ここまで説明してきた、フィギュアの判定と採点の基礎を理解していただいた方には、このシークエンスの判定は難しくはないことでしょう。ヘディング、ライン、ループ、パーシャル ループ、ラインの長さ、これらからフィギュアを判定し、そしてフィギュア間のラインを確認してシークエンスを完成させます。では、それぞれのフィギュアを個々に見ていきましょう。
2013年 JAC プライマリ カテゴリー ノウン シークエンス
用意したシークエンスがB用紙ですので、ここではオフィシャル ウィンドが右から左へと設定された状況を想定して解説を行います。皆さんはジャッジとして、ジャッジラインでB用紙を手に競技機を判定するとお考えください。「5度=1点」の基準を思い返して、図を元に判定してみましょう。
1 ターン アップライト スピンの動き
1. 1 ターン アップライト スピン
a. ヘディング
ついスピンの要素のみに注目してしまいますが、フィギュアの判定は開始のホリゾンタル ラインから始まっています。シークエンスの右上の「Wind Direction」の印を見て判るように、このフィギュアはオフィシャル ウィンドに向かってアップ ウィンド(風上に向かっての飛行の意)から開始となっていますから、ホリゾンタル ラインのヘディングは右方向へ、X軸に平行でなければなりません。
b. ホリゾンタル ライン
言葉が示すように、C.G(航空機の重心位置)の軌跡が一定高度でなれけばなりません。同時に、主翼も水平であることも求められます。
c. スピン
スピンとは日本語で「錐揉み」と呼ばれます。判定基準では、「航空機がストール(失速)した後、3軸の動きが同時に起こり、オート ローテーション(自転)が発生していること」、「オート ローテーションが停止まで継続していること」とされています。アップライト スピンですから、ストールもポジティブ側(正方向の迎角を伴うストール)となります。もし、3軸の動きが同時ではなく、例えばロールのみが先に起きてしまったら、そのロールの角度(5度=1点)の減点が与えられます。ここでは1回転のスピンですから、360度の回転をX軸のアップウィンドから行い、再び同じヘディングであるX軸のアップウィンドに戻って停止します。
d. バーティカル ダウン ライン
競技のスピンは特徴的です。通常飛行では、スピンは防止が何よりも重要で、アクシデンタルなスピンが起こった時は即座に停止させ、高度の低下を最小限にして高度を再び得ることが必要です。しかし競技では、スピンを停止させた後は航空機を垂直に下に向け、バーティカル ダウン ラインを確立しなくてはなりません。もちろん、ヘディングだけでなく、ここでの主翼は水平であることが求められます。
e. 1/4 ループ
バーティカル ダウン ラインからホリゾンタル ラインにかけて、パーシャル ループである、1/4 ループが存在します。このとき、航空機のC.G.の軌跡が一定半径を描いていなくてはなりません。また、ヘディングがX軸と平行であることと、主翼が水平を保っていることは引き続き求められます。
f. ホリゾンタル ライン
フィギュアはホリゾンタル ラインを描いて終了となります。C.G.の軌跡は再び一定高度となっていること、主翼が水平であること確認します。
g. ヘディング
1回転のスピンを行って、終了時の姿勢がアップライトであれば、ヘディングは再びアップウィンドで、X軸に平行となるはずです。
以上です。それぞれの要素について、判定基準を列挙してみました。スピン1つにしてもこれだけの確認すべき要素があります。初めは刻々と変化する航空機の動きに追いつかず、忙しさに目が回りますが、慣れてくると減点箇所が見える毎に順調に行えるようになります。私の場合は、手の指で減点を数える方法を使い、フィギュアが終わったときに10点から引き算して採点を算出しています。
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