2021年8月30日月曜日

2021 春季整備作業 3

 ・・・と書きましたが、実は昨年春の作業です。昨年「ADS-B Out」をPitts Special S-2Sに搭載しました。





ADS-Bとは「Automatic Dependent Surveillance-Broadcast」の略です。日本語では「放送型自動従属監視」という意味になるそうですが、訳してもよくわかりません。要はGPSの信号を基に自機の位置を精確に特定し、得られた位置情報を自動的に地上局に送り、航空管制の効率化に役立てる新たなシステムです。




ADS-Bのシステムの概要  FAAのウェブサイトより


FAA.gov / Automatic Dependent Surveillance-Broadcast (ADS-B) https://www.faa.gov/nextgen/programs/adsb/

AOPA / What you need to know about ADS-B   https://www.aopa.org/go-fly/aircraft-and-ownership/ads-b


このように、航空機側から位置情報を発信するシステムがADS-B Outで、米国では2020年1月からADS-B Outの装備がClass A、B、Cなど多くの空域で義務化されました。もちろん、装備しなくても飛行自体は可能ですが、その場合は該当する空域を避ける、または到着前に事前連絡が必要となっています。これも時代の流れでしょう。素直に装備することにします。




Mode SトランスポンダとADS-B Outの双方を兼ねる、Trig Avionics社製の製品を購入しました。トランスポンダとADS-B Outの2つの装備が同時に解決です。


これまで管制に用いられていたのは、地上のSecondary Surveillance Radar(二次レーダ)と機上のTransponder(トランスポンダ)の組み合わせでした。今後もそれらは変わらず利用されますが、次第にGPSベースの完成方式に置き換わっていくのでしょうか。




その内容は・・・

左上: TA70 GPSアンテナ

左下: TT22 コントローラ

右上: TT22 本体

右下: TN72 GPSポジションソース

 以上です。

Trig Avionics https://trig-avionics.com/




小柄なGPSアンテナであっても、可能な限り機外への露出は避けたい・・・ いろいろと考えた末、GPSアンテナは上側主翼内に隠すように設置できました。主翼の素材は木とファブリック、そして塗料ですから、GPSの信号は問題なく受信します。 Good!




TN72とTT22の本体を収めるトレイを作成し、胴体内部に固定します。




ハーネスの作成。見慣れない端子を用いる形式でした。いい勉強になりました。




コントローラの画面上でADS-B Outの設定をします。

私にとって聞いたこともない、未知の言葉ばかりで悩みましたが、説明書とインターネットのお陰で何とかできました。機材に約$3,000。配線や工具に約$400。Experimental機ということもあり、比較的安上がりにできました。やればできる!



完成!




その後、Mode Sトランスポンダの検査に合格し、試験飛行でADS-B Out側も情報を精確に発信していることも確認できました。ADS-B Outの義務化は10年以上前から話題になっており、悩みの種の一つでした。無事に装備することができて、本当によかったです。



ADS-B Outを装備した航空機の飛行はいくつかのウェブサイト上で確認できます。

FlightAware https://flightaware.com/

FlightRadar24 https://www.flightradar24.com/

FlightAware N8061J Flight Tracking and History https://flightaware.com/live/flight/N8061J




2021年8月23日 N8061Jの飛行

FlightAwareの無料での情報公開は10日間までのようです。



プライバシーを考慮して飛行情報の公開を拒否する方もいますが、私は万が一の遭難などを考え、公開に賛成します。人里離れた山岳地帯を飛行しても、荒野を飛行していても、誰かに飛行を見守られているというのは心強いものです。どうぞこれからもPitts Special S-2S N8061Jの飛行を見守ってください。




アリゾナ州ウィンスロー、荒野に残る隕石のクレーター。



ところで、ADS-B Outの「Out」という言葉に疑問を感じた方もいるかもしれません。そう、ADS-B Outに加えて、ADS-B Inというシステムもあります。


こちらの装備は義務ではありませんが、他の航空機が発信したADS-B Outに含まれるTIS-B(Traffic Information Service-Broadcast)、つまり航空機の位置情報を受信して、機内の画面上で他機の様子を表示するというものです。管制側だけでなく、ADS-Bは航空機間でも情報を共有することができ、安全性の向上に大きく貢献します。


さらに、ADS-B InのFIS-B(Flight Information Service-Broadcast)を介して、飛行中に随時気象や空域などの情報を得ることができます。ADS-Bはとても便利です。




USB電源で動作するADS-B Inを自作、というほどではありませんが、試してみることにしました。・・・Pi 3B?・・・ドングル? 揃えた各部品が一体何をするものなのか、私にはさっぱりわかりませんが。


作り方はこちらから。

Stratux ADS-B - DIY/Low-cost Portable ADS-B http://stratux.me/




完成したADS-B Inを試運転・・・。あ、ライトが点灯しました!

飛行する航空機からの信号を受信して、得られた情報をWifiで送信します。PCや携帯電話でWifiに接続すると、互換性のあるソフトウェアを用いて上空を飛行する航空機の様子がわかります。




携帯電話のGPS画面

Eva006便がKing Cityの南西約15Mileを飛行中だそうです。どうぞよい飛行を!



9月のユタ州、早い冬が訪れる。


21世紀になっても小型航空機での飛行は冒険です。そのリスクが消えることはありませんが、ADS-Bによって、冒険が次第に日常に変わりつつあるようにも思います。「冒険」という言葉に危険な魅力を感じつつ、しかし安全や安心は大いに歓迎です。ありがとう。



ワイオミング州ロックスプリングス

標高6,765ft、2,062m。雲は低く、代替案も考慮して出発。

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