“an intentional maneuver involving an abrupt change in an aircraft’s attitude, an abnormal attitude, or abnormal acceleration, not necessary for normal flight.”
(訳: 航空機の急激な姿勢変化、異常姿勢、急激な加速を含む、通常飛行では用いられない意図的な飛行)
航空機とは移動を目的に用いられる乗り物とすると、通常飛行とは、例えば旅客機に乗客として搭乗したときに経験する飛行です。離陸、上昇、巡航、下降、進入、着陸。それらで行われることのない飛行が曲技飛行と考えてよいと思います。
曲技飛行と認識されることはありませんが、この定義から言えば、失速、急旋回なども加わるのかもしれません。Lazy Eight(レイジーエイト: 姿勢を常に変化させながら行う、連続したS字旋回)やChandelle(シャンデル: 高度を最大限に獲得しながらの180度上昇旋回)などは曲技飛行の一種としていいでしょうし、身に付けておくと役に立つManeuver(機動)です。
航空機の本来の移動という目的から逸れて、それでも人々が曲技飛行を行う目的は何でしょうか。
1. 趣味として曲技飛行を楽しみたい。
2. 操縦技術を磨きたい。
3. 航空力学の研究に。
4. 操縦の苦手意識や、恐怖感を克服したい。
5. 軍や自衛隊の操縦士採用試験の準備のため。
6. 曲技飛行競技会に参加したい。
7. 将来はエアショーパイロットとして活躍したい。
様々な目的や目標がありますが、私の場合は5番を除いて全て当てはまりました。訓練当時の私は、基礎の操縦技量も不十分で、何とか飛行機を上手に操縦できるようになりたいと願ったものです。今では操縦技術に関して自信がつきましたが、これはただ単に飛行時間を増やすだけでなく、曲技飛行を行い、研究と実験を繰り返してきたからだと思います。
具体的に、どのような飛行を曲技飛行と呼ぶのでしょうか。通常飛行と曲技飛行に関わらず、または飛行機やヘリコプター、滑空機など航空機のカテゴリーの区別なく、飛行はLongitudinal Axis(縦軸)、Lateral Axis(横軸)、Vertical Axis(垂直軸)の3軸回りの動きを駆使して行われます。この運動を通常飛行に求められない領域にまで広げ、飛行士の意志と意図によって行われる飛行が曲技飛行です。
この「飛行士の意志と意図によって・・・」という部分が重要で、曲技飛行と呼ばれるためには、飛行が飛行士の意志と意図によって行われ、さらにそれらが複製可能で、ある程度の精度を維持したした飛行が繰り返し行える必要があります。「なぜ起きたのかよく判らないが、偶然興味深い飛行になった」という偶然の産物は曲技飛行とは認識されませんし、時としてそれは事故、または危険行為ですらあります。
先のFAR Part 91.303に規定してある飛行は、一般的に以下のようなManeuverが認識されています。
Roll(ロール): 機体の縦軸回りの運動を指します。曲技飛行でのRollは、通常飛行で旋回や進路修正などで行われるRollの範囲を超えたManeuverを呼びます。日本語では横転などとも呼ばれます。
Loop(ループ): 機体の横軸回りの運動であるPitch(ピッチ)変化を継続し、縦方向に機首方向を変えることで行われます。日本語では宙返りと呼ばれます。通常、旋回とは横方向への機首方向の変化を指しますが、縦方向へ旋回させるManeuverがLoopです。
Spin(スピン): 機体をStall(失速)させ、Yaw(垂直軸回りの運動)を加えることにより発生する、Autorotation(自転)です。木の葉が回転しながら落ちていく様子はAutorotationであり、Spin中の機体はそれ自身が回転する力を持って行われます。日本語では錐揉みと呼ばれます。
Snap Roll (スナップロール): 先のSpinに似たManeuverです。Spinが自由落下を伴って行われるAutorotationであるのに対し、Snap Rollは運動エネルギーを保ち、飛行経路をほぼ維持した状態で行われます。基本となる水平飛行で行われるSnap Rollは、Horizontal Spin(水平飛行で行われるSpin)とも表現されます。ヨーロッパではFlick Roll(フリックロール)と呼ばれます。Aileron(補助翼)を主に用いて行われるRollに比較して回転が早いため、Aileronを主に用いるRollを「Slow Roll」、Snap Rollを「Fast Roll」などと呼ぶこともあります。
以上の4つのManeuverはAerobatic Flightの4つの基礎です。全てのAerobatic Maneuversはこれらの組み合わせから成り立ちます。例えば、Immelmann Turnは、Loopを半分行い、頂上でRollを半分行ったManeuverですし、Barrel RollはRollにLoopのPitchingの要素を加えたManeuverです。これらを組み合わせ、新たなManeuverを作ることも、飛行士の想像力次第です。
2 件のコメント:
どうも、どうも うえだです、その2。
行政との戦いで、本業も飛行機も出来ずにイライラ・モード。 常に混雑している幹線道路を狭める計画を打ち出して何を考えてるのだか、意味不明の話ですが、行政は市民に知らせないので、凄く大変。 成田空港の住民が反発した理由が少し分ったり。 まあ、レベルは違いますけど。
もう、新しい職場に引っ越されたのでしょうか? 忙しくされていますか? シラバスが充実してそうなので、学ぶ事が多いと思います。 Californiaに行く事があれば、顔を出しに行きますね。
Acrobaticの定義は迷いますよね。 パラシュートの使用がバンク60度、ピッチ30度以上なので、それがAcrobaticの定義と思うけど、よーーーーく読むと「不必要な姿勢の変化」としか出ていません。ご指摘の様にStudent Pilotの訓練に使うStallでもAcrobaticの定義に入る。生徒の下手な操縦はNormalだけど、Commercial Pilotの綺麗なスパイラルやシャンデルはAcrobatic。極論、生徒がPatttern内で速度に気を取られすぎて高度が500 Feet AGLになってもAcrobaticでは無いって事です。 以前から不思議に思ってました。
うえださん
私も勘違いをしますが、Parachuteの装備が必要な飛行と、曲技飛行は必ずしも一致しないようです。
一般的な曲技飛行は、BankもPitchも、その角度以上の変化があるため、Parachuteを装備することが義務付けられます。
もし、PitchもBankもLavelに近い状態で、Flat Spinを行うのなら、Parachuteがなくても合法的に飛行になるのでしょうね。
おかしな話ですが。
コメントを投稿