4. 競技カテゴリーと競技課目の種類
曲技飛行競技には、競技者の経験と技量、そして使用する競技機の性能に応じて、カテゴリーとして難易度別にいくつかに分けられています。日本はアメリカの曲技飛行団体であるIAC(International Aerobatic Club)に倣って、5つのカテゴリーを採用しています。難易度が低い順に紹介しましょう。
プライマリー: 最も初歩的なカテゴリーです。競技課目はノウン(規定課目、後に説明)のみで、2回または3回の飛行を行い、合計得点で順位を決定します。シークエンスを構成するフィギュアの数は少なく、6つ程度です。このカテゴリーでは、背面飛行でもエンジンの運転を継続するための、燃料と滑油に関するインバーテッド システムを必要としない、基礎的なフィギュアで構成されます。参加する競技者は、曲技飛行を始めてまだ数日という方や、一昨日操縦士資格を取得したという方もいらっしゃいました。ご覧になられている競技飛行未経験の方も、ぜひここから始めてみてはいかがでしょうか。
スポーツマン: 短時間の背面飛行を含むフィギュアが加わり、背面飛行設備を装備する機種で参加することが望ましいことですが、義務というわけではありません。飛行は2回から3回で行われ、競技課目はノウンを全ての飛行で用いる方法と、1回目にノウン、続く2回目と3回目の飛行でフリー(自由演技、後に説明)を選択して飛行する方法とがあります。フリーを選択して飛行することは義務ではありませんが、その場合、2回目のフリーを3回目の飛行でも同様に行わなければなりません。競技者はノウンとフリーの2種類のシークエンスの練習をしなくてはならず、一見不利に見えますが、自身の技量や使用する競技機の性能に合わせた飛行を組み上げることができますから、勝敗を有利な方向に導くことも可能です。
インターミディエイト: 難易度がさらに高くなり、ここからはスナップ ロールやスクエアループ(四角の形状とした宙返り)、インバーテッドターン(背面旋回)などが加わるようになります。飛行は3回行って完結となり、それぞれノウン、フリー、アンノウン(飛行予定の12時間前までに発表される、練習飛行不可の課目)の飛行が義務付けられています。参加機種も、機体強度が高く、出力の高い本格的な曲技飛行機が増えてきます。
アドバンスド: 上の3つのカテゴリーは国内競技のみの開催でしたが、アドバンスドと次のアンリミテッドは世界選手権も開催されるカテゴリーです。ローリングターン(旋回しながら機体を横転する)、インバーテッド スピン(ネガティブG下の、背面飛行状態での錐揉み)、アウトサイドループ(ネガティブG下の、背面飛行状態の宙返り)などが加わります。垂直系のフィギュアも増えるため、飛行抵抗の大きいPitts Specialなどの複葉機は少数派で、複合素材で製作された、単翼機が多く見られます。
アンリミテッド: 曲技飛行競技の最上級です。3回の飛行を構成する競技課目は、ノウン、フリー、アンノウンと変わりません。一つのフィギュア内に含まれるロールコンポーネントが増えて複雑になり、極めて高度な飛行能力が求められます。アウトサイド スナップロールやテールスライド(垂直飛行から出力を絞り、機体を短時間後退させる)などが加わり、飛行に華を添えます。
今年度の全日本曲技飛行競技会では、アンリミテッドを除いた4つのカテゴリーが開催されます。第1回と第2回の競技会ではプライマリーとスポーツマンのみ、昨年の第3回はインターミディエイトが追加されて行われました。今年はさらにアドバンスドが加わります。まだアンリミテッドを開催するには解決すべき問題がいくつもありますが、いずれ国内で5つの全てのカテゴリーで競技会が行われるようになることでしょう。
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