2015年4月9日木曜日

Aerobatic Channel Q&A 2




Q. Bellanca 7GCBC Citabriaの飛行について。Before Landing CheckでOnにしたCarburetor Heatは、接地直前でOffにする方法と、Onのまま着陸して、着陸完了後にOffにする方法と、どちらが好ましいのか。



A. 7GCBCのPOHによると、着陸前のBefore Landing CheckではCarburetor HeatはOnと指示されていますから、確認する時点ではOnであるべきです。このPOHの指示を厳密に守ればOnであるべきでしょうが、しかしShort FinalでOffにしてはいけないとも書かれていません。どちらが好ましいのでしょうか。

私が過去に訓練を受けたり、勤務した飛行学校はおよそ15校。その全てがアメリカにおいてです。それぞれが異なる方針を持っていましたが、全てが「Carburetor HeatはOnのまま着陸し、着陸完了後にOffにする。Touch & GoならPower On時にOffに。Go Aroundなら上昇時にOffにする。」としていました。




外気温度と湿度によるCarburetor Iceの危険性



なぜ、Carburetor HeatをOnのまま着陸するのか。それは以下の理由から、危険を最小限にできると考えられるからでしょう。

1. それまでに安定したEngineの運転が行えているのなら、必要がない限り、状況を変えることは避けるべき。

航空機の運行で最も危険度が高いのは、整備作業の直後の試験飛行時である、などと言われるように、時として状況を変更することは故障や不具合の原因になるものです。着陸を前提にApproachしているのなら、Short Finalという最も危険度の高い時点で、Carburetor Heatを操作することは避けるべきと考えます。

では、「Go Around時の上昇中にCarburetor Heatを操作することも危険ではないのか?」と問われれば、確かにその通りです。実はOnのままGo Aroundし、以降は触れずに着陸することが正しいのかもしれません。




WACO YMFでの遊覧飛行。何と美しい海岸線!

・・・などと感動している余裕は私にはありません。湿度の高い場所を飛行し、そして周囲に緊急着陸を行える場所もなければ、Engineの運転状況は普段以上に監視します。Carburetor Heatを小まめに操作して、Carburetor Iceの存在の有無を見定めます。



2. Carburetor Icingは空気中に水分が存在すれば、季節に関わらず発生する。Carburetor Icingは予防が重要である。

Carburetor HeatはCarburetor Icingの予防を目的とした「Anti-Ice System」の役割と、除氷を目的とした「De-Ice System」の両方を担っています。気温の高い夏だから、冬の乾燥した季節だから、巡航中だから、Carburetor Heatは不要という意見も耳にしますが、私は賛成しかねます。私が担当した訓練生の一人は真夏のXCの巡航時にCarburetor Iceを起こして緊急着陸をしましたし、私自身は地上での冬の暖機運転中にCarburetor Iceになったことがありました。

教科書によると、Carburetor Iceは気温-5度Cから+20度Cの間で発生しやすく、低出力時はCarburetor内部の流入空気の経路が狭くなるために危険度が増すと言われます。加えて、Approach中は低出力のためにExhaustの熱も低めで、Carburetor Heatの性能も低下し、危険要素はさらに増大しますから、Carburetor Heatは積極的に使用するべきと考えます。Carburetor HeatにDe-Iceとしての機能があっても、Engineが止まってしまっては除氷はもう行えません。




Piper J-3 Cub

装備されているContinental A-65-1 Engineは最大出力65HP@2,300RPM。小型で低出力のためか発熱量が少なく、Carburetor Heatを使用していても、Touch & Goを繰り返すと時折Carburetor Icingを起こします。



Carburetor HeatをShort FinalでOffにするという方法を用いる理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

1. Go Aroundに素早く移行するため。

2. Go Around時にCarburetor Heatを使用していると、出力が不足し、安全に上昇できない。




North American T-6の操縦席




T-6の操縦席内部。指差した黄色いLeverがCarburetor Heatです。緊急時を除いて使用することはありませんが、Shoulder Harnessを締めていると手は届きません。



1については、Carburetor HeatのLeverがどこに装備されているのか、操作にどれだけの手間がかかるかにもよることでしょう。手を伸ばさないとCarburetor Heat Leverに届かない、または操作が複雑なら、Go Aroundを安全に行うためにも、Work Loadを減らすためにも、着陸直前に行うべきという意見も理解できます。

しかし、着陸直前という非常に危険度の高い状況で複雑な操作を行うこともまた問題で、次には着陸前のさらに余裕のある時点で操作するという解決策に落ち着くことでしょう。次第にCarburetor Heatの使用時間が少なくなり、複数回の滑空機の曳航やTouch & Goを繰り返し行っていれば、Carburetor Iceの蓄積は避けられません。

では、質問にあったCitabria各種のCarburetor Heatの操作はどれほど難易度が高いのでしょうか。この機種ではThrottle Leverの下にCarburetor HeatのLeverが並ぶように備えられており、手のひらで両方のLeverを同時に、瞬時に操作することが可能です。(下写真参照) 操作に難しさは全くなく、着陸直前に操作をしなくてはならない理由はどこにもありません。これはCessna 152や172も同様と考えられます。




American Champion Aircraft 7ECA Citabriaの操縦席。左側にThrottle LeverとCarburetor Heatが並んでいます。



2については、もし十分なPowerが得られなければ、Go Aroundは安全に行うことが難しくなることは周知の事実です。Lycoming EngineでEngine Runup時に、1700RPMでCarburetor Heatを使用すると、およそ50RPMの低下が見られます。この低下を目安にCarburetor Heatの作動状況を確認するわけですが、2700RPMのFull Power/Max RPMでの運転時に100RPM程度の低下があったとすると、出力低下は5%以下、150HPの7GCBCなら142HP程度になるだけのことです。

Density Altitudeの高い場所でのGo Aroundでもない限り、とても危険があるとは思えませんし、出力不足がStall、Spinを引き起こす訳ではなことも、このBlogをお読みになっている方々ならお判りいただけることと信じます。




WACO YMF



というわけで、「Carburetor HeatはOnのまま着陸し、着陸完了後にOffにする。Touch & GoならPower On時にOffに。Go Aroundなら上昇時にOffにする。」が私の意見です。

ご質問、ご意見、反論などありましたら、ぜひどうぞ。お待ちしております。

2015年3月31日火曜日

先生と呼ばれて


きれいな富士山。今日はいい一日になりそうです。


飛行教官として活動して、時々「先生!」などと呼ばれていると、自分の中で何か勘違いが始まりそうになります。私の知る世界はせいぜい飛行機を通してだけの狭い世界だけなのに、つい人生まで語り始めてしまったり。小型飛行機の操縦には自信過剰と認めるほどに絶対的な自信を持っていますが、これが原因でしょうか。では、自分の中のこの部分を壊してみたいと思います。




Airbus A320 Simulator


というわけで、日本の滞在中、横浜にあるJ Flight(http://jflight.jp/)にお邪魔しました。こちらはカナダから輸入したという、Airbus A320のモーション無しのシミュレーターを保有されていて、一般の方の体験操縦から、本職の方の機種変更の下準備など、多くの来客があるということです。






大型機の操縦経験のない私にとって、このような機種の操縦はとても興味のあるところですが、Type Ratingの訓練だけで$10,000単位、1回1時間程度のシミュレーターの飛行だけでも相当な金額になるそうですから、なかなか手が出ません。J Flightでは時間別に手ごろな金額設定をされていて、今回は1時間のコースで飛行を試してみました。




FMS(?)を操作して、飛行を設定しています。使い方は実機にほぼ忠実だそうです。


今回は、TaxiingとTake off、上空でSlow FlightにStall、Steep Turn、その後Touch and Goなどを試してみたいです。




どうしよう・・・


左席は操縦桿の調子が悪いとのことでしたので、今回は右席に座りました。普段の飛行機が右手で操縦桿、左手でスロットルの操作ですし、これまでも右席から操縦教育を行っていましたから問題はないでしょう。しかし、実際に操縦席に座って、「借りてきた猫」状態の自分に気付きます。予習をしてくればよかったと知っても時すでに遅し、です。




新千歳空港、滑走路19L


APUもEngine Startも、ほぼS/W一つで行えてしまいました。単発のCessna C-208Bですらいろいろと手順があったはずですが。全てが自動化されている・・・。さすがは最新鋭機です。

準備が整い、これから離陸です。・・・おや?機首が右横を向いている?なるほど、投影しているスクリーンが近いため、右席からは左前方に進行方向が見えてしまうのですね。




新千歳空港で離着陸。


地上で機首方向の目安は取ったはずでしたが、どうしても機首の軸線上に目標をとってしまい、旋回では上がったり下がったり、最終進入ではふらふらと落ち着かず、着陸後は滑走路の左に飛び出しそうになりました。スクリーンへの投影位置の調整ができたら助かると思いました。完全に飛行機に乗せられている、そんな私の飛行を下の映像からどうぞ。




Touch-and-go@New Chitose Airport(RJCC)


全く余裕がありません。私のこれまでの6000時間超の飛行経験も、曲技飛行教官という肩書きも、A320には全く通用しないということがわかりました。職場に曲技飛行に来るお客の2-3割は大型旅客機の操縦士ですが、彼らの「曲技飛行機は楽しいけれど、とても扱えきれないよ。まさに別世界だ。」という言葉が今は逆の立場からわかります。






上手く飛ばせられずにちょっとがっかりしましたが、いい刺激になりました。次回は予習をしてから訪れたいと思います。お勧めです。



J Flight

JFlight

〒231−0063 横浜市中区花咲町3-103-2 アマデウスビル2F
電話   045-250-5053
Web   http://jflight.jp/

最寄駅 JR根岸線/桜木町または横浜市営地下鉄/桜木町から徒歩5分



2015年3月17日火曜日

尾輪式飛行機講習が終了しました




予定通りに、富士川滑空場にて尾輪式飛行機の講習を行うことができました。初日は4時間の予定で座学を行いましたが、実際には4時間でも足らないほどに貴重な質問をたくさん頂きました。

飛行訓練の内容は、将来のTow Pilotとして、尾輪式飛行機の離陸と着陸が主になりました。一言で離陸や着陸と言っても、それは短い時間に非常に多くの現象がある、非常にComplexなManeuverであり、複雑な操作を慎重に行うことが要求されます。

飛行の基本の再確認と、効率のよい訓練を求めて、上空でのAir Workは不可欠です。「なぜRudderが必要なのか」、「Stallとはどのような状況で、何が原因なのか」など、当然とも思える内容をもう一度おさらいしました。

近い将来、参加者の皆さんはTow Pilotとしてデビューすることになるでしょう。どうぞご幸運を!




初日の座学では10人の方々に参加していただきました。ありがとうございます。




尾輪式飛行機に乗る前に耳にするのは、教官からの「Ground Loopに気をつけろ」です。でも、理論的な説明が不足しては、訓練生を怖がらせるだけではないでしょうか?Ground Loopのしくみと対処方法を伝えれば、訓練生も自信を持って飛行に臨めるはずです。




Bellanca 7GCBC Citabria。古いですが、整備は行き届いていて、操縦しやすい機体です。




Preflight Inspection、Complete!




飛行前の打ち合わせ。離陸後、南東の海上へ向かいましょう。


今日の練習内容は・・・
S-Turns
Wing Rocking
Steep Turns
Slow Flight @ Slow Speed (55 - 60 MPH)
Slow Flight @ High α
Power off Stalls with Minimum Altitude Loss Recovery
Power on Stalls with NO Altitude Loss Recovery
Accelerated Stalls、Straight Flight&Turning Flight
Full Aft Stick Stall (Controlled Stall)


離着陸に関しては・・・
Normal Takeoffs
Three Point Landings
Wheel Landings
Go around

などを行います。


ここではWheel Landingの技術が必要になるような、High Cross Windな状況では運用しないということですから、Wheel Landingの練習は最小限にして、Three Point Landingに集中することにしました。




では出発です。行ってきます。






Clear Prop!




何やら、身振り手振りで説明しています。




富士山がとてもきれいでした。

静岡県航空協会の皆様、日本女性航空協会の皆様、大変お世話になりました。



米国のFAA(連邦航空局)は、尾輪式飛行機に機長として飛行する前に、飛行教官との同乗教育を受け、指定された訓練内容である、Normal Landings、Three Point Landings、Wheel Landings(禁止された機種では免除)、そしてGo aroundを少なくとも受けることとされています。

着陸に関しては、飛行機の性能を最大限に発揮するためにも、Three Point LandingとWheel Landingの2種類の着陸方法を習得するべきで、どちらか一方でよいということはありません。Cessna 152や172で言えば、No Flap LandingもFlapsを用いた着陸方法も、どちらも行えるべきであることと同じです。

今回は、Wheel LandingよりもThree Point Landingに重点を置いて訓練を行いました。富士川滑空場では、Wheel Landingが必要なほどの横風成分(横風成分15 KTS以上)のような状況では運行は行わないということですから、疑問を感じつつも理解もできることです。ただ、Three Pointとはどうあるべきなのかを確認するためにも、あえてWheel Landingも試して、それぞれの長所と短所を理解していただきました。

尾輪式飛行機の着陸映像をYouTubeに見つけましたので、下の2つの動画を参考にどうぞ。




動画 その1

3分10秒と、5分05秒にSuper Cubでの着陸映像があります。

1回目の着陸はWheel Landing、2回目の跳ねた後の着陸はTail-low Wheel Landingのようです。滑らかな着陸に見えますが、性能を発揮する努力が見られず、「ただ降ろしている」だけに見えてしまうのはなぜでしょうか。追い風の状況にも関わらず、非常に速いTaxi Speed、甘いStick Backなど、注意が必要です。




動画 その2

3分50秒あたりにSuper Cubでの着陸映像があります。

こちらはThree Point Landingです。接地姿勢の確立、接地完了後のStick Backなど、強い風の中でも基本に忠実な操縦を行う、強い意思が見られます。



少々語弊がありますが、「穏やかな着陸なら何でもよし」とされるのは前輪式飛行機で、尾輪式飛行機ではさらに接地姿勢の確保が重要になります。操縦系統を地上でも用いて、飛行機を飛行機として扱う努力をしましょう。と、私自身が肝に銘じます。

2015年2月10日火曜日

試運転完了




計器盤の変更と、新しいEngine Monitor、Electronics International社製CGR-30Pの配線作業も含めたPitts S-2Sの整備作業を続けています。単発飛行機の簡素な作業量ですが、どこをどのように配線を通すか悩み、取り付けすると配線の長さが足りずにまた悩み。それでも1日1日と、少しずつ作業が進んでいく様子を見ると嬉しくなります。




変更した計器盤。仕事の合間に作業して、日没後も作業を続け、一ヶ月以上かかりました。希望通りの配置になり満足です。




部品待ちになっているFuel Pressure Lineを除いて、動作も問題ありません。大成功です。




こちらは以前の計器盤。残念ながら、計器やS/W類の配置に若干統一感がなく、気になっていました。




まだ仮止めのままのEngine側。




かなり慌しく作業したため、少し雑な計器盤裏側の配線部分。時間を見つけて手直しします。



CGR-30Pはボタンを押すことでScreenが変わり、それぞれの機能を表示していきます。



Screen 1


Screen 2


Screen 3


Screen 4

CGR-30Pは小型ながらも必要な機能が揃い、また色で表示され、とても見やすくできています。使い方については少し勉強が必要です。




友人の池田さんが遊びにいらっしゃいました。久しぶりに射撃に行きましょうか。




〈動画〉 Hand Thrown Clay Shooting 102

Lesson 2、今回は2枚に挑戦です。それぞれのClay Bird(皿)を1回の射撃で割ることが目標です。2枚の皿が離れなかったり、よそ見をして外したり。前線が迫り、風が強かった(30 KTS+)ことはいい言い訳になりました。次回は3枚に挑戦です。



2月21日(土)と22日〈日)、そして28日(土)は予定通りに富士川滑空場で尾輪式飛行機の講習を行います。参加者の皆様、現地でお会いしましょう。楽しみにしております。

2015年1月23日金曜日

Spinを考える 5




「P A R Eの手順を守れば、スピン リカバリーは必ず行えます。(いや、例外もあるのだけれど・・・。)」 - Y. Tの悩み、米国 西海岸 某所在住



 インシピエント スピンや、アップライト ノーマル スピンまでのスピン トレーニングを行うなら、P A R Eを用いてのリカバリーに疑問を持つことはないでしょうが、さらにモード変化を行って、エレベーターを用いてのアクセレレーテッド スピンを行うと、P A R Eの問題点に当たります。






このP A R Eの問題をどう受け止めるかは飛行教官次第でしょうから、問題に気付かない方もいれば、気付いても深く受け止めない方もいらっしゃるでしょう。手順を工夫して、「ノーマル スピンではP A R E。エレベーター アクセレレーテッドの場合はE + P A R Eで行う。」とする方が一般的のようです。すると、「P A R Eでスピン リカバリーが行える」という言葉に矛盾が生じ、訓練毎に悩まされることになります。

ノーマル スピンでも、エレベーター アクセレレーテッド スピンでも使える、「これさえ守って行えば、どのようなスピンでもリカバリーも行える」という、都合のよい方法はないものでしょうか・・・




「Yuichi、このスピン リカバリーの方法はどうだろう?」




Paolo: P A R Eの代わりに、P A/E R Eを使ってみようと思うんだ。

なるほど!それが答えですね。ありがとう、Paoloさん。



P A R EでのAでは、エルロン ニュートラル(またはセンター)ですが、ここをA/Eとして、エルロンとエレベーターを同時に操作して、「センター アンド バック」などと操作する案です。

つまり・・・






スピン中に操縦桿がどの位置にあったとしても・・・


A/Eの時点で操縦桿をセンター アンド バックの位置に戻すことで、操縦桿がどの位置にあったとしても、またそれがアップライト フラット スピン、アップライト エルロン アクセレレーテッド スピン、アップライト パワー アクセレレーテッド スピン、アップライト エレベーター アクセレレーテッド スピンなどのどれであったとしても、アップライト ノーマル スピンに移行し、スピン リカバリーを効果的に行うことができます。



〈まとめ〉 P A/E R Eを使用してのアップライト スピンからのリカバリー

Power (パワー) バック
Aileron/Elevator (エルロン/エレベーター)センター アンド バック
Rudder (ラダー) オポジット
Elevator (エレベーター) アンロード、ニュートラル、センター

この手順を広めたいという希望はありませんが、少なくとも、スピン トレーニングを提供する上で、私が悩むことは今後なくなることでしょう。



曲技飛行を目的に設計されていない機種では、ネガティブ G側に十分な迎角を得るような設計がされていませんから、インバーテッド側にストールすることはまず有り得ないと考えられ、同様にインバーテッド スピンも起こり得ないと言われています。

しかし、下の映像のように、状況次第ではインバーテッド スピンも有り得るようです。




〈動画〉 Plane crash, least they had parachutes.



Comp Air 7 SLXというターボプロップ エンジン装備の飛行機の事故の様子です。パイロットが飛行機をコントロールできず、映像のようなインバーテッド スピンに入ったようですが、詳細は不明です。

通常は起こりえない状況ですが、何らかの原因でインバーテッド側のストールに入り、スカイ ダイバーが天井に押し付けられ、C.G.位置の関係でスピンとしてオートローテーションが確立したのでしょうか。幸運なことにパイロットを含め、全員が脱出に成功しました。

このComp Air 7 SLXの事故は特殊なものですが、曲技飛行でインバーテッド(ネガティブ G)下の飛行を行うのであれば、アップライト スピンに加え、インバーテッド スピンについても習熟しておくべきです。

日本での講習の準備があるため少し時間が空きますが、次回はインバーテッド スピン各種について書いてみます。




Top Gun (1986年、アメリカ)

劇中、主人公の乗る戦闘機が訓練中にフラット スピンに入り、回復出来ずに緊急脱出したシーンは緊迫感に満ちていて、迫力がありました。



〈追記〉

「今日はフラット スピンをするだって?フラット スピンはリカバリーが不可能なスピンではないのか?」

この質問はスピン トレーニングでよく聞かれる質問です。NASAによると、スピンのモードの区分は迎角で分けられ、45度辺りを境に、フラット、またはスティープとしています。フラット スピンの定義は、1. オートローテーションとしてのスピン(自転)が発生していること、2. 迎角が45度より上向きであること、としてよいのではないでしょうか。

フラット スピンがリカバリーが難しい、または不可能という意見はYesであり、またNoでもあります。私も航空力学の専門家ではありませんが、私の理解している範囲で意見を書いてみます。




マンフレッド フォン リヒトーホーフェン男爵(第一次世界大戦時のドイツ軍エース パイロット)の乗機、Fokker Dr.1。



飛行機が飛び始めた20世紀初頭、飛行技術を研究するために曲技飛行が広く行われました。現在よりも航空力学や飛行理論が確立していない当時は、曲技飛行の訓練中、操縦操作を誤ってスピンに入ることは今私たちが行っている訓練環境よりも多かったことでしょう。その中で、フラット スピンはリカバリーが不可能となるとして、人々に恐れられた現象だったようです。

航空力学がまだ未熟だった当時の飛行機は、フラット スピンに陥り易い特性を持っていたそうですが、通常飛行から突然フラット スピンになる訳ではなく、そこに至るまでにはいくつかの経過があります。それらは、1. ストール + ヨー、2. インシピエント スピン、3. フーリー デベロップト スピン、4. フラット スピンです。3の段階でリカバリーが行われれば問題なく通常飛行へ移行することでしょうが、操作の躊躇があると、4のフラット スピンに移行します。

フラット スピンにならないような工夫が見出され、次第にこのような事故は減っていきました。それらは、


1. C. G.(重心位置)を後方限界に近づけない、また超えないこと。

2. 重量物はC. G.に近づけて搭載すること。

などです。もっと他にもあるかもしれません。



上の2つを詳しく見てみましょう。実は1と2は相互に関係があります。1とは逆に、C. G.が後方にあると、エレベーターに同じ舵角があったとしても得られる迎角は大きくなり、ストールしやすくなります。もしヨーイングが同時に発生していれば、スピンに移行することは言うまでもありません。

続いて、2とは逆に、重量物がC. G.から離れたところに搭載されている場合、例えば機体尾部に重量物(大き目の尾輪が装備されていたり、または前方気味のC. G.を調整するためにバッテリーを後方に置かれている場合など)があると、一度スピンが確立するとそれらの重量物は遠心力によって機体をフラットな姿勢にしようとします。紐に錘を付けて速く振り回すと、紐が次第に支点の位置に近付くことと同じです。

Pitts S-2Bを例にすると、エンジン(6気筒のLycoming AEIO-540-D4A5は約440 LBS)は機体重量(S-2Bの最大離陸重量は1625 LBS)の約1/4を占める重量物ですが、プロペラ(MTV-9 Propellerが約60 LBS)やその他の構成部品を含めると、少なくとも約550 LBS、機体重量の1/3が前方に集中しています。C. G.が後方にある場合は、相対的にエンジンなどの重量物がC. G.よりも離れてしまうことになり、同様にフラットな姿勢にする働きを持ってしまいます。つまり、1と2は相互に関係を持っており、注意が必要です。




グラマン F-14A(Wikipediaより)



もし、1と2とは全く逆の理論で飛行機が作られると、発生したスピンは自動的にフラット スピンに移行していきます。例えば、フライ バイ ワイヤー式でコンピューターを介して飛行することが前提となっている現代の旅客機や軍用機は、C. G.が比較的後方に位置し、また重量物が機体の各部に広く置かれ、またエンジンや燃料タンクは主翼にも搭載されています。

これらの飛行機がスピンに陥ると、飛行機はC. G.を中心にヨーイングを起こす、完全なフラット スピンに発展するため(下の 写真を参照)、リカバリーはほぼ不可能でしょう。仮に非常に長い時間と労力をかけてリカバリーが可能としても、地上に到達するまでの限られた時間内では難しいものです。映画「Top Gun」で見られたように、実際にF-14のフラット スピンは回復がほぼ不可能で、危険な行為とされていると耳にします。



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リカバリーが不可能なフラット スピン

フラット スピンがC. G.周りに発生している場合は、迎角やロードをコントロールするエレベーター、そしてヨーイングをコントロールするラダーに迎角を与えるような相対風がありません。操縦系統のみのリカバリーは不可能です。



では、私たちが日々の曲技飛行訓練で行うフラット スピンはなぜ安全に回復できるのでしょうか。それは、パワーや操縦系統を用いて、擬似的にフラット スピンを行い、また飛行機がC. G.周りではなく、平均的なフライト パスの周囲を前進しながらスピンしているからです。

操作については前回のブログを参照していただきますが、常に相対風があり、エレベーターにもラダーにも、引き続き空力的な効果があるために、確実なリカバリーが常に約束されているのです。



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リカバリーが可能なフラット スピン

操縦系統には引き続き相対風があり、またパワーによってフラットな姿勢を助けているため、P A R E(P A/E R E)を行うことでリカバリーが可能です。



フラット スピンも含めて、曲技飛行機ではスピン トレーニングが安全に、ストレスなく行えますが、操作を工夫すると先のリカバリー不能なフラット スピンのような、C. G.周りのフラット スピンに移行させることもできます。もちろん、正しく行うことでリカバリーは可能ですが、ある操作を残したままでは回復に非常に長い時間がかかります。

低高度でのスピン トレーニングや、リカバリーの操作に遅れがあると危険な状況になることも十分に考えられます。いずれ、映像に収めて、またこのBlog上で紹介したいと思います。