曲技飛行機からのBailout(緊急脱出)の最も大きな原因は操縦系統の故障と言われます。エルロン、エレベーター、ラダー、3つの主操縦系統の中では、機体尾部に異物が入り込み、エレベーターの作動角度が制限されること、そしてラダーを操作するラダー ケーブルが疲労で破断してしまうこと、この2つが一般的です。
飛行前点検では、ライトを使って胴体内部を注意深く検査していますが、それでも100%完璧に行えることはないのでしょう。今回は練習飛行中に起きたエレベーターの故障について、記録も兼ねてこのBlogに書いてみます。
垂直姿勢から背面飛行に移行する予定でしたが、Elevatorを引き切れないことに気付きました。Rudderを蹴ってHammerhead turnでRecovery。さあ次はどうする?
訓練生にも伝えることですが、「もしElevatorを引けなければ押せ。それもできなければBailoutだ。」は心に留めておかなくてはならないことの一つです。時間的な猶予は高度が低くなればなるほど少なくなり、迷いは事故につながります。
幸運なことに、Elevator Travelに余裕があり、UprightでRecoveryすることも、+1G下で飛行を継続することもできました。どうやら着陸速度の80 - 100 MPHでも問題なく飛行できるようです。大切な機体を手放すことなく戻れそうです。
〈動画〉 Today's Mishap - Elevator Jammed
無事に着陸できました。後を見ると、ああ、やはり。AN4 Boltに取り付ける大きさの、AN365 Nutが引っかかっていました。
このNutは見覚えがあります。冬に行ったCondition Inspectionで行方不明になった部品です。無くなったものと思っていましたが、その後も3ヶ月の間、20時間近くの曲技飛行中、ずっと機内にあったことになります。
Elevator Travelに余裕があって助かりました。
Pitts S-2B 胴体下部
Pitts S-2BやS-2Sの問題点は、胴体後部の点検や作業に用いる開口部が少ないことです。ご覧のように、胴体は羽布で完全に覆われ、内部の清掃や整備では、実際に入り込まないと行えません。小柄な私でも苦労します。
Pitts S-2C 胴体下部
S-2Cは胴体下部がパネルになっています。毎回の飛行前点検で開くことはありませんが、整備作業が簡易になりました。
Extra 300L 胴体上部
Extra 300LやEdge 540は胴体上部の覆い(Turtle Deck)が外れる構造になっています。
胴体後部の点検窓も大きく、飛行前点検ではとても助かります。
Challenger II(Pitts S-2S)
胴体後部右側に追加したInspection Panelが外れるようになっています。同型機ですし、これが最もよい案でしょうか。
Challenger III
ExtraなどのMono Planeを参考にした構造になっていて、胴体後方上部の覆いが外れるようになっています。
先輩方に聞くと、どれだけ気をつけていてもElevatorがJamすることはよくあることだそうです。「俺は一ヶ月の間に2回起きたことがあったよ。」とおっしゃる方もいました。2度と起こさないためにも、改善が必要です。
今年の冬の検査では、胴体後部の羽布の張替えを計画していますが、同時に操縦系統の部品交換と、Inspection Panelの追加もしたいと思います。お手伝いに来て頂ける方を引き続き募集中です。
2 件のコメント:
この投稿は勉強になりました。
エアロバティックの機体に限らず、
通常の飛行をする機体でも注意しないといけないですね。
特に貨物室のパネルが欠けたままのレンタル機など多いですが、
小物が挟まれば操作系のジャミングを起こす原因になると肝に銘じねば。
愛機の貨物室も整理するようにします。C2
C2さんお久しぶりです。
曲技飛行を行わない飛行機の場合、落下した部品や異物は胴体下部に落ちたままになることが多く、機体尾部にまで到達することはまずありませんが、問題を起こすことは十分に考えられます。
回復操作の選択手順、飛行継続の可否の判断方法、着陸の可能性の判断方法など、私もよい勉強ができました。
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