカルアップラインに移行し、姿勢を保持する。 右回転(操縦席から前を見て)に運転するエンジン搭載の機体では、一般的にハンマーヘッドターンは左に行うため、垂直上昇中は左翼を見て姿勢維持することを推奨する。
2. 速度が減少するに従い、プロペラトルクの反作用から機体は左にロールを始め、これを右エルロンで対処する。同時に、プロペラスリップストリームの影響から左にヨーが起こり、これは右ラダーで対処する。
3. ピボットターンに適切なスピード( Pitts
S-2B/Cでは約 2 - 5MPH。 Extra
300Lでは少し速度を保ち、 10
– 20KTS。)で、左ラダーを一杯に入力してピボットターンを開始する。
トルクの影響を右エルロンを必要量( Pitts
S-2B/Cではほぼ一杯。 Extra
300Lでは半分から 2/3程度。)使用して打ち消す。エレベータを前方に入力し、プロペラのジャイロ効果(操縦席から見てピッチアップの方向へ変位する)を打ち消す。
4. バーティカルダウンラインの 20
– 30度手前で右ラダーを入力し、ピボットターンを停止。速度を回復させてレベルフライトに移行する。
ダブルハンマーヘッドターン( Double Hammerhead Turn)
引き続きダブルハンマーヘッドターンの解説です。機体は Pitts S-2系 (B、C、Sモデル)に限定します。ダブルハンマーの手順は 3までは上記と同じで、 4以降は以下の通りです。
VIDEO
<動画> ダブルハンマーヘッドターン
2019年10月 Livermore Airport Open House and Air Show
1 – 3 上記、ハンマーヘッドターンの手順を参照。
4. 引き続き左ラダーを維持する。入力している右エルロンはプロペラトルクの反作用に対処するためほぼ右に一杯。真下を向いた姿勢でエレベータを前に押し、 10
– 20度程度のネガティブダウンにする。
この時点でネガティブダウンとすることでピボットターンの回転面が傾く。これ以降のピボットターンでエレベータを前に入力する余地ができ、ジャイロ効果からの左へのヨーイングを期待できる。
5. さらにエレベータを前に押し、ヘディングが 20度ほど変化する。ジャイロ効果により、左へのヨーイングが増加する。
右エルロンの入力を続け、 20度程度右にロールした状態とし、これ以降のプロペラトルクに対処させる。不足すると次の 6で機体が水平になり、通称「ハンマースピン」となる。
6. 左ラダーと右エルロンの入力を続ける。エレベータを前に入力し、ヘディングはさらに変化(計およそ 30度)する。
以降は降下しながらのピボットターンのため、相対風が後ろから機体に作用し、右エルロンとプロペラトルクによりわずかに左にロールする。前述のように、 5での右ロールが十分であれば、プロペラトルクによる左ロールはほぼ相殺する。
7. 引き続き左ラダー、右エルロン、そしてエレベータを前に保持する。
垂直付近の理想的な姿勢はピッチが完全に垂直であることだが、背面方向に機体が倒れるリスクがある。それを防ぐために、機首が若干ポジティブ側( 20
- 45度程度)に倒れた姿勢を推奨する。
後方からの相対風のため、エレベータを前に押すと機首が垂直側へ、中立側または後ろへ引くと水平方向に倒れる(フラット気味になる)など、逆方向方に作用する。
機体は引き続き左にロールを続けるが、この変位は 5と 6のヘディング変化と相殺され、ダウンラインではほぼ同じヘディングに戻る。
8. 視点を左翼や左後方に移し、ダウンラインの方向を視認する。左ラダーの入力でピボットターンを継続し、右エルロンとエレベータは若干緩み、適切なダウンラインを求めて調整する。
9. ダウンラインで右ラダーを入力し、ピボットターンを停止。降下しながらのマニューバーであるため、ピボットターンの停止は容易。速度を回復させてレベルフライトに移行する。
以上です。これまでの経験から考えると、上に記述したような、一般的な手法が再現性が高いようです。他にも下のようにいくつかの手法を試しましたが、残念ながらあまり効果的ではありませんでした。
ダブルハンマーヘッドターンの完成度の向上を目指して
1. ピボットターン中の左エルロン
上記の 7の機体が垂直姿勢になる手前で、左にエルロンを入力して、後からの相対風を用いてプロペラトルクに対処できないかと、何度も試しました。理論的には正しいと思われるものの、再現性が低く、またエルロンが左右に激しく振られ、姿勢も安定させることができませんでした。
2. ピボットターン開始後のパワー調整
ダブルハンマーの練習を始めたころは、どうしても理想通りの飛行ができず、左ラダーの入力と共にパワーを一時的に絞り、垂直降下の姿勢からまたフルパワーに・・・などと試したことがありました。しかし、最大出力 260HPエンジンの Pitts
S-2B/Cや、大柄で重い Extra
300Lでは推力がピボットターンを妨げることはなく、無意味な行為のようです。
ただ、自身の Pitts
S-2Sのように軽量高出力な機体では、ピボットターンで機体が左方向に大きく飛んでしまい、ピボットターンの妨げになるようです。最近はピボットターン開始と共に 25
in-Hg程度に絞って行っています。
以上 2つは相当数の練習を重ねましたが、満足する成果は得られませんでした。しかし理論的には間違っておらず、あと少しの工夫で解決があるのかもしれません。練習の合間にまた試してみたいものです。
3. 視覚的効果を用いる
ダブルハンマーはフラットになりがちで、「ハンマースピン」となることも珍しくありません。しかし、飛行機の主翼下面を観客に向けることで垂直姿勢を維持しているように見せることができます。エアショーパフォーマーにもこの手法を用いる方はいますが、私の理想は主翼上面や操縦席を観客に向けることです。
4. ピボットターンのエントリーを早めのタイミング(速い速度)で行う
ダブルハンマーには勢いが必要だと信じ、速度が速い状態で行う方もいますが、これは誤りです。速度が速いと180度のピボットターンが終わった時点ですでに降下速度が速く、その後の360度のピボットターンも難しくします。ノーマルのハンマーヘッドもダブルハンマーも、エントリーはどちらも同じであるべきです。
主翼下面を観客側に向けると、多少フラットになったダブルハンマーも地上からは 垂直姿勢に見えます。
ダブルハンマーを行い易い機体とは:
1. 小型
2. 軽量
3. 重量物が重心位置付近に集中している(マスが集中している)
4. プロペラによるジャイロ効果が大きい
5. 垂直尾翼とラダーの大きさが必要最小限
以上5 つがある考えます。つまりこれらの特徴を備える Pitts
Special各種は、ダブルハンマーに最適な機体の一つです。対して、 Extra各種はダブルハンマーを不得意とする機種で、ここは設計思想から致し方ないことでしょう。
そんな Extra
300Lですが、何とかしてダブルハンマーヘッドターンを行うことはできないものでしょうか。以下の工夫が効果的です。
1. 軽量化
ウィングタンクを空に、アクロタンク内の燃料を必要最小限にする。同乗者を乗せず、単独で飛行する。
2. プロペラ回転数
プロペラガバナーを調整し最大回転数を確保、または最大回転数+ 100rpmなど、許容範囲内で調整する。回転数を上げることでジャイロ効果も増加する。
ピボットターン開始直前にエレベータを前方にわずかに押し、
20度程度のポジティブアップとし、その後のエレベーター入力の余地を与える。
などがあります。まだ満足できる域には達していませんが、工夫次第でそれなりの形にはできるようです。
曲技飛行競技と異なり、エアショーパフォーマンスフライトには判定基準などありませんから、仮にマニューバーが多少崩れたとしても、パフォーマーの「メッセージ」が観客に希望通りに届けばマニューバーは成功したと言えます。しかし、アナウンサーがどう取り繕っても、観客にどうメッセージを送っても、原型をとどめないほどにマニューバーが崩れてしまっては、それはもう別のマニューバーです。
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<動画> ダブルハンマーヘッドターン 失敗例
残念ながらこの動画に見られるマニューバーはダブルハンマーではなく、「ハンマーヘッドの後、プロペラトルクを利用したロール」ではないでしょうか。ハンマーヘッドまたはダブルハンマーヘッドにあるべきヨーイングが全く見られません。
他にも、ピボットターンの代わりにスナップロールらしきものを行って「ダブルハンマーである」と主張する方も見られます。ダブルハンマーとは、「ハンマーヘッド+ 360 度の限りなくピボットターンに近いもの」であるべきと考えます。
最後に、私の理想とするダブルハンマーを・・・
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Andrews AFB Air Show 2011 - Sean D. Tucker
ボスのダブルハンマー(2分50秒と6分20秒)です。彼の飛行はいつも私の理想です。
次回はまた別のマニューバーを記述します。どうぞお楽しみに。