2014年10月29日水曜日

Aerobatic Channel Q&A 1

Q. 曲技飛行競技のシークエンスでのスピンについて。「スピン中にアウトサイド エルロン(スピンの回転方向とは反対側のエルロンを指す)に入れてフラット気味にすると見栄えがいい」という助言を受けたが、あなたの意見は?






A. 初めに結論を言いますと、不要なテクニックの一つです。「ストール + ヨー」の通常操作を行ってオートローテーションを表現できないのなら、そもそもの操作が間違っている、または競技に適していない機種であると私は考えます。

「ストール + ヨー = スピン」となることはすでにご存知の通りで、ルールブックのスピンのクライテリアに則り、スピンという現象が確実に表現できていれば、その部分に関しては減点が行われることはありません。そして、これは曲技飛行競技のルールで必ず守られるべきことですが、10点からの減点方法で採点され、仮に途中でどんなに美しい飛行があっても、加点が行われることはないということです。

スピン中にエルロンを中立に保っていればノーマル スピンとなり、そこに運動の差異はあれ、ロール、ピッチ、ヨーの3つの軸周りの運動が同時に起きるのは、どの機種でも同じです(Weight and Balanceを誤った航空機や、Fly by wireで飛行することを前提とした戦闘機などは除く)。一般的に、Extra、Pitts、Super Decathlonなどの曲技飛行機でスピン中にアウトサイド エルロンを用いると、主翼角度が水平気味になる「フラット」と呼ばれる状態になります。では、これが判定に影響を与えることはあるのでしょうか。

競技において、「スピンが行われたかどうか」の判定は、エントリーは(1)ストール、(2)ヨー、(3)ロールが同時に行われ、「5度 = 1点」のルールが適用されます。その次のスピンの継続については、オートローテーションが継続しているかどうかですから、単純にYESかNOかのどちらかです。例えば、他の機種や競技者に比べてピッチが下がり気味、またはフラット気味だからという判定が影響を与えることはありません。続いてのリカバリーは「5度 = 1点」で判定が行われることはご存知の通りです。

これはおそらく少数派ではないかと思いますが、私が競技を始めたときは、教官からインサイド エルロンを使うことを推奨されました。「インサイド エルロンでスピンをアクセレレート(加速)させるときれいに見えるから」という教官の意見ですが、スピンの開始から停止まで、わずか1-2秒足らずの間のどこにアクセレレートさせる余裕があるのかと、また停止に苦労するのではないかと疑問に思い、結局今でも使ってはいない技術です。

インサイド エルロンもアウトサイド エルロンも、全く反対の技術が「きれいに見える」、「得点を上げる(?)」と競技者に信じられ、伝えられていますが、実は判定には何ら影響を与えていない、無意味な努力なのです。私も競技者ですから、勝利を目指す競技者の願いや希望は理解できますが。






同様に、世界選手権でフランス チームがCAP 231などで使っていた、スピン リカバリーでパワーを使う手法も、私には疑問に思えます。もし、そうまでしないとスピンのリカバリーで苦労する機種なら、私が競技で使うことはないでしょう。でも本当にそうなのかと、一度試してみたいという興味はありますが。

ただ、早期にパワーを加えることで「トータル エナジーのロスを少なく出来る」という利点はありますから、そこは納得ができる部分です。しかし次は、左右のスピンで挙動の差異をどう対処するかが新たに問題になることでしょう。そこまで研究する見返りがあるのか判りませんが、気になるところです。



〈注意〉 スピン中にエルロンを入れるとどのような動作が見られるか、これは機種によって多少の差異がある部分で、例えばGrob G-115CやT-6ではアウトサイド エルロンによって機首が下がり、スピンが加速する現象が見られます。上記のようにスピン中にエルロンを使うことを好む方もいらっしゃることでしょうが、低高度でのスピンの前に、高高度での十分な練習飛行をお勧めします。

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