2014年8月21日木曜日

着陸を少し考える




ボスからの連絡で、またChallenger IIの練習飛行をすることになりました。MN(Minnesota)州からCA州まで、現在のShow PlaneであるChallenger IIIのFerry Flightを私が行うそうです。




操縦席は通常のPittsよりもゆったりと作られていて、飛行機の全てに手足が届いているかのように錯覚してしまう、とても乗りやすい飛行機です。ただし、この文章には「上空では」という言葉を最初に加えなくてはいけませんが。




単座機らしく、操縦席からの前方視界は良好です。




上反角のない、下側主翼。Inverted(背面)時でも、通常のPitts SpecialのようなRoll方向の不安定な挙動はありません。しかし、短所は翼端のGround Clearanceの低さです。Wheel Landing(接線着陸)を行えば、横風時のWing Lowの許容量は解決しますが、速い進入速度(120 MPH)から滑走距離が長くなることが欠点。日本の大利根滑空場(滑走路長 600 m?)のようなところでは難しそうです。




一度離陸してしまえば、まるで水を得た魚のように、嬉しそうに飛行してくれます。




同じ滑走路で、ただ同じように離着陸を繰り返しても得るものはありません。周辺の空港にも足を伸ばして、Downwind EntryやStraight-in、Overhead Approach、Downwindからの180 degree Approach、いろいろな進入方法を試してみました。




先日お邪魔したワイナリー(写真左側)が見えました。




仕事が落ち着いたら、ぜひサイクリングに来てみたいです。




King Cityの南側から、Runway 29のLeft Downwindへ。




ボス宛ての、「飛行機は無事です」のメッセージ。

およそ15回着陸して、その内3回はGo aroundをしました。この飛行機は主脚がタイタニウム製で、スプリング作用だけが極端に強く、少々の衝撃でも反発します。例えるなら、Damperが抜けて、バネだけになった古い自動車が、山道で跳ね回るようなようなものでしょうか。




午後はNew Coalinga空港へ行ってみます。




誰もいなくなった格納庫で飛行機を掃除。昨日までの賑やかさが夢のようです。



飛行機の着陸には、まず第一に、接地時の降下率が限りなく小さいことが求められます。「接地時の速度が速いから何度も跳ねるのだ」と言われますが、私はそうは思いません。速度が速くても、適切な姿勢で、緩やかに接地させれば、飛行機は跳ねることなく着陸します。ゴムボールも地面に叩き付ければ大きく跳ねますが、緩やかに、ゆっくりと地面に置けば跳ねることがないことと同じです。

しかし、非常にPitch操作が敏感なこの飛行機で、飛行に用いるTotal Energyを失うまでの数秒間に、迷うことなくcm単位で高度を操作することは、今の私の技術では極めて困難・・・。

ではどうするか。仮に、通常よりも速い140 MPHの速度でApproachすれば、数秒という時間的余裕が倍になります。しかし、速度が速いため、Approach中に受ける気流の乱れの影響も大きくなり(速度が倍になれば、影響は4倍と言われます)、また同じ出力でのApproachなら降下率は速度に比例して大きくなり、欠点も目立ちます。

逆に速度を100 MPHと遅くすれば、遅いために操縦舵の効果は減り、AOA(迎角)は大きく、接地姿勢はThree Point Landingに近くなり、Landing GearのSpringyな性格が現れ、機体の挙動が激しくなります。

すると、Final Approachの速度は110 MPHから120 MPHの間で、接地時の降下率を管理することとなりますが、Total Energyを維持しながらも時間的な余裕を保つには、Powerが解決策の一つとして考えられます。

もちろん、これが最終的な目標ではありませんし、いつか必ず遭遇するであろうPower Failureでも無事に着陸させるには、Power Off Landingは習得すべき技術です。しかし、残念ながら今の私の操縦技術では解決はこれしか見当たらず、研究は今後も続けることと約束して、まずはこのミッションを遂行することにします。






Oracle Challenger III
2014年8月21日 MN州 Flying Cloud空港にて



というわけで、小手先の技術を用いて、本日Challenger IIIの初飛行を終えました。いい飛行ができますように。

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