2013年11月22日金曜日

The World On Time



西海岸にも冬の雨季がやってきました。雲が増え、時折雨が降り、ここKing Cityも夏とは違った顔を見せるようになっています。まだ飛行できないほどではありませんが、練習空域に雲が広がる中、訓練生を誘導し、雲を避けながら曲技飛行訓練をするのは神経を使います。




それでも、MinimumぎりぎりのLow IMCの滑走路に計器進入したり、嵐や上空のIcing Condition(着氷が起こる状態)の中を飛行しなくてよいのはほっとします。思い出せば、2007年から2011年にかけて3年ほど、私は貨物輸送の大手であるFedExの、支線を管轄する「FedEx Feeder」で飛行していました。




そこで使用していたのは、Cessna C-208B、通称「Grand Caravan」の貨物機型である、C-208B Super Cargomasterです。小型単発飛行機でありながら、広い荷物室を持つこの飛行機は、喩えるなら空の4トントラック。競合他社が使う、Piper PA-31 Navajoや、Beechdraft King Airなどの双発機に比べ、単発機からのコストパフォーマンスに優れる飛行機で、短距離離着陸性能と運動性能に優れ、操縦の楽しさがありました。




どんな飛行機でも何かしら弱点はあるものですが、このCessna C-208各種の最大の敵はIcingです。Deicing Bootsが全ての翼前縁を覆い、着氷を取り除くようになっていますが、作動させても完全に取り去ることはできるものではありません。通常の飛行高度である7000-13000ft MSLは、悪天候時にはIcingに最適な状況があり、また巡航速度が160-170KTSと遅いことから、Icingの恐怖もずいぶんと味わいました。延々と雨雲の中を飛びながら、高高度を飛ぶ旅客機をうらやましく思ったものです。




FedEx Feederの3年間は、それまでの曲技飛行教官としては得ることのできない、貴重な経験を得ることができました。と同時に、そこでの飛行を助けてくれたのは、これまで曲技飛行を通して築いてきた、飛行機操縦技術であったとも言えます。




こちらの身軽さを期待してか、ATC側もまれに面倒な要求をしてきます。もちろん、断ることもできますが、飛行機にそれを行う性能があり、自身に十分な技量があり、また合法で社内規定にも違反していないなら、交通の円滑化を求めて努力はあるべきでしょう。

低速での急旋回や、Short FinalでBETA Rangeで急減速させ、短距離で着陸を終えるなど、一見Riskyな飛行も、今飛行機がAOA(迎角)のどの領域にあるのか、荷重がどの程度発生しているのか、Yawingの発生や解消など、情報を計器に頼らずに得て飛行する技術を持つことで、安全性を最大限に持って行うことができました。曲技飛行訓練は、このような水平直線飛行の分野でも、安全性の向上に非常に有効です。




早朝から夜までと、長い一日が続く日々でしたが、多くの貴重な経験もたくさんできました。それでも、私の生きるところは曲技飛行でしょう。雲の隙間から見える上空の飛行機を見て、少し昔の思い出が出てしまいました。



以下、飛行中に撮影した動画をいくつか。


Cessna C-208B Engine Start
搭載しているのは、最大出力675 SHPの、Pratt and Whitney Canada社製 PT-6-114Aです。


Santa Maria空港 Visual Approach Runway 30 


Los Angeles国際空港 ILS Runway 24L
ILS 24LでApproachし、滑走路を視認したらSide stepで隣のRunway 24Rに着陸します。

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